ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

文字の大きさ
1 / 54
第一章 スキルと従者と本の世界

プロローグ

しおりを挟む
 彼はいつも一人だった。

 誰からも馬鹿にされ、誰からも必要とされない。

 それが、エンドという少年だった。

 きっと親にもいらないと思われ捨てられたのだろう。

 物心がついた時には孤児院で暮らしており、日々、生きるために働いている。

 今日も、エンドは薪拾いを一生懸命やっていたが、不意に後ろから衝撃が走る。



「お前は本当にダメなやつだよな! そんなゴミスキル持ってたって、何の役にもたたねぇよ!」



 そう彼を罵るのは、同じ孤児院で暮らしているテオドルという少年だ。

 いつもエンドを見下すと、無慈悲に、無意味に手をあげては足蹴にした。

 今日も、エンドを蹴りつけながら、彼の拾ってきた薪をかき集めている。

 他の孤児院の人間達はそれを見ても何も言わない。

 すでに日常と化しているその光景は、当たり前のものとしてそこにあった。



 だが、エンドはどこか納得もしていたのだ。

 自分の持っているスキル。それがゴミだということは、自分でもわかっていたから。

 自分が拾ってきた薪だって、こうして取り上げられるのは当然のことなのだ。



「捨てられた俺らにさえいらないって言われてるお前って本当に価値なんてねぇよ! ははっ!」



 本当にそうなのだろう。

 エンドは、体中を殴られ、蹴られて全身に痛みを感じながら、自分の運命を呪っていた。

 痛みを避けるように体を丸めていると、気が済んだのかエンドが集めた薪をもって皆は孤児院に帰っていった。



 スキルとは、すべての人間に与えられた希望。

 生きる糧。

 運命を決める歯車。

 人生を指し示す、生まれながら持つ指標なのだ。



 そのスキルが何の役にも立たないゴミスキルだなんて。

 救いがないとはこのことなのだろう。

 来年には十五歳という成人になってしまう。そうしたら、もう孤児院にはいられない。

 この先の人生、どうなるだろうか。

 そんな想いを抱きながら、重い体を引きずりながら孤児院へと帰っていく。



「……なん、だろう」



 いつも通っている山道だが、孤児院に近づくにつれ違和感を感じていた。

 パチパチという音と、焦げ臭さ。

 それと、じんわりと伝わってくる熱。

 彼は、胸騒ぎがして走って帰っていった。すると、そんなエンドの前に、さらなる絶望が鎮座していた。



 煌々と燃え盛る炎。

 皮膚が焼けるように熱いのは気のせいなんかじゃない。

 エンドの前で燃えているのは孤児院だ。

 近くの森の中でボロボロにされて、そして帰ってきたら孤児院が燃えていた。



 自分の住んでいる場所。

 生まれてからの全てだ。生きる基盤である孤児院だ。

 それが燃えている現実を目の前にして、エンドは立っていることすらできなくなった。



「どうして……そんな」



 自然と涙が流れた。

 その涙は悲しみだけではない。なにがしかの安堵も含んでいた涙だったように思えた。



 エンドは、ぽつんとそびえたつ孤児院が燃えおちていくのをただじっと見ていた。

 自らの無力を感じながら。

 孤独であることを嘆きながら。

 自分にこんな運命を与えた神に怒りを覚えながら。

 そして立ち上がる。

 立ち上る炎の先の、空を見上げて彼は叫んだ。



「どうして!! どうして僕だけがこんな仕打ちを受けなきゃならないんだ!」



 彼は「ブックメイカー」と叫び、手元に一冊の本を生み出した。

 それは、美しい布で装飾されたものだ。



「どうしてこんなスキルなんだよ! 本を生み出すスキルとか! そんなもの聞いたことないんだよ!」



 彼はそれを地面に叩きつけると、一歩躍り出て再び叫ぶ。



「何かが書いてあるわけじゃない! 売りさばこうにも離れたら消える! こんなもの、いったい何の役に立つんだよ! 教えろよ! 教えてくれよ!」



 エンドが叫んでも、空は静かなままであり、孤児院は音をたてながら崩れていく。

 変わらない現実を目の前にして、彼は膝から崩れ落ちた。



「ふざ……けんなよ。こんなスキルじゃない……もっと役に立つ力が欲しかった……」



 再び湧き出る涙は地面に染みを作るも、すぐに熱気で蒸発していく。



「たくさんの仲間なんていらない……たった一人、信頼できる友達が欲しかった……」



 彼は、やり場のない想いをぶつけるように、地面を両手で殴りつける。



「こんな最低の人生じゃない……人並みの……普通の人生が送りたかった、そんなことも願っちゃいけないのかよぉ! くそぉ!! くそおおおおぉぉぉぉぉ!!」



 彼は叫ぶ。

 世界にすべてをぶつけるように、彼の中のすべてを吐き出すかのよう、叫んだ。

 彼の慟哭は空を貫く。



 孤児院が燃え落ちていくとともに、その叫びも鳴りを潜めていく。

 泣き疲れて眠ってしまった彼の横では、投げ捨てた本が――



 ぼんやりと光り輝いていた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...