ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第二章 冒険者の門出、差別、救済

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 私は、依頼掲示板に向かっていく二人の冒険者を見ながら、うるさく鳴り響く心臓の音をかき消すように胸元を必死で抑えていた。

 なぜかって?

 そんなの決まってる。

 それは、常識では理解できない存在が、目の前に現れたからだった。





 私はオルカ・ブラヴィニー。

 冒険者ギルドの受付嬢をしてもう数年になるだろうか。

 それなりに数多くの冒険者をこの目で見てきたし、見送ってもいる。

 だから、自分ではそれなりに人をみる目があるなぁと思っていたのだが、今日入ってきた男の子を見た瞬間、妙な違和感を感じだのだ。



 その男の子は、身なりはとても貧相。体格も細い。顔立ちはとてもきれいで、およそ、冒険者なんて似合う風体ではなかった。

 となりにいる女性も色々と不思議だ。

 まるで貴族の使用人が着るようなメイド服をその身にまとって、男の子を守るように周囲に鋭い視線を送る。

 これで男の子が貴族でその従者などであれば話はわかるのだが、全くそのようには見えない。

 なんだ、この二人は。



「お願いします!」



 そう言って、男の子が受け付けにやってくる。

 とりあえず、ぱっと見からして何かあるだろうなと思う。いや、何かあるに違いない。

 もしかしたら、将来の有望株かもしれないし。

 それなら、印象よく思ってもらったほうが後々いろいろと都合がいいかも?



 そんな打算的な気持ちで応対をした。



 まぁ、その……なんだろう。

 話す限り、普通の男の子だよね。

 礼儀正しいし、はにかむ笑顔が可愛い。

 これで、強かったりしたら個人的にぜひお近づきになりたいなぁ。

 なんて思ってしまった私。

 だから、しょうがないよね?

 一緒にいる美人な女の人に態度が悪くなっちゃったのは。

 うん、しょうがないと思わないとやってられない。



「名前はエンドで、歳は十四です」

「まだ成人してないんですね! それなのに、ちゃんと将来を考えているなんて立派です」

「え? あ、ありがとうございます」

「けど、無理はしないこと。それで、何人もの新人さんが帰ってこなくなってますから」

「……はい」



 この体格で十四歳。

 思ったよりも大人だ。

 見た目からして、もっと小さいと思ったんだけど。

 あまり、いい暮らしをしてこなかったのかな?

 っと。

 ちょっぴり怖い話をしたからか、顔が険しい。

 そんな顔しなくても大丈夫よ? 最初は簡単な依頼しかないんだから。

 私はそう思ってそっと手を握る。

 すると、さっきまでとは違う様子で、顔を赤くして強張らせる。



「大丈夫ですよ。大事なことはさっきも言ったけど、無理をしないこと。そうすれば、だんだん高難度の依頼も達成できるようになりますから」

「は、はい! ありがとうございます」

「――それで。登録はすすんでるんですか? 私も登録したいのですが」



 って、今、エンド君といい感じに距離を縮めてたのに。

 まあいい。

 たしかに、いつ次のお客様が来るかわからない。

 急いでステータスを調べて登録をしよう。

 お話はいつだってできるしね。



「そこの使用人は放っておいて、さぁ、最後の登録ですよ。この板に血を垂らしてください」

「は、はい」



 私はそういって血を垂らしてもらった。

 この検査板に血を垂らしてもらうと、なんとその人のステータスがわかるのだ。

 ロストテクノロジーと呼ばれるこの種のものは、この世界のいろいろなところで使われている。



 さてさて。

 エンド君のステータスはっと――。



 その数字を見た瞬間、私は思わず声を上げていた。

 その数字が、とても歪で見慣れないものだったから。



『エンド

 14歳

 レベル:3

 スキル:ブックメイカー レベル2

 力  :1024

 素早さ:1018

 知力 ;1034

 魔力 :1008

 幸運 :102』



 まずレベル。

 これは普通だ。

 成人前の男の子がこれくらいのレベルなのは至極当然なこと。生活をしていて自然にここまで上がったんだろう。

 おかしいのは各種のステータスだ。

 幸運を除いて、いずれも四桁を超えている。

 一つのパラメーターが百を超えているだけですごいのに、この子は全部が千を超えているだなんて……。



「あ、いえ。なんでもありません。登録はできますのでご安心ください」

「あ、ありがとうございます」

「そっちの使用人も、はいどうぞ」

「いちいちむかつく人ですね」



 声をあげてしまったことをごまかしつつ、私はとりあえずこの場を終えようと声をかけた。



「では、依頼を受けた時はぜひ私の受付まで来てくださいね! 待ってます!」

「はい! 頑張りますのでよろしくお願いします!」



 やっぱり期待の新人さんだ。

 そんなことを思いながら見送る。でもなんか妙だよなぁ。少しばかりおかしいというかなんとういうか――。



 その違和感に気づいた瞬間、私の心臓は跳ねあがった。



 たしかに、ほぼすべてが四桁を超えるステータスはすごい。

 普通の冒険者じゃまず敵わない水準だ。

 きっと、今すぐエンド君は冒険者として通用する。

 しかし、能力値が平均的に高くとも、エンド君より強い冒険者は探せばいるかもしれない。

 一番のポイントはレベルとスキルレベルだ。

 レベルはさっき言った通り、普通。

 スキルレベルも低めとは言え、まあおかしくはない。

 おかしくはないが、おかしいのはこんなレベルであのパラメーターというのが明らかに異質なのだ。



 成長の途中。

 むしろ、レベルを上げていき強くなっていくスタート地点に立っているエンド君。

 だが、既にステータスだけは熟練冒険者のそれ並み。

 ならば。

 今後、レベルを上げてスキルレベルも上がって。



 その時のエンド君は、どんな冒険者になっているんだろう。



 それを想像すると身震いがする。

 おそらく、尋常では考えられない傑物が生まれることだろう。



 私は、未来の可能性を感じさせるエンド君を見つめながら、とりあえずギルドマスターに報告をしておこうと心の中のメモにそっと書いておいた。 
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