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第六章 俺様、東方に行く
1、ありがたく俺の糧となるが良い!!
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要さんが日本に帰って二日後、俺達はノルドの関所跡を抜けオーリエンへと向かっていた。
足跡を追えるドナートが言うには、暗黒破壊神のものと見られる足跡はベネディジョンから北東の方に向かっているそうだ。少なくとも待ち伏せされている心配と、セントゥロが襲われる心配はないってことだ。
ノルドの入り口である関所と、オーリエンの入り口である関所は同一ではないらしい。セントゥロの関所を抜けたらオチデンでした、というのを体験しているだけに不思議である。
「昔は、ノルドの関所はもっとずっと向こうで、セントゥロとオチデンの国境のようにちゃんと国境線上にあったのですよ」
首を傾げていたら、エミーリオがそう教えてくれた。何でも、かつてスタンピードによって関所が襲われ、場所が場所だったから軍を出すにも慎重に慎重を重ねている間にモンスターのテリトリーとなってしまっていたらしい。
どこの世界でも領域侵犯には敏感ということか。災害時くらい協力し合えばいいのに、と思うのは現代日本人だからなのかもしれない。
「道の両端を見てください」
それにしたって、改めて両国から討伐隊を出すなりして、街道復旧させるくらいするだろうに、と思っているとエミーリオは景色が良く見えるよう御者台から体を逸らせた。
道の端を見るが、何の変哲もない石ころや草が生えるのみだ。
エミーリオが何を見せたいのかわからずに首を傾げていると、ルシアちゃんが答えを見つけた。
「魔除けの結界石がありませんね」
「あ、本当だ」
言われて、大きな獣道のようになった街道の両端を改めて見る。人があまり通らないのか、街道と呼べるのか不思議なくらいに草が生え荒れてしまっているそこには、あるべきものがなかった。
確かに、これまでの街道だと一定間隔で白い石が置いてあったのだが、ここでは一つも見当たらなかった。
「ああ、聞いたことあるな」
「確か、結界石の設置にオーリエンだけ応じなかったんだっけ? それで、とにかくノルド側だけでも、ってノルドが出資して敷石したら、それが囲い罠のようになっちゃってノルド国内に魔物を呼び入れちゃったとか」
『最悪だな』
アルベルトやベルナルド先生が解説してくれたこの話はけっこう有名らしく、ドナートとチェーザーレ、バルトヴィーノも知っていた。
それで、ノルドはせっかく設置した結界石を外したのだと。
『オーリエンのイメージが最悪なんだが……』
「ん~? でも、災害直後だろ? 復興中の奴にやれ人を出せ金を出せって言ったってなかなか難しいんじゃないか?」
「1号さん、その通りです。国境を失うことになった時は、オーリエンの方が被害が大きく、国土の半分近くを失ったと聞きます」
1号の推測をエミーリオが肯定する。
そうか、確かに自国の、それも住民のライフライン復興が最優先で、国土や街道の奪還と整備にまではなかなか着手できんよな。
『ん? だが、それならわざわざ設置した結界石を外さなくても、街道にモンスターが入れないよう道を囲むように石を設置すれば済む話だったのでは?』
イメージはあれだ。交差点の直前でピカピカ光ってる反射板。あんな感じで道を横断するように置けば、少なくともそこまでの安全は確保されたのでは?
「「「「あ」」」」
俺でも思いつくようなことが思い浮かばなかったらしい。大丈夫か、この世界?
とにかく、オーリエンとノルドを直接結ぶ街道が国から放棄され、商人達はいちいちセントゥロを通って行き来するようになったのだと。
この道を通るのは、よほど急ぎの取引があるか、後ろ暗い事情の者か、腕に自信がある者か。
「セントゥロを通っても良かったのですが、なるべく急ぎたいとのことでしたので」
『問題なかろう。レベル上げにもなって一石二鳥だ』
そんなことを言っていたら、タイムリーにモンスターが飛び出してきた。
ファンタジー小説で定番のホーンラビットそのままの姿をした、薄桃色の毛並みの角の生えた兎だ。大きさは……俺よりでかいな、あれ。かなり前方だが、はっきり姿が見える。
兎はすぐに馬車の走行音に気付くとこちらに向き合って突っ込んでくる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
種族 : ウナンゴロ・コニグリオ
レベル : 17
HP : 300/ 165
MP : 90/ 75
Atk : 450
Def : 75
ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何か舌を噛みそうな名前の兎来た! ホーンラビットで良いじゃん! それでも長いな。俺は勝手に角兎と呼ぶことにした。
ドナートが矢を射かけているからかジグザグに走りながら接近してくるが、まだまだ距離はある。そしてやはりでかい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ウナンゴロ・コニグリオ】
非常に好戦的なモンスター。その角は竜の鱗ですら貫きます。気を付けて。
角以外の部分は柔らかく、毛皮はご婦人の衣装や鞄の素材として人気。
肉も非常に美味。そのまま焼いても良いですが煮込み料理が美味しいですよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
な ん だ と !?
煮込み! やはりここはシチューとかか? いかん、涎が!
さぁ、兎狩りの時間だ!! ありがたく俺の糧となるが良い!!
足跡を追えるドナートが言うには、暗黒破壊神のものと見られる足跡はベネディジョンから北東の方に向かっているそうだ。少なくとも待ち伏せされている心配と、セントゥロが襲われる心配はないってことだ。
ノルドの入り口である関所と、オーリエンの入り口である関所は同一ではないらしい。セントゥロの関所を抜けたらオチデンでした、というのを体験しているだけに不思議である。
「昔は、ノルドの関所はもっとずっと向こうで、セントゥロとオチデンの国境のようにちゃんと国境線上にあったのですよ」
首を傾げていたら、エミーリオがそう教えてくれた。何でも、かつてスタンピードによって関所が襲われ、場所が場所だったから軍を出すにも慎重に慎重を重ねている間にモンスターのテリトリーとなってしまっていたらしい。
どこの世界でも領域侵犯には敏感ということか。災害時くらい協力し合えばいいのに、と思うのは現代日本人だからなのかもしれない。
「道の両端を見てください」
それにしたって、改めて両国から討伐隊を出すなりして、街道復旧させるくらいするだろうに、と思っているとエミーリオは景色が良く見えるよう御者台から体を逸らせた。
道の端を見るが、何の変哲もない石ころや草が生えるのみだ。
エミーリオが何を見せたいのかわからずに首を傾げていると、ルシアちゃんが答えを見つけた。
「魔除けの結界石がありませんね」
「あ、本当だ」
言われて、大きな獣道のようになった街道の両端を改めて見る。人があまり通らないのか、街道と呼べるのか不思議なくらいに草が生え荒れてしまっているそこには、あるべきものがなかった。
確かに、これまでの街道だと一定間隔で白い石が置いてあったのだが、ここでは一つも見当たらなかった。
「ああ、聞いたことあるな」
「確か、結界石の設置にオーリエンだけ応じなかったんだっけ? それで、とにかくノルド側だけでも、ってノルドが出資して敷石したら、それが囲い罠のようになっちゃってノルド国内に魔物を呼び入れちゃったとか」
『最悪だな』
アルベルトやベルナルド先生が解説してくれたこの話はけっこう有名らしく、ドナートとチェーザーレ、バルトヴィーノも知っていた。
それで、ノルドはせっかく設置した結界石を外したのだと。
『オーリエンのイメージが最悪なんだが……』
「ん~? でも、災害直後だろ? 復興中の奴にやれ人を出せ金を出せって言ったってなかなか難しいんじゃないか?」
「1号さん、その通りです。国境を失うことになった時は、オーリエンの方が被害が大きく、国土の半分近くを失ったと聞きます」
1号の推測をエミーリオが肯定する。
そうか、確かに自国の、それも住民のライフライン復興が最優先で、国土や街道の奪還と整備にまではなかなか着手できんよな。
『ん? だが、それならわざわざ設置した結界石を外さなくても、街道にモンスターが入れないよう道を囲むように石を設置すれば済む話だったのでは?』
イメージはあれだ。交差点の直前でピカピカ光ってる反射板。あんな感じで道を横断するように置けば、少なくともそこまでの安全は確保されたのでは?
「「「「あ」」」」
俺でも思いつくようなことが思い浮かばなかったらしい。大丈夫か、この世界?
とにかく、オーリエンとノルドを直接結ぶ街道が国から放棄され、商人達はいちいちセントゥロを通って行き来するようになったのだと。
この道を通るのは、よほど急ぎの取引があるか、後ろ暗い事情の者か、腕に自信がある者か。
「セントゥロを通っても良かったのですが、なるべく急ぎたいとのことでしたので」
『問題なかろう。レベル上げにもなって一石二鳥だ』
そんなことを言っていたら、タイムリーにモンスターが飛び出してきた。
ファンタジー小説で定番のホーンラビットそのままの姿をした、薄桃色の毛並みの角の生えた兎だ。大きさは……俺よりでかいな、あれ。かなり前方だが、はっきり姿が見える。
兎はすぐに馬車の走行音に気付くとこちらに向き合って突っ込んでくる。
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【ステータス】
種族 : ウナンゴロ・コニグリオ
レベル : 17
HP : 300/ 165
MP : 90/ 75
Atk : 450
Def : 75
ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。
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何か舌を噛みそうな名前の兎来た! ホーンラビットで良いじゃん! それでも長いな。俺は勝手に角兎と呼ぶことにした。
ドナートが矢を射かけているからかジグザグに走りながら接近してくるが、まだまだ距離はある。そしてやはりでかい。
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【ウナンゴロ・コニグリオ】
非常に好戦的なモンスター。その角は竜の鱗ですら貫きます。気を付けて。
角以外の部分は柔らかく、毛皮はご婦人の衣装や鞄の素材として人気。
肉も非常に美味。そのまま焼いても良いですが煮込み料理が美味しいですよ。
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な ん だ と !?
煮込み! やはりここはシチューとかか? いかん、涎が!
さぁ、兎狩りの時間だ!! ありがたく俺の糧となるが良い!!
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