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第七章 俺様、南方へ行く
18、米が食えるかも!
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それから野営を繰り返すこと二日。
ユーザに道を尋ねた時は次の集落までは馬で三日と言っていたから、明日には次の集落には着くだろう。
カナメさんが日本に帰ってしまい、チェーザーレの落ち込みが凄かったのを除けばモンスターと遭遇することもなく実に平和だった。
カナメさんが日本に帰ったことで、勇者達の表情も本当に帰れるんだという嬉しさ半分、いつ帰れるんだという不安半分といった感じだがだいぶ明るくなった。良いことだ。
『何か拓けてきたな』
「この辺りは見覚えがあります」
馬車から覗く風景が、森の木々が遠くなり、代わりに畑のようなものがいくつも見えてきていた。
そんな俺の呟きに御者をしていたエミーリオが幾度かおっとり国王の護衛で訪れた記憶にある道だと気付き教えてくれる。
「あれは確かリザイアと呼ばれる畑ですよ。掘り下げた土地に水を張って、そこに麦に似た作物を育てているのです」
何?! それは、もしかしてもしかしなくても稲作じゃねぇ!?
『米が食えるかも!』
「コメ、というのはリージェ様の故郷の食物ですか?」
『そうだ。甘味のあるもちもちとした粒で腹持ちも良く、日本の主食だ』
はしゃぐ俺にルシアちゃんが尋ねるので、調達できれば勇者も喜ぶぞと教えてやる。
残念ながら現在は休耕期なのか水は張っていないし稲も見えないので本当に米があるかは不明だが、何も新米でなくていい。保存がきくんだ。次の町で買えることに期待しよう。
「粒、ですか? 確か俺がアスー皇国に逗留している間供されたのは、白く弾力のある柔らかなパンか、ねちょねちょとした弾力のある塊の入ったスープでしたけど」
俺の言葉にエミーリオが首を傾げている。
えーっと、米粉のパンとすいとん、かな? もしかしたら麦の代用品として使われているのか?
まだ見ぬ米への期待も膨らむ中、その日も路肩で野営となった。
夜明け前に散歩すると言って田んぼを見に行くと、それほど広くない土地がいくつも道に沿って掘り下げてある。一区画がそれほど広くないのは水を張る関係だろうか?
現在は水は流れていないが、灌漑らしきものも田んぼの向こう側に見える。干上がっているが、どう見ても懐かしの田んぼであった。
「懐かしいなぁ。近所の田んぼで蛙を追い回したのを思い出す」
田んぼの向こう側、数百メートル先に頑丈そうな柵が見えた。あれでモンスターが防げているかは謎だが、これだけ距離があるのはいざという時に逃げる時間を稼ぐためなのだろう。なかなか工夫されている。
簡単な朝食を済ませ、意気揚々と出発すると、いくらも経たないうちに町が見えてきた。
前回逗留した町よりもはるかに大きいが、畑が多く、発展しているというよりは大規模農業の集落と言った方が正しい表現だろう。ひと昔前の農村といった牧歌的な風景が広がっていた。
門衛に教えてもらった宿に行くまでには、何やら箒に似た植物を箕の中で叩きその先についた実を取っていたり、大豆に似た豆をさやから取り出したりと軒先で作業をしている人々がいた。通りかかる度に笑顔で手を振ってくれたりと、余所者への偏見はないようだ。
「まぁまぁ、ずいぶんと大勢で。ありがたいことです」
「18人で、女性は別部屋をお願いしたいのだが空いているか?」
教えられた宿は町の規模の割に立派で、木造の三階建てだった。
受付に立っていた恰幅の良い中年の女性は、笑顔で歓迎の言葉を述べながらも年齢も服装もバラバラの集団に、いったいどんな集まりか探っているように感じた。
アルベルトが人数を告げると、女性は何か帳簿のようなものを取り出す。
「そうですねぇ、3人部屋が4つと、2人部屋が3つ空いてます」
「ふむ……ルシア様、一人部屋でなくて大丈夫ですか?」
「ええ、殿方と一緒でなければ構いませんわ。ええと、ミドウ様、ご一緒でよろしいかしら?」
「えっ?! わわわ、私ですか? は、はい。聖女様さえ良ければそれで大丈夫です」
アルベルトがルシアちゃんに話を振ったのはわざとだろうか?
武装した厳ついおっちゃんが様付けで呼ぶ少女。そして、彼女を聖女と呼ぶ少女。そのやりとりで一瞬受付の女性が一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を作る。なかなかプロだなこの人。
「3人部屋は二階、2人部屋は三階の奥です。食事は朝夕別料金でそれぞれ銅貨5枚いただきます。夕食は4オーラからならいつでも食べられます。食事はこの奥の食堂でお願いします」
3人部屋が銀貨3枚、2人部屋が銀貨2枚と言われるままにアルベルトが1泊分と朝晩の食事代も合わせて支払うと、女性は鍵を渡しながら食堂の場所と時間を伝えてきた。
受付の奥には、上に向かう階段と、その横に食堂が見えた。
既に食堂の営業開始時刻である4オーラは過ぎているため、何人か体格の良い男性が酒を飲み交わしているのが見えた。
「じゃあ、各自荷物を部屋に置いたら食堂に集合で」
女子がルシアちゃんを入れてちょうど6名で3階の2人部屋、男子が2階の3人部屋になった。
俺? 俺は勿論ルシアちゃんと一緒。
さてさて、いよいよお楽しみの食事。エミーリオの話だとすいとんっぽいけど、懐かしの米が食えると思うと涎が止まらん。果たしてどんなものが出てくるかな?
ユーザに道を尋ねた時は次の集落までは馬で三日と言っていたから、明日には次の集落には着くだろう。
カナメさんが日本に帰ってしまい、チェーザーレの落ち込みが凄かったのを除けばモンスターと遭遇することもなく実に平和だった。
カナメさんが日本に帰ったことで、勇者達の表情も本当に帰れるんだという嬉しさ半分、いつ帰れるんだという不安半分といった感じだがだいぶ明るくなった。良いことだ。
『何か拓けてきたな』
「この辺りは見覚えがあります」
馬車から覗く風景が、森の木々が遠くなり、代わりに畑のようなものがいくつも見えてきていた。
そんな俺の呟きに御者をしていたエミーリオが幾度かおっとり国王の護衛で訪れた記憶にある道だと気付き教えてくれる。
「あれは確かリザイアと呼ばれる畑ですよ。掘り下げた土地に水を張って、そこに麦に似た作物を育てているのです」
何?! それは、もしかしてもしかしなくても稲作じゃねぇ!?
『米が食えるかも!』
「コメ、というのはリージェ様の故郷の食物ですか?」
『そうだ。甘味のあるもちもちとした粒で腹持ちも良く、日本の主食だ』
はしゃぐ俺にルシアちゃんが尋ねるので、調達できれば勇者も喜ぶぞと教えてやる。
残念ながら現在は休耕期なのか水は張っていないし稲も見えないので本当に米があるかは不明だが、何も新米でなくていい。保存がきくんだ。次の町で買えることに期待しよう。
「粒、ですか? 確か俺がアスー皇国に逗留している間供されたのは、白く弾力のある柔らかなパンか、ねちょねちょとした弾力のある塊の入ったスープでしたけど」
俺の言葉にエミーリオが首を傾げている。
えーっと、米粉のパンとすいとん、かな? もしかしたら麦の代用品として使われているのか?
まだ見ぬ米への期待も膨らむ中、その日も路肩で野営となった。
夜明け前に散歩すると言って田んぼを見に行くと、それほど広くない土地がいくつも道に沿って掘り下げてある。一区画がそれほど広くないのは水を張る関係だろうか?
現在は水は流れていないが、灌漑らしきものも田んぼの向こう側に見える。干上がっているが、どう見ても懐かしの田んぼであった。
「懐かしいなぁ。近所の田んぼで蛙を追い回したのを思い出す」
田んぼの向こう側、数百メートル先に頑丈そうな柵が見えた。あれでモンスターが防げているかは謎だが、これだけ距離があるのはいざという時に逃げる時間を稼ぐためなのだろう。なかなか工夫されている。
簡単な朝食を済ませ、意気揚々と出発すると、いくらも経たないうちに町が見えてきた。
前回逗留した町よりもはるかに大きいが、畑が多く、発展しているというよりは大規模農業の集落と言った方が正しい表現だろう。ひと昔前の農村といった牧歌的な風景が広がっていた。
門衛に教えてもらった宿に行くまでには、何やら箒に似た植物を箕の中で叩きその先についた実を取っていたり、大豆に似た豆をさやから取り出したりと軒先で作業をしている人々がいた。通りかかる度に笑顔で手を振ってくれたりと、余所者への偏見はないようだ。
「まぁまぁ、ずいぶんと大勢で。ありがたいことです」
「18人で、女性は別部屋をお願いしたいのだが空いているか?」
教えられた宿は町の規模の割に立派で、木造の三階建てだった。
受付に立っていた恰幅の良い中年の女性は、笑顔で歓迎の言葉を述べながらも年齢も服装もバラバラの集団に、いったいどんな集まりか探っているように感じた。
アルベルトが人数を告げると、女性は何か帳簿のようなものを取り出す。
「そうですねぇ、3人部屋が4つと、2人部屋が3つ空いてます」
「ふむ……ルシア様、一人部屋でなくて大丈夫ですか?」
「ええ、殿方と一緒でなければ構いませんわ。ええと、ミドウ様、ご一緒でよろしいかしら?」
「えっ?! わわわ、私ですか? は、はい。聖女様さえ良ければそれで大丈夫です」
アルベルトがルシアちゃんに話を振ったのはわざとだろうか?
武装した厳ついおっちゃんが様付けで呼ぶ少女。そして、彼女を聖女と呼ぶ少女。そのやりとりで一瞬受付の女性が一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を作る。なかなかプロだなこの人。
「3人部屋は二階、2人部屋は三階の奥です。食事は朝夕別料金でそれぞれ銅貨5枚いただきます。夕食は4オーラからならいつでも食べられます。食事はこの奥の食堂でお願いします」
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既に食堂の営業開始時刻である4オーラは過ぎているため、何人か体格の良い男性が酒を飲み交わしているのが見えた。
「じゃあ、各自荷物を部屋に置いたら食堂に集合で」
女子がルシアちゃんを入れてちょうど6名で3階の2人部屋、男子が2階の3人部屋になった。
俺? 俺は勿論ルシアちゃんと一緒。
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