中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第八章 俺様、勇者と対立する

4、喧しいわ!

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 翌朝、サワサワと木の葉の揺れる音で目が覚める。
 ポヨン、と背中に触れる柔らかな感触はいつものルシアちゃんのものだが、何だかベッドが固い。……そう言えば宿じゃなく野営だったんだ。

「あ、おはようございます! リージェ様!」
『……あれ? エミーリオがいる……』

 俺まだ寝惚けてるのかな?
 眼をこすってキョロキョロと馬車の中を見渡し、ルシアちゃんのほっぺをツンツンして起こす。
 猫のように手足を思いっきり伸ばして眠気を吹き飛ばすと、馬車の外へと出た。

「朝食はもうすぐできますからね。もうちょっと待っていてください」

 うん、やっぱり当たり前のような顔をしてエミーリオが朝食の用意をしている。
 って、待て待て待て!

『何故貴様がここにいるのだ、エミーリオ?!』
「俺もいまーす! あっ!」

 大鍋をかき混ぜるエミーリオの肩から1号がこちらに向かって手を振り、バランスを崩してそのまま鍋の中へ。寝起きからアホを見てしまった。


「うん、今日のスープは美味いぜ。何しろよく出汁が効いているからな、俺の!」
『食べる気が失せるではないか!』

 鍋から這い出てきた1号にデコピンをかましておく。
 改めて谷岡達と共に行動しているはずのエミーリオが何故ここで俺達の食事を作っているのか問い質すと、エミーリオは鍋を火から外してこれまでの経緯を教えてくれた。
 なんでも、あちらの件で一度俺を呼びに来たのだと。

「取り敢えず、仕掛けはあっさりと成功したぜ」
「ええとですね、昨日の夕食に用意したスープに睡眠薬を盛ったんです。対モンスター用の強いやつ」

 そんな強力な睡眠薬、どこから持ってきたんだ。と思ったらエミーリオが腰鎧の盾のようなものをカパっと開いた。
 エミーリオの装備には腰回りと肩に医薬品を入れるスペースがあるらしく、回復薬だけでなく、毒薬などを戦闘に用いることがあるのだそうだ。開けて見せてくれたそこには試験管のような容器が2~3本ずつ、すぐ抜き取れるように収納されていた。
 攻撃魔法がない人間達にとって、毒薬も立派な武器ってことらしい。
 これまで使わなかったのは、俺やアルベルト達が常にいたから使う必要がなかったんだと。

「で、見事に全員眠らせた……はずだったんだが、五十嵐だけ毒耐性があるのか効かなくてな。エミーリオに当て身で気絶させてもらって、帰したんだ」
『他のメンバーは? 五十嵐がいなくなったことで騒ぎになっているんじゃないのか?』
「ああ、それなら大丈夫です。眠っている間に拘束して全員別々の場所に閉じ込めてきました」

 おい、それ犯罪だからな!? 教師が生徒を睡眠薬で眠らせ監禁ってちょっとした事件だからな!?
 まぁ、それはともかく。勇者たちがどんなスキルを持っているかもわからないのに、目を離して平気なのか?
 今頃魔法で脱出しているかもしれんぞ?

「いや、それも大丈夫」
「ただ、一応確認も兼ねてリージェ様には様子を把握しておいていただこうと思いまして」

 何を根拠に大丈夫と言っているかは不明だが、脱走される心配がなくなったからエヴァに乗って早駆けで戻ってきたのだと。
 まぁ、俺も気になるしそう言うなら見に行くかね。

「あ、因みに全員一網打尽に眠らせてバラバラにしたら良いってのはエミーリオの案であって、俺の出した案じゃねぇからな? 人聞きの悪い言い方するなよ?」

 必死だな、1号。
 しかし、だとすると最初の1号の案はどんなものだったのか……。
 ジト、と見続けると目を逸らされた。やっぱりお前の案だろ!



『という訳なので、俺様は奴らの様子を見に行ってくる』
「私も行きますわ」

 朝食を摂りながら谷岡達を拘束したと聞いた勇者達は、一瞬固まった後、わっと歓声を上げた。
 ざまぁみろなんて言っている奴は4号に諭されていた。
 ルシアちゃんは当然ついてくるようだ。こうなると引かないからなぁ。

『では、他のメンバーは先に村に向かっていてくれ。アルベルト達、護衛を頼むぞ』
「任せとけ」

 片付けも全部彼らに任せ、俺とルシアちゃんはエヴァに乗せてもらう。
 ルシアちゃんがエミーリオに抱かれる体勢になるのが若干気に食わないが。……ルシアちゃんがエミーリオを全く男として意識していないようなので許す。



『な、何だこれは……?!』

 谷岡達の監禁場所は、俺達が野営をしていた地点からは割と近くだった。
 そこで俺が見たのはちょっとしたホラーな光景。
 森の中に突如現れた地下へと伸びる洞窟。光も差さないその奥に、漆黒の祭壇のようなものがあった。恐らくは黒の使徒達が隠れて暗黒破壊神を崇めていた場所。
 まぁ、ここまでは良いのだが。

 松明の明りに照らし出されたサバトのような異様な空間。
 蛇のような恐竜のような、よくわからない生物の骨がそこかしこに転がり、壁には呪文のようなものや紋章が描かれている。
 そんな異様な空間一帯を、エリンギのようなきのこがひしめき合い蠢いているのだ。

「「「「あ、遅いぞリージェ!」」」」
『喧しぃわ! いっぺんに喋るな! というか貴様らどこからこんなに湧いた?!』

 モンスターの骨より、おどろおどろしい祭壇より、数えきれないほどびっしりと集まって蠢いているものの方がおぞましいと俺はこの時初めて知った。
 そんでもって、そいつらがいっぺんに話すもんだから堪らない。
 ただでさえ地下で反響するってのに、ワンワンと音が広がり増幅されちょっとした凶器だ。
 そうか、意識は戻ってもこの状況下じゃ脱出なんかできないわな。納得。
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