中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
159 / 228
第七章 俺様、南方へ行く

28、許さねぇ

しおりを挟む
 突然聞こえたその悲鳴に、ルシアちゃんがいち早く店内へと駆け込んだ。
 小さな店舗には何故か人垣。飛び込んできた俺達には気づかずに、皆一様に店の奥を見て固まっている。
 その奥から、男女の言い争うような声が。何だ、痴話げんかか?

「やめなさいって言ってるでしょ!」
「うるせぇな! 俺達は勇者だぜ? 守られるだけのこいつらは前線で戦う俺達のために装備を供出する義務がある!」
「そんなわけないでしょ! 皇帝陛下が後見してくれてるんだから、そんな強盗紛いのことをしたら皇帝陛下に迷惑が」
「うるせぇっつってんだろ!」
「キャァッ」

 台詞からしてどう考えても勇者達だ、とわかった途端、ゴッ、と鈍い音がした。

「差し上げますから、どうかこれ以上は……」
「ったく、トロいんだよ! さっさと渡せば良いものを」

 ルシアちゃんが慌てて人垣をかき分け前に出る。
 そこには、無理やり奪い取ったと見られる長剣を眺めて笑う本田と、同じようにニタニタと笑う数名の男子、倒れている小島とそれを介抱しようとしている数名の女子がいた。
 懐かしいなぁ、本田。よく俺のヒーローごっこに付き合ってくれたメンバーの一人で、確か小島がちょくちょく本田の後をついて回ってたっけ。ん? この二人付き合ってたのか?

「本田最低! よくも女子の顔を殴れるわね!」
「あぁ?」
「ひっ!」

 ぼんやりと懐かしい日々を思い出していたら、小島を助け起こそうとしていた女子が本田を非難している。えーっと、名前何て言ったっけ?
 本田は本田で剣を抜き放って女子を一睨み。めちゃくちゃ凄みがある。何だか以前よりますます悪役がお似合いの顔になって。
 と、突然本田が剣を近くにいたエプロン姿の男性に斬りつけた。
 周囲から悲鳴が上がる。

「おやめなさい! 貴方、一体何のつもりですか!?」

 止める暇もなかった。それだけ素早い剣筋だった。
 右脇腹を斬られた男性は生きてはいるが、血が凄い勢いで噴出している。
 ルシアちゃんが本田を非難しつつ押しのけて男性に駆け寄り、回復魔法をかける。
 見る見る傷が塞がっていくが、相当な量の血が失われたようで顔は蒼白のままだ。

「何って、武器を手に入れたから試し斬りしたんだよ。いざ戦うって時になまくらじゃ困るだろうが」
「ならば精肉店でそれ用に肉を貰えば良いでしょう?! あなたは勇者ではなくただの殺人鬼です! 恥を知りなさい!」
「あぁ? 戦う術を持たない守られるだけの聖女が、勇者である俺を否定するって言うのか? 俺達が一緒に行かなきゃ、困るのはあんたじゃないのか?」
「そ、それは……」

 ルシアちゃんが言葉に詰まる。
 うん、本当は困らないのだけどね、決戦の前に日本に帰すから。
 あ、でもここで一緒に行動してもらえないと日本に帰せないのか。それは確かに面倒だな。
 じゃあ日本に帰さないでこの世界の人として自由に過ごしてもらう……ってのは1号に文句言われそうだな。

「あーあー、俺傷ついちゃったなぁ。皆も聞いただろ? 俺は勇者じゃなくて殺人鬼なんだってよ。土下座で謝ってもらわなきゃ、あんたを守る気も一緒について行って戦う気も起きねぇなぁ」

 本田の言葉に周囲にいた男勇者からも土下座コールがかかる。
 女子達やこの世界の人からは酷い、とか聞こえるが、一睨みで黙らされている。
 ルシアちゃんが震えながらゆっくりと身を屈めようとしていた。

『やめろ、ルシア。堂々としているのだ。正しいのはこちらだ』

 慌てて制止する。
 ルシアちゃんは何も悪くないのに、こんなことをさせるなんて。こんなことをする奴だったなんて。許さねぇ。

「天…」
「やめろ」
「グッ……な、なんだ? 体が急に……っ」

 俺が翼に光を溜めようとしたところで、本庄から制止の声がかかる。その声に我に返る。
 そうだ、ここで天罰なんて使おうものなら本田の後ろにいる女子達まで消し炭にしてしまう。
 本田が急に床に片足ついたが、本庄が何かしているようだ。
 もう大丈夫だ。俺は冷静だ。

「(ちっちゃく)血飛沫と共に踊れ」
「い、痛っ! いててててて! おい、何だ? 誰だ! やめろ!」

 イメージは鎌鼬。本田だけを取り囲むように、殺さない程度にズタズタに。
 本庄が容赦ないなって呟くのが聞こえたけど、これでもかなり加減しているよ?
 イメージ通り、他の人間には被害が出てないし。

「なら良いけど。気絶しているしそろそろやめて良いんじゃない?」
『む、そうか。店主、この罪人を縛るものはあるか?』
「は、はい」

 ルシアちゃんに治療してもらったエプロン姿の男性がロープを持ってくる。
 さり気なく逃げようとしていた他の男子を、気が付いた小島含む女子が取り囲んでボコボコにしていた。やっぱり女の子って怖い……。

「この度は、私達の連れが大変申し訳ありませんでした」
「そ、そんな! 聖女様は何も悪くありません。頭を上げてください!」

 本田達に代わって謝罪するルシアちゃんを、店主が大慌てで止める。
 それどころか、自分を治療してくれたお礼を述べて二人でペコペコ。
 そんな二人に、女子達が金貨を差し出した。

「本当に、申し訳ありませんでした。これ、彼らの持っていたお金です。お店の弁償に足りますか?」

 十分だと言って、店主は許してくれた。
 本田達は罪人として皇帝に報告すると約束し、縛り上げたまま小島達に協力してもらい連れて帰る。勿論、治療などしてやらない。
 彼らは出立の日まで牢屋で過ごすことになる。一応戦力なので、出立の際には連れていくことにできたのは良かった。

 あ、雑貨屋行くの忘れた。まぁ良いか明日で。
 夕食後に部屋でルシアちゃんに結界の石について色々聞きながら、作って欲しい物のイメージを伝えていた時、静かに扉が叩かれた。
 招き入れると、入ってきたのは昼間の騒動に関わった女子達だった。
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...