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第八章 俺様、勇者と対立する
23、くそっ、またかよ!
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動きの鈍い今のうちに、とでも思ったのかバルトヴィーノが蛇竜の胴に斬りかかる。
しかし、まるで岩にでも当たったかのような音と共に弾かれて後ろに仰け反ってしまった。
斬られた当の蛇竜は微動だにせず、相変わらずこちらに唸り声をあげている。というより、どうやらルシアちゃんに狙いを定めたようで凝視している。
ならば。
「血飛沫と共に踊れ!」
俺はその腹に近づき、超至近距離から斬撃を放つ。勿論全力だ。
「ギャアアアアアアッ!!」
斬撃はその皮に吸い込まれ、赤黒い花を散らす。
残念ながら切断するには至らなかったが、蛇竜が悲鳴を上げて悶絶しているからまぁまぁか。
なんて思っていたらまたあの黒い靄が見る見る傷を塞いでしまった。痛みの消えたらしい蛇竜は上体を起こして首を傾げている。キョトン顔やめろ、ムカツク!
「きゃぁ!」
暗黒破壊神の影響が強いのか、蛇竜は俺を無視して執拗にルシアちゃんを狙い攻撃を開始する。
その巨体に元々の素早さが乗り、かなり攻撃が重くなっているようだ。
俺が咄嗟に攻撃を逸らそうと斬撃を放ったが、あまり効果はなかった。蛇竜が振り抜いた尻尾に、ルシアちゃんを庇って剣で居なそうとしたバルトヴィーノごとルシアちゃんが吹き飛ばされていく。
『ルシア!』
止めとばかりに蛇竜が何やら液体を吐き出す。それをまともに喰らったバルトヴィーノとルシアちゃんは倒れてしまった。辛うじて生きてはいるようだが、自力で動けない限り次に攻撃をされたら避ける事すらできない。このままでは二人とも死ぬ?
くそっ、またかよ! 俺は何だってこんなに無力なんだ。何が巨大化した所で脅威に感じないだよ。
力が欲しい。もっともっと。せめてこの爪がもっと鋭かったら。あの巨大な蛇竜にもう少しまともな攻撃ができるのに。この体がもっと大きかったら、ルシアちゃんを安全な所まで運んでやることだってできるのに。
――ドクン。
胸の奥で大きく心臓が跳ねた。体が熱い。
――ドクン。
また跳ねる。苦しい。まるで全身が引きちぎられるかのようだ。
「ぐぁあぁぁぁぁああああああああああああああっ!!!!!」
この感覚には覚えがある。確かルシアちゃんが下衆な教皇に手籠めにされそうになった時だ。でも、あの時よりもずっと熱い。
自分の身体が一度溶けて再構築されていくような錯覚すら覚える。
――ドクン。
身体の中で暴れ回る熱を振り払おうと腕を無意識のうちに振るう。
よくもルシアちゃんを。
――ドクン。
熱い。
――ドクン。
助けなきゃ。
――ドクン。
苦しい。
――ドクン。
こいつだけは――……。
『――……がレベル24になりました――』
「ハッ?!」
頭の中に直接響くレベルアップを告げる声に我に返ると、全て終わっていた。
目の前には原型をとどめていないほどぐちゃぐちゃになった蛇竜の遺骸と、破壊し尽くされたきのこの村。
焼けたような断面に、ガラス状になった大地。≪天罰≫を放った時のような状態だ。
これ、俺がやったのか?
「っと、そんな場合じゃない。ルシアちゃん!」
慌てて辺りを見回すと、謎の液まみれになったバルトヴィーノがルシアちゃんに覆いかぶさるように倒れていた。
その背中は傷だらけで流血と火傷が見える。防具はなく半裸だ。何故裸? っと、また逸れた。
『水よ、集いて我が命に従え。この者達を清め、癒しを与えよ』
この謎の液体に触れた途端倒れたのだから、恐らくは毒。これをまず何とかしないと。でもバルトヴィーノの傷も酷くてどのくらい猶予があるかもわからない。
ならば一気にやってしまえば良い、と洗浄と回復の効果をイメージしてMPを注ぐ。ゲームなんかで言うならば≪クリーン≫と≪ポーション≫だろうか? 回復効果のある水は作ったことあるから、簡単に考えてやったのだがMPを一気に持って行かれた。体が一瞬で重怠くなる。
それにしても……ルシアちゃん、こんなに小さかったっけ?
まるで洗濯機のようにクルクルと回る水の中で為すがままの二人を見ながら首を傾げる。
そろそろ溺死しない? と不安になり始めた頃、水が一気に地面に落ちて消えた。
「リージェ……様……? その姿は……?」
「お前、本当にリージェか?」
あ、良かった。二人とも生きてた。
心配していたが、水が引いた途端に咳き込みながら聞いてきた。どうやら途中から意識はあったらしい。危うく溺死させるところだった。やりすぎ注意だな。
『無論、俺様だ。それより、動けそうか?』
姿? 俺のプリチーなボディに何か起きてるの?
気になるは気になるけど、鏡ないしなぁ。
そんな事より、今は家の方だ。俺の攻撃の余波は受けていないようだが、嫌な予感は消えていない。最初に感じた時よりは薄くなったけど。
「……俺はまだ大丈夫だ」
「私も、まだ大丈夫です」
『……そうか。これから、アルベルトの所に加勢に行く。恐らく蛇竜と同等、いや、格上の奴がいる可能性がある。動けても戦う余力がないようなら』
「行けます!」
「家の中にはまだガキ共がいるんだろ? 連れて逃げるくらいならできるさ」
結界はあと4回、回復魔法はあと5回使える、と意気込むルシアちゃんが食い気味に答える。
半裸のバルトヴィーノは欠けた剣を見ながら、自分にできるのは勇者や幼女を外に逃がすことだと言い切った。
うん、役割を解っているなら無茶はしないだろう。
『では、行くぞ!』
「ああ!」
「はい!」
気合は十分。
不気味なほどに静まり返っている家に向かって、俺達は駆け出した。
しかし、まるで岩にでも当たったかのような音と共に弾かれて後ろに仰け反ってしまった。
斬られた当の蛇竜は微動だにせず、相変わらずこちらに唸り声をあげている。というより、どうやらルシアちゃんに狙いを定めたようで凝視している。
ならば。
「血飛沫と共に踊れ!」
俺はその腹に近づき、超至近距離から斬撃を放つ。勿論全力だ。
「ギャアアアアアアッ!!」
斬撃はその皮に吸い込まれ、赤黒い花を散らす。
残念ながら切断するには至らなかったが、蛇竜が悲鳴を上げて悶絶しているからまぁまぁか。
なんて思っていたらまたあの黒い靄が見る見る傷を塞いでしまった。痛みの消えたらしい蛇竜は上体を起こして首を傾げている。キョトン顔やめろ、ムカツク!
「きゃぁ!」
暗黒破壊神の影響が強いのか、蛇竜は俺を無視して執拗にルシアちゃんを狙い攻撃を開始する。
その巨体に元々の素早さが乗り、かなり攻撃が重くなっているようだ。
俺が咄嗟に攻撃を逸らそうと斬撃を放ったが、あまり効果はなかった。蛇竜が振り抜いた尻尾に、ルシアちゃんを庇って剣で居なそうとしたバルトヴィーノごとルシアちゃんが吹き飛ばされていく。
『ルシア!』
止めとばかりに蛇竜が何やら液体を吐き出す。それをまともに喰らったバルトヴィーノとルシアちゃんは倒れてしまった。辛うじて生きてはいるようだが、自力で動けない限り次に攻撃をされたら避ける事すらできない。このままでは二人とも死ぬ?
くそっ、またかよ! 俺は何だってこんなに無力なんだ。何が巨大化した所で脅威に感じないだよ。
力が欲しい。もっともっと。せめてこの爪がもっと鋭かったら。あの巨大な蛇竜にもう少しまともな攻撃ができるのに。この体がもっと大きかったら、ルシアちゃんを安全な所まで運んでやることだってできるのに。
――ドクン。
胸の奥で大きく心臓が跳ねた。体が熱い。
――ドクン。
また跳ねる。苦しい。まるで全身が引きちぎられるかのようだ。
「ぐぁあぁぁぁぁああああああああああああああっ!!!!!」
この感覚には覚えがある。確かルシアちゃんが下衆な教皇に手籠めにされそうになった時だ。でも、あの時よりもずっと熱い。
自分の身体が一度溶けて再構築されていくような錯覚すら覚える。
――ドクン。
身体の中で暴れ回る熱を振り払おうと腕を無意識のうちに振るう。
よくもルシアちゃんを。
――ドクン。
熱い。
――ドクン。
助けなきゃ。
――ドクン。
苦しい。
――ドクン。
こいつだけは――……。
『――……がレベル24になりました――』
「ハッ?!」
頭の中に直接響くレベルアップを告げる声に我に返ると、全て終わっていた。
目の前には原型をとどめていないほどぐちゃぐちゃになった蛇竜の遺骸と、破壊し尽くされたきのこの村。
焼けたような断面に、ガラス状になった大地。≪天罰≫を放った時のような状態だ。
これ、俺がやったのか?
「っと、そんな場合じゃない。ルシアちゃん!」
慌てて辺りを見回すと、謎の液まみれになったバルトヴィーノがルシアちゃんに覆いかぶさるように倒れていた。
その背中は傷だらけで流血と火傷が見える。防具はなく半裸だ。何故裸? っと、また逸れた。
『水よ、集いて我が命に従え。この者達を清め、癒しを与えよ』
この謎の液体に触れた途端倒れたのだから、恐らくは毒。これをまず何とかしないと。でもバルトヴィーノの傷も酷くてどのくらい猶予があるかもわからない。
ならば一気にやってしまえば良い、と洗浄と回復の効果をイメージしてMPを注ぐ。ゲームなんかで言うならば≪クリーン≫と≪ポーション≫だろうか? 回復効果のある水は作ったことあるから、簡単に考えてやったのだがMPを一気に持って行かれた。体が一瞬で重怠くなる。
それにしても……ルシアちゃん、こんなに小さかったっけ?
まるで洗濯機のようにクルクルと回る水の中で為すがままの二人を見ながら首を傾げる。
そろそろ溺死しない? と不安になり始めた頃、水が一気に地面に落ちて消えた。
「リージェ……様……? その姿は……?」
「お前、本当にリージェか?」
あ、良かった。二人とも生きてた。
心配していたが、水が引いた途端に咳き込みながら聞いてきた。どうやら途中から意識はあったらしい。危うく溺死させるところだった。やりすぎ注意だな。
『無論、俺様だ。それより、動けそうか?』
姿? 俺のプリチーなボディに何か起きてるの?
気になるは気になるけど、鏡ないしなぁ。
そんな事より、今は家の方だ。俺の攻撃の余波は受けていないようだが、嫌な予感は消えていない。最初に感じた時よりは薄くなったけど。
「……俺はまだ大丈夫だ」
「私も、まだ大丈夫です」
『……そうか。これから、アルベルトの所に加勢に行く。恐らく蛇竜と同等、いや、格上の奴がいる可能性がある。動けても戦う余力がないようなら』
「行けます!」
「家の中にはまだガキ共がいるんだろ? 連れて逃げるくらいならできるさ」
結界はあと4回、回復魔法はあと5回使える、と意気込むルシアちゃんが食い気味に答える。
半裸のバルトヴィーノは欠けた剣を見ながら、自分にできるのは勇者や幼女を外に逃がすことだと言い切った。
うん、役割を解っているなら無茶はしないだろう。
『では、行くぞ!』
「ああ!」
「はい!」
気合は十分。
不気味なほどに静まり返っている家に向かって、俺達は駆け出した。
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