Dランク水魔法使いが実家を追い出された後、真理を手に入れて死神と呼ばれる冒険者となる話

卯月 みつび

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第一章 死神と呼ばれた男

少年の始まりの物語④

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 ルクスの歩む先。そこに、舞い降りたのは傷だらけの悪魔だ。ぼろぼろになった身体となくなった片腕。満身創痍の見た目と反して、その身から湧き出る威圧感はけた違いだった。
 その表情は怒りに満ちており、鋭い視線はルクスを貫いている。


 無言で向かい合う二人だったが、悪魔が全身に力を籠めると、片腕以外の傷がきれいさっぱりなくなった。

「っ――!?」
「所詮は、人間達がつけた傷。我の力をもってすればこのようなこと造作もない」

 一拍置くと、悪魔は残された拳を握りしめ歯をかみしめる。

「だが腕はこうはいかん……この屈辱、しかと返すから心得ておけ」
 そんな殺伐とした悪魔とは対照的に、ルクスはひどく落ち着いていた。

 先ほどの落下の際になくなった水球を、再び手のひらに作り出す。その水は、自ら出したものではなく腰に下げた革袋の中のものだ。
 なれたように生み出されるのは、すさまじい圧力からもれでた一筋の水。その水は、細い線となり、触れたものを切り裂く刃となる。

 ルクスはそれを横薙ぎに振るう。力みなく。何かをなぞるように。


 悪魔は、それを見ながら薄ら笑いを浮かべた。

 なぜなら、前回は同じ攻撃を受けても表面にしか傷を負わなかったからだ。もちろん、それだけでも驚嘆すべきことなのだが、悪魔にとってはおそるるに足らなかった。しかし、悪魔は失念する。腕を切り落とした攻撃の意味を。
 前とは違う、その脅威に。

 
 ルクスが放った一撃は、甘んじて受け止める悪魔の胸元を横一線に切り裂いた。その傷は表面だけではない。血が噴き出す奥深くまで到達していた。悪魔は自らに起こった出来事を理解できない。その隙を見逃さないルクスは、今度は真上から水の刃を振り下ろした。

「くっ――」

 悪魔は咄嗟に身をよじり、頭部の損傷はさけた。だが、肩から腹部にかけて、肉がぱっかりと割れる。

「ぐわあ!」

 慌てて距離をとる悪魔だが、ルクスは地面をけり、距離を詰めた。

「この一撃も、これも! 皆の想いだ! 決意だ!」

 駆けながら、切り上げ、振り下ろし。
 その刃は、悪魔の腕や足を傷つけていく。すでに、ルクスの刃が脅威だと悪魔は知ったため、その回避に全力を払っていた。だが、ルクスが負わせたダメージに、身体の動きも鈍っている。

「なぜだ! なぜ、我の身体こうも容易く――」
「言っただろ? 俺だけの力じゃない――皆の力だよ」

 ルクスの一振り一振りが確かに悪魔を傷つけていく。その事実に、悪魔も、はたからみている勇者達も、驚嘆するしか出来なかった。





 なぜルクスがこんなにも圧倒できるのか。
 それは、ルクスがたどり着いた可能性。それを実現できたからに他ならない。

 その可能性とは――極大魔石だ。

 悪魔への封印をより強固にできる多大な魔力。大規模な戦争をも左右する膨大な力。カレラの命をすくわんとしたそれの力をもってすれば、悪魔を打倒できるかもしれないと考えた。
 それをマルクスとスヴァトブルグに提案したルクスだったが、その案はすぐに却下される。なぜなら。

 極大魔石など簡単に手に入るものではないからだ。

 ルクス達が手に入れたのも、元々はカレラが強力な魔物を呼び寄せそれを討伐することができたからだ。
 でなければ、普通に市場に出回るものではない。
 しかし、ルクスは極大魔石を見つけることを目論んではいなかった。それを、錬成、することを考えていたのだ。

 以前、アルミンから言われたあの言葉。
 当初は、ルクス達も考えていた小さい魔石を集めて極大魔石へと錬成する方法。その方法に行き着くことはなかったが、二人ならもしかしたら、という期待をもってルクスは話をしていた。
 だが、その結果も否。
 二人も噂は聞いたことがあったが、実際の手法など知る由もない。

「そもそも、違う属性の石をくっつけるなんてできないだろ。魔法だって、二つの属性をくっつけると反発しあうっていうのに」
「そうですね。もし、錬成する方法があったとしても、同じ属性のものをあつめなければなりません。ましてや、単に同じ属性の魔石というだけでなく、実際はもっとシビアなものかもしれませんが」
「どういうことですか?」
「例えば、水属性の魔石だとしても、その魔石がもつ魔力量や質、石の種類など、さまざまなことが要因となる場合があるということです。詳しくはありませんが、錬成というものは、それほどまでに細かいのだと以前に聞いたことがあります」

 ルクスは立ち直った瞬間にくじけそうになっていた。

 頼みの綱の極大魔石。だが、その魔石が用意できないとなると、悪魔に対抗する手段が無くなってしまう。いまのままでは、ルクスは悪魔に勝つことなどできない。ルクスは必死で思考を巡らせた。
 
 ――すると真理の中に、ある一つの可能性があることを発見する。

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