中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
160 / 228
第七章 俺様、南方へ行く

29、そうそう、これだよこれ!

しおりを挟む
 相談したいことがある、と言って入ってきたのは小島と3人の女子(名前は思い出せない)。小島の顔は殴られた部分が腫れたままだ。今は少し青黒くなっている。小島が他のメンバーに何があったのか伝えるのにそのままにしてくれと治療を拒否していたのだ。漢だな。
 流石にもう説明も済んだようだし、直後より痛々しい顔になっているのでルシアちゃんが治療をする。少しすると殴られたことが嘘だったかのように元の顔に戻った。

「それで、どんなお話でしょうか」
「本田のことです」

 うすうす予想はしていたが、女子を代表して小島が話を切り出した。

「本田だけじゃないです。他の子達にも、アスーで召喚されたメンバーの様子を聞きました。皆、自分勝手で乱暴になっていたって。それで、日本に帰すのはアスーで召喚されたメンバーからにして欲しいんです」
「良いのか? お前たち、あんなに帰りたがってたじゃないか。今日までずっと我慢していたんだろ?」

 1号の言葉に、ピクリと肩を震わせる女子達。
 そうだ。皆一日も早く帰りたいと言っていたのに、こちらの都合でずっと我慢してもらっていたんだ。口では後で良いと言っていても、本音はやはり帰りたいんだろう。

「他の子達とも話し合って決めたんです。全員一度に帰れないから、一人ずつしか帰れないから、アスーのメンバーの中一人取り残されるのは嫌だって」
「昼間はこちらの方が人数は多かったけど、それでも本田の暴走を止められなかったの」
「力では敵わないから、今だってどんな目に遭うかわからないのが怖いんです」

 小島の言葉を引き継ぐように口々に不安を吐き出す女子達。
 だったら暴走気味なアスーメンバーから先に帰してしまえば良いという結論になったらしい。
 本庄から頼まれて後で意見を聞こうと思っていたことを、まさか彼女たちからされるとはな。

『実はな、同じことを本庄からも頼まれていたのだ』
「本庄君が?」
『ああ。奴がこちらでずっと引きこもっていたのを知っているだろう? あれは、制止しようと努めていた本庄を邪魔に思った連中に命を狙われるようになったかららしい』
「そんなことが!?」

 信じられない、と驚きを隠さない4人。
 だが、昼間の本田の言動を思い出したのかすぐにあり得るかも、と頷いた。

「では、皆様の意見が一致したということで、アスーの勇者から先に送還しましょう」
『日本に帰りたがらない奴もいるかもしれないから、黙っていた方が良いかもな』
「帰してやるのが遅くなってごめんな。また我慢させてしまうな」
「先生……」

 1号のすまなそうな声に泣き出す女子達。早いとこ、皆を帰してやりたいな。
 他のメンバーにも、日本に帰れることは他言しないよう伝えてくれと言ってそれぞれの部屋に帰した。
 城にいる間は何も起きないとは思うが、道中は勇者の行動に注意するようアルベルト達にも伝えておかないとな。



 次の日。
 俺達は早朝から街に繰り出した。勿論本庄も巻き添えである。

「えっと、朝食は良いの?」
『ああ。あんな状況で食えるか』

 皇帝がやたら俺を触ってくるのだ。食事中はじっと見つめてくるし。いい加減ウザい。
 腹の虫がグーグーと催促をしてくるが、急ぎ足である場所に向かう。
 昨夜、1号がそこに行けと言ってきたのだ。

 そこは、アスーの正門のすぐ近くにある小さな広場。
 美しく刈り整えられた植木に囲まれ、街の喧騒がまるで聞こえない状態は、そこだけぽっかりと異空間になっているようだ。
 その広場の中央、噴水を背にしたベンチに、一人の男性が座っていた。

「……嘘……お父さん?」
「香月、無事だと信じていたよ」
「お父さぁぁああん!」

 要さんの姿を認めた途端、駆け出した本庄。同じように駆け寄ってきた要さんに縋り付くと、本庄は小さな子供のように声を上げて泣いていた。要さんも涙目になりながら、しっかりと抱き返してその頭を優しく撫でている。

 要さんは昨夜門の外に到着し、今朝開門と同時にアスーに入りここで待っていたのだ。
 今夜は正門近くの宿で泊り、明日アスーを出る予定らしい。次に来る時には一緒に行動できるって。
 それにしても本庄、要さんの髪色はスルーなのか。そうか。

「あ、そうだ。これ頼まれたやつ」
『おお! 待っていたぞ!』

 要さんが茶色い藤篭のバスケットを俺に渡してくる。
 そうそう、これだよこれ! このために朝飯抜いてきたんだよ!
 1号経由で頼んだのはお弁当。勿論本庄とルシアちゃんの分も。
 ウキウキしながら開けると、中に入っていたのは焼きおにぎりと唐揚げ、煮たまごと漬物。

「これは……食べた事ない味ですがとても美味しいです」
「お父さんの料理、やっぱり美味しい」

 焼きおにぎりはジャコと青じそを混ぜて味噌を塗ったもの。海のないこちらでは食べられないものだ。
 唐揚げも、素揚げは見たが衣をつけて揚げた料理はまだ見たことが無い。
 卵もおそらくただ茹でるだけとか、焼くだけなのだろう。
 懐かしい味に本庄は泣きながら食べている。俺も旨すぎて尻尾がパタパタ動いている。そう、こういう家庭の味が食べたかったんだよ!

 要さんの料理に飢えているチェーザーレには内緒で美味しい料理に舌鼓を打った後は街を散策する。
 昨日注文した料理の受け取りと、昨日回れなかった雑貨屋だな。勿論要さんが一緒だ。
 弁当を食べている俺達をエミーリオとドナートが羨ましそうに見ていたような気がするが、うん、俺は何も見ていないよ?
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...