中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第六章 俺様、東方に行く

(閑話)聖女の旅 5

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 召喚された勇者様を探す私達の旅に、新たなメンバーが加わりました。
 カナメ・ホンジョウ様。召喚された勇者様のお父様なのだそうです。大切な方と突然会えなくなるのはこちらの世界では日常で、私も両親と離れて久しいですが、さすがに異世界へ行ってしまうという事例はありません。
 子供を追って異世界へ渡るというのはどれほどの覚悟なのか、私には想像もできませんわ。

「どうかしましたか? ルシア様」
「いいえ、何でもありませんわ……」

 カナメ様は実年齢よりもかなりお若く見えます。子供のような細長い体躯に優し気なお顔。日々モンスターと戦うこの世界では荒々しい殿方ばかりなので、その優雅で穏やかな雰囲気はまるで絵本の中の王子様、いえ、お姫様のようです。
 無意識にじっと見つめてしまっていたようで、カナメ様が屈んで私の顔を覗くようにして尋ねられました。不意を突かれて頬が熱くなるのを感じます。

「それよりも、その様というのはやめていただけませんか? その敬語も」
「おや。ルシア様こそ、俺を要様と呼ぶじゃないですか」
「子供が年長者を敬うのは当然のことですわ」
「それを言うなら、平民が身分ある方を敬うのも当然ですね」

 もうっ! ああ言えばこう言う!

「私はこれが普段からの口調ですの。ですから、どうぞカナメ様も普段カエデ様にするように接していただけると嬉しいですわ」

 よそよそしいのは嫌ですもの、と伝えたらわかったよ、と笑ってくださいました。
 これでようやく私達、本当の仲間になれますわね。
 と言っても、他の皆さんがいる場所ではまた敬語になってしまうのですが。


 たくさんの食材を持ってきてくださったカナメ様。異世界へ渡った際に女神様から授かったスキルは世界地図というとても珍しいものでした。
 どうやらそれはカナメ様にしか見えないのですが、見た物触れた物出会った者ならば世界中どこにあっても探知できるという非常に優れたもので。冒険者ならば誰もが夢見た能力なのではないでしょうか?

 ですが戦闘に向いたスキルではないこと、カナメ様のいらっしゃった日本という国ではモンスターはおらず喧嘩もしたことがないということでカナメ様は自ら炊事など私達の世話を申し出てくださいました。

「家庭料理しかできないけどね」

 そう言ってカナメ様が作る料理の数々は、最近リージェ様が見つけたショーユなる調味料を使ったものばかりで。
 チポッラと1号さんをポーロの卵でとじたとろみのあるスープも、柔らかな燻製肉もとても美味しかったです。
 特にあのギョーザとかいう食べ物! あのように手間をかけた食べ方を私はこれまで知りません。

「キュッキュ~!!」

 リージェ様の尻尾が揺れています。久々の故郷の味に歓喜しているのがわかります。
 私も洞窟にいた頃にはお食事をご用意しておりましたが、こんなに喜んでもらったことはありません。何でしょう、とても美味しいのに、胸にズシリと重くのしかかるようなこの気持ちは。

「カナメ、嫁に来てくれ!」

 チェーザーレ様の言葉にハッとなりました。いけない、ぼーっとしてましたわ。
 それより、今何て仰いました? 嫁? チェーザーレ様がカナメ様を? あらあらまぁまぁ。

「私、応援致しますわ!」

 昔院長の書斎で読んだご本に、男性同士の純愛の物語がたくさんありましたの。それは誰からも認められない物だからこそ真剣で、懸命で。親の決めた婚約者と結婚することが主流の現実の男女の結婚よりよほどお互いを大事にしているところがとても素晴らしくて。
 ああ、院長。私達の憧れる真実の愛がここにありましてよ!




「キュッキュキュキュィッ」
「ええ、できますよ。明日の朝には食べられるよう今から仕込んでおきましょう」
「キュッキュ~」

 食後、リージェ様が私と一緒に摘んだハジミをカナメ様に渡して何か頼んでおります。
 ジャコが無いからベーコンを使ってみようか、というカナメ様の言葉に、リージェ様が食事を終えた後だというのに涎を垂らしておいでです。
 正直あの痺れ実はどう料理しても美味しくなるとは思えないのですけれど。リージェ様も調味料と仰っていたこのハジカミを、あのようにリージェ様が涎を垂らしてしまわれるほどの料理に出来るのでしょうか?

 最近はリージェ様はエミーリオ様やカナメ様のことばかりであまり私に構ってくださらない感じがします。やはり美味しい食事を作れる人の方が良いのでしょうか?
 私は長く修道院におりました。そこはダンジョンの最下層ということもあり、ザンナ・メロンくらいしか食べる物がありませんでした。
 だから、私にはリージェ様が喜ぶような料理を何一つ作って差し上げることができません。解体すらできないのですから。私、役立たずですわ……。

「あの、カナメ様。私に、リージェ様の故郷の味を教えていただけませんか? カナメ様がいない間も美味しいお食事を作って差し上げたいのです」
「ええ、構いませんよ」

 小声で故郷? と呟く声が聞こえてしまいました。もしかしたら、リージェ様がカツキ様の同窓生だとご存知ないのでしょうか?
 リージェ様が伝えていないことを、私が言う訳にはいきませんわね。


「それにしても、カナメ様? カツキ様のいらっしゃるアスー皇国へはまだまだかかりますのよ。こちらの状況がわかるのであれば、頻繁にいらっしゃらなくても良いのでは?」
「うん、でも、じっとしていられなくてね。少しでもあの子の側に、あの子と同じ空の下にいたいんだ。こんな俺でも何かできることがあるかもしれないしね」

 カナメ様に教わりながらベーコンという燻製肉にナイフを入れます。こちらの干し肉のようなものかと思ったら、まるで焼き立てのように柔らかくスッと歯が入ることに驚きました。
 自分から料理を教えてくれと言いましたのに、追い返すような言い方をしてしまったかと不安だったのですがカナメ様は気にされていないようです。


「ならば、二手に分かれるとか……」
「「「「何だと……?!」」」」

 会話を後ろで聞いていた皆様が「カナメと一緒に行くのは俺だ!」と言い争いを始めてしまいました。リージェ様まで!

「カナメ様、申し訳ありませんがやはり私達の道行きに同行していただけますか?」
「……はい」

 言い争う人達に苦笑いして、カナメ様は二手に分かれるという提案を聞かなかったことにして下さいました。
 カナメ様は内面も素敵な大人なのですわ。私も淑女として見習わないといけませんわね。
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