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第五章 俺様、北方へ行く
(閑話)バルトヴィーノの愚痴
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俺はバルトヴィーノ。15歳で世界の果てを見るんだなんて言って村を飛び出し、早20年。
冒険者パーティー「レガメ」の一員として今じゃ超一流、国内一の冒険者だなんて言われている。
だが、俺が欲しかったのはそんな名声じゃない。この国を飛び出し、世界中を巡ること。このパーティーでもまだ成し遂げていないが、このパーティーじゃなきゃ叶わないとも思っている。
だから、黒の使徒として処刑されるはずだったベルナルドがパーティーに加わるって時にも、俺はドナート達と違って反対しなかった。黒の使徒は攻撃魔法が使える。戦闘の幅がそれだけ増えるってことで、それはつまり、強くなれるっていう事。
現に、レベル50で頭打ちしてた俺らのパーティーが、ベルナルドが加わってから森の奥地や高難易度のクエストを受けるようになってとうとうレベル90を超えた。
最初はベルナルドに対して当たりのきつかったドナートとチェーザーレも、今じゃ打ち解けてる。それから、イヴァーノも……。
イヴァーノは聖女さんを迎えに行く途中で死んじまった。美食ハンターなんて自称するくらい、美味い物を食べることに命をかける奴だった。要が作るこの料理を食べてたらきっと日本とやらについて行くと言い張ったに違いない。
「イヴァーノの奴にも食わせてやりたかったなぁ」
「今頃空の上で地団太踏んでそうだな」
俺の独り言にチェーザーレが相槌を打つ。そして、杯に酒を満たすと「イヴァーノに」と言って飲んだので俺もそれに倣う。
他のメンバーは寝静まり、見張り番をしているドナートとチェーザーレに混ざって酒を呷っている。このくらいで潰れるほどやわじゃないさ。
「そういやぁ、俺は一つ納得いかんことがある」
「どうしたヴィー。酔ってるのか?」
目が座ってるぞ、とドナートに言われる。女っ気がないってか? とチェーザーレが笑う。
それもあるけど、それじゃない。
「お前だ! チェーザーレ! お前俺より食い意地張ってるくせして何で聖女たちは俺を食いしん坊って認識してんだよ!」
「さぁ?」
「ヴィーの方が主張が激しいからじゃない?」
「うっ」
そう、チェーザーレの方がやたら食うのだ。が、そういや食事の時は一人で黙々と食ってるな。だからか? いつの間にかお替りとかして静かに食ってるからか?
「食いしん坊の座をかけて勝負するか?」
「望むところだ!」
「いや、あほだろ。お前それ勝ったら晴れて食いしん坊だぞ?」
チェーザーレが勝負を持ち掛けるがドナートに水を差された。確かにその通りだった。
おいチェーザーレ、今舌打ちしなかったか? 寡黙なふりして何考えてるんだか。未だにこいつだけは解らねぇ。
そういや、夜番に関してもたいてい二人組なんだけど、それに関しても俺はちょっと不満がある。
アルベルトはベルナルドを見張らなきゃいけないって義務があるからあの二人が組んでるのはまぁいい。
だが、最近ドナートとチェーザーレばかりで組んで、俺があぶれることが増えてきたんだ。イヴァーノがいなくなってしまったから仕方ないと言えば仕方ないんだが。
この前の野営では、聖女さんがベルナルドを自分の馬車に招いて恐ろしいことを言っていたな。アルベルトとベルナルドが禁断の関係だとか……おぇっ。
寝静まっていると思っていたのだろうが、その内容は丸聞こえだった。
この世界、確かに衆道というものはあることにはあるが、俺達に限ってはない。ないったらない。……ないよな? 本人たちも否定していたし。
聖女さんと言えばこの前も、突然水浴びがしたいとか言い出して。モンスターに滅ぼされた場所なんだから警戒が必要だろうに、見張りは要らないとか。
そりゃ、確かに聖女さんの結界と聖竜がいれば俺らなんていなくても平気かもしれないだろうがよ。覗きたいのかとかあの言い方がまたむかつくんだよな。
確かに身体つきはなかなかそそるものがあるが、ガキンチョで処理するほど飢えてねぇよ。
「そんなに嫌なら抜けるか?」
俺がぶつぶつ文句を言っていると、そんな声がかけられた。1号とか呼ばれてるきのこのモンスターだ。本当は人間だって言ってるが怪しいもんだ。
「バカ言えよ。聖女について行きゃ、暗黒破壊神の領域へ行けるんだぜ」
それも、勇者に聖女に聖竜、最強の冒険者に騎士っていうこれ以上ないほどの戦力で。
最初に聖女を迎えに行くって依頼を受けた時もそうだったが、今回の護衛依頼でも未踏の地へ行ける興奮の方が高かった。
この依頼は聖女が勇者と合流するまでって契約だが、例えパーティーから抜けることになっても、俺は聖女について行くつもりだ。だが、俺の予想だと契約が切れてもずっと一緒な気がする。だって、聖竜がせっかく見つけた勇者を異世界に送り返しているからな。
「ふぅん、なら、聖女に掛け算されないよう気を付けろよ」
「掛け算?」
「最近はアルベルト×ベルナルドとかベルナルド×アルベルトとかだけじゃなくて、ドナートやチェーザーレでも妄想している気だからな」
おえっ。
掛け算の意味だけでなく、自分達で妄想されていると知ったドナートとチェーザーレも嫌そうな顔をしていた。
いや、きのこ、あぶれてるならエミーリオはどうだ? じゃねぇよ。溜まってねぇって言ってんだろ。
取り敢えず、オーリエンに着いて自由時間になったら真っ先に娼館に行こう。これ以上変な妄想に付き合って堪るか。胸に口紅でもつけて帰れば男相手の妄想なんてされねぇだろ。
……仲間に女増えないかな……。
冒険者パーティー「レガメ」の一員として今じゃ超一流、国内一の冒険者だなんて言われている。
だが、俺が欲しかったのはそんな名声じゃない。この国を飛び出し、世界中を巡ること。このパーティーでもまだ成し遂げていないが、このパーティーじゃなきゃ叶わないとも思っている。
だから、黒の使徒として処刑されるはずだったベルナルドがパーティーに加わるって時にも、俺はドナート達と違って反対しなかった。黒の使徒は攻撃魔法が使える。戦闘の幅がそれだけ増えるってことで、それはつまり、強くなれるっていう事。
現に、レベル50で頭打ちしてた俺らのパーティーが、ベルナルドが加わってから森の奥地や高難易度のクエストを受けるようになってとうとうレベル90を超えた。
最初はベルナルドに対して当たりのきつかったドナートとチェーザーレも、今じゃ打ち解けてる。それから、イヴァーノも……。
イヴァーノは聖女さんを迎えに行く途中で死んじまった。美食ハンターなんて自称するくらい、美味い物を食べることに命をかける奴だった。要が作るこの料理を食べてたらきっと日本とやらについて行くと言い張ったに違いない。
「イヴァーノの奴にも食わせてやりたかったなぁ」
「今頃空の上で地団太踏んでそうだな」
俺の独り言にチェーザーレが相槌を打つ。そして、杯に酒を満たすと「イヴァーノに」と言って飲んだので俺もそれに倣う。
他のメンバーは寝静まり、見張り番をしているドナートとチェーザーレに混ざって酒を呷っている。このくらいで潰れるほどやわじゃないさ。
「そういやぁ、俺は一つ納得いかんことがある」
「どうしたヴィー。酔ってるのか?」
目が座ってるぞ、とドナートに言われる。女っ気がないってか? とチェーザーレが笑う。
それもあるけど、それじゃない。
「お前だ! チェーザーレ! お前俺より食い意地張ってるくせして何で聖女たちは俺を食いしん坊って認識してんだよ!」
「さぁ?」
「ヴィーの方が主張が激しいからじゃない?」
「うっ」
そう、チェーザーレの方がやたら食うのだ。が、そういや食事の時は一人で黙々と食ってるな。だからか? いつの間にかお替りとかして静かに食ってるからか?
「食いしん坊の座をかけて勝負するか?」
「望むところだ!」
「いや、あほだろ。お前それ勝ったら晴れて食いしん坊だぞ?」
チェーザーレが勝負を持ち掛けるがドナートに水を差された。確かにその通りだった。
おいチェーザーレ、今舌打ちしなかったか? 寡黙なふりして何考えてるんだか。未だにこいつだけは解らねぇ。
そういや、夜番に関してもたいてい二人組なんだけど、それに関しても俺はちょっと不満がある。
アルベルトはベルナルドを見張らなきゃいけないって義務があるからあの二人が組んでるのはまぁいい。
だが、最近ドナートとチェーザーレばかりで組んで、俺があぶれることが増えてきたんだ。イヴァーノがいなくなってしまったから仕方ないと言えば仕方ないんだが。
この前の野営では、聖女さんがベルナルドを自分の馬車に招いて恐ろしいことを言っていたな。アルベルトとベルナルドが禁断の関係だとか……おぇっ。
寝静まっていると思っていたのだろうが、その内容は丸聞こえだった。
この世界、確かに衆道というものはあることにはあるが、俺達に限ってはない。ないったらない。……ないよな? 本人たちも否定していたし。
聖女さんと言えばこの前も、突然水浴びがしたいとか言い出して。モンスターに滅ぼされた場所なんだから警戒が必要だろうに、見張りは要らないとか。
そりゃ、確かに聖女さんの結界と聖竜がいれば俺らなんていなくても平気かもしれないだろうがよ。覗きたいのかとかあの言い方がまたむかつくんだよな。
確かに身体つきはなかなかそそるものがあるが、ガキンチョで処理するほど飢えてねぇよ。
「そんなに嫌なら抜けるか?」
俺がぶつぶつ文句を言っていると、そんな声がかけられた。1号とか呼ばれてるきのこのモンスターだ。本当は人間だって言ってるが怪しいもんだ。
「バカ言えよ。聖女について行きゃ、暗黒破壊神の領域へ行けるんだぜ」
それも、勇者に聖女に聖竜、最強の冒険者に騎士っていうこれ以上ないほどの戦力で。
最初に聖女を迎えに行くって依頼を受けた時もそうだったが、今回の護衛依頼でも未踏の地へ行ける興奮の方が高かった。
この依頼は聖女が勇者と合流するまでって契約だが、例えパーティーから抜けることになっても、俺は聖女について行くつもりだ。だが、俺の予想だと契約が切れてもずっと一緒な気がする。だって、聖竜がせっかく見つけた勇者を異世界に送り返しているからな。
「ふぅん、なら、聖女に掛け算されないよう気を付けろよ」
「掛け算?」
「最近はアルベルト×ベルナルドとかベルナルド×アルベルトとかだけじゃなくて、ドナートやチェーザーレでも妄想している気だからな」
おえっ。
掛け算の意味だけでなく、自分達で妄想されていると知ったドナートとチェーザーレも嫌そうな顔をしていた。
いや、きのこ、あぶれてるならエミーリオはどうだ? じゃねぇよ。溜まってねぇって言ってんだろ。
取り敢えず、オーリエンに着いて自由時間になったら真っ先に娼館に行こう。これ以上変な妄想に付き合って堪るか。胸に口紅でもつけて帰れば男相手の妄想なんてされねぇだろ。
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