ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第二章 冒険者の門出、差別、救済

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「モグライラズの花ってどんな色なのかな?」

「なんでも、白く美しい花らしいです。ですが、とても小さい花なので目立つことはないとか」

「とにかく穴ぼこだらけの場所があったら近くを探せってこと?」

「それ以外、現状方法はなさそうです」



 僕らは今、森に来ていた。

 その森の名前は帰らずの森。

 その奥に入ると、帰ってこれなくなることからそう言われているらしい。まあ、子供に向かって話す躾用の作り話だとされているが、あながち間違いでもないらしい。



 奥に行けば行くほど魔物は増え、強くなっていく。

 その理由が、森の中央にある魔素だまりだ。

 自然界に存在する魔素という粒子。それが集まると、生物は力を増していくとされている。

 人間は、それらを魔力として魔法を使えるらしいけど、今の僕にはできない。

 一度は使ってみたいけど、なかなか難しいみたいだ。



 僕はそんなことを考えながら、ガーフさんの剣を抜いて横なぎに振りぬく。



「さすがはエンド様。近づいてくることに気づいていたんですね」

「レイカもわかってたでしょ? こいつが来てるの」



 僕が剣を振りぬいたその時。僕に襲い掛かってくる魔物がいたのだ。

 その存在に気づいていた僕は、向かってくる瞬間を察知して剣を振りぬく。ほとんど抵抗もなく魔物は真っ二つになって地面へと落ちた。



「それにしても、確かに魔物の数が多いね。よっと!」

「そうですね。今までとはやはり依頼の質が違うようです。――邪魔よ」



 軽口を叩きながら、僕とレイカは魔物を倒しながら奥へと進んでいった。

 この前倒したマッドボアーとそう変わらない強さかな?



 僕らの旅路は非常に順調だった。

 途中、野営もはさみながら僕らは森の奥を目指す。

 二日目の昼間。ようやく、地面にそれらしき後を見つけた。



「レイカ。この穴」

「ええ。あれではないですか?」

「小さい白い花……。うねるような根。たしかに、これだ。モグライラズ」



 簡単に見つかったその花を丁寧に箱に入れると、僕らは帰途につく。そして、サンタモスカの街に向かって歩き出した。









 そして、二日目の夕暮れ。

 僕らは二度目の野営の準備をしていた。



「エンド様。すこし、薪を拾ってきていただけますか?」

「うん。もし見つかるようだったら木の実とかも探してみるよ」

「はい。おねがいします」



 僕は孤児院出身だ。

 あの時も、薪を拾ったり、食べられるものを近くの小さい森に探しに行ったりしていた。

 当然、物を探す目も肥える。

 最初はレイカが従者だから何でもやるって聞かなかったんだけど、僕のほうが探すのがうまいのを知ってからは任せてくれるようになった。

 すこしは頼れるところがあるってわかってもらいたいからね。



 今日も、いくつかの木の実とウサギを見つけた。

 昔と違って、小さな獣くらいなら簡単に捕まえることができるようになったのは、ステータスが上がってよかったことの一つかもしれない。

 これだけあれば、今日もおいしいご飯が食べられるだろう。

 そんな期待を抱いた僕は、ふと、近くの茂みから音が聞こえる。何かが、いる。



「……魔物か?」



 すぐに剣を抜いた。

 だが、襲い掛かってくる様子はない。

 もし魔物だったら、問答無用に襲い掛かってくるはずなのに。



 僕は不思議に思って、茂みへと近づいた。



 すると、茂みの後ろに人の足が見える。

 誰かが倒れてるんだ!



「だ、大丈夫!?」



 茂みをかき分けて慌てて駆け寄ると、そこには小柄な人が倒れていた。

 うつぶせになっていたので、声をかけると同時に仰向けにさせてみた。

 顔を見ると、僕よりもすこし下くらいだろうか。可愛らしい顔つきをした少女だ。



 全身を見ると傷だらけだ。

 まだ傷は新しいのだろう。フード付きの外套の所々に血がにじんでいる。

 息は荒く、気を失っているみたいだ。



「ちょっと! 大丈夫? ねぇ、君!」

「う、うぅん」



 体を軽くゆすると声を出しながらそっと目を開ける。

 くりっとしたアーモンド形の瞳と目がった。その刹那――。



「があぁぁっ!!」



 少女は突然起き上がり、僕に襲い掛かってきた。

 が、僕もそれなりに冒険者として依頼を重ねてきた。不足の事態に対応できるくらいの気構えはある。

 咄嗟によけつつ、剣の切っ先を彼女に向けた。



「敵意はない! 落ち着いてくれ!」

「信用できるものか! ルルルはただじゃ殺されない!!」



 そう叫ぶものの、ルルルと名乗った少女はふらつき、すぐに崩れ落ちてしまう。

 息は荒く、あせも凄い。

 そして、倒れた拍子にフードが外れた。すると、少女の頭部についているあるものに目がいく。



「獣の……狐の耳?」



 普段街でみることが少ない獣人族の証。

 僕は一瞬それにくぎ付けになったが、すぐさま本来の目的を思い出す。



「レイカに見せないと。あ、でも、薪とウサギと全部一緒に持てない! どうしよう!」



 そんなしょうもないことを考えながら、僕はレイカの元に急いだ。 
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