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第二章 冒険者の門出、差別、救済
十六
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「大したおもてなしもできませんが、ぜひ食べてってください!!」
そういって料理をふるまってくれたのは、狐人族の村長だ。
オークキングを討伐したその日。
僕は、生き残りと、遺体の残りを集めて村へと返った。
生き残りの中にはルルルの母親もいて、彼女はとても嬉しそうだった。
僕も間に合ってほっとした。
だが、男達はすべて殺されていた。この村で殺されたものも、追いかけていったものも全てだ。
あの集落であった残虐な行いは、なんのためだったのか。
そんなこと知らないし知りたくもない。ただ、死者を冒とくした行為ということはわかった。
しかし、この村の人たちはそれでも膝を曲げずに気丈にふるまっている。
生き残っていた女性には何があったのか聞かなかった。
それは聞かなくていいような気がしたのだ。
「レイカ」
「はい、エンド様」
「ここにいる人たちは強いね。本当に」
「私も……そう思います」
僕らは、生きていくという意志とその前向きさに圧倒された。
生き残ったことを祝うために宴が行われようとしていることにも驚いたけど、弔いの意味もあると知って納得だ。
それが、今目の前で催されているものだけど。
出された料理はお世辞にも豪華とは言えない。
けれど、勇敢に戦った男達との別れの儀式だと思えば、それは十分なものだ。
どこかしんみりと出された料理を食べていたら、後ろから何かが飛びついてくる。
「エンド! 食べてるか!? 楽しいか!?」
ルルルはそのまま僕を背中から抱きしめると、無邪気な笑顔を向けてくれた。
「うん、おいしいよ、ありがとね」
「でも! これだけじゃ恩を返せない! けど……あんまりあげられるものがない」
「たくさんもらってるから大丈夫だよ。ね、レイカ?」
「はい。ルルルさんも、気にせずたくさん食べてくださいね」
「うん! ……ねぇ、エンド。レイカ」
はしゃいでいた矢先、急に言葉が小さくなる。
ふと視線を向けると、そこには涙を向けたルルルがいた。
「お母さんを助けてくれてありがと――ありがとね、エンド」
「うん。どういたしまして」
僕の方でひとしきり涙を流したルルルは、すぐに持ち前の明るさを取り戻した。
乱暴に涙をぬぐうと、ぱっと飛びのいてこちらに笑顔を向ける。
「いいこと思いついた!」
「いいこと?」
「うん! エンド! 私のことももらってくれる?」
「ぶっふ――っ!!!」
唐突に落とされた爆弾に、僕は思わず吹き出していた。
レイカもあまりの軽さに目を見開いているようだ。
「げほっ、けほ……もらってって、どういう意味!?」
「そのままの意味だよ! もしエンドが良ければ、ルルル、エンドのお嫁さんになってあげる! そしたら、ちゃんと恩返しできるから!」
「……お嫁さん?」
いやいやいや。
どうしてそれを聞いてレイカが冷気を出すのかな?
正直、いつもの笑ってない笑顔、とても怖いんだけど。
その怖さというか圧力が、ルルルが子供っぽく僕に顔をぐりぐりやるたびに増していくんだけど、気のせいかな!?
「うん! あ! レイカもお嫁さんになる? レイカなら一緒にやってもいいよ!」
「え? あの、私が? エンド様のお嫁さん? そんな、私は使用人であって――、でも、そんな、しかし――」
ルルルが言った言葉に、レイカの剣呑さは雲散した。
うん、ナイスプレーだよ、ルルル。
よくわからないけど、よかったよ! これ以上あの冷気を浴びてたら、僕、きっと凍ってたと思うんだよね。
「それはいいことですね。ねぇ、エンド様?」
僕とレイカとルルルが話しているところに飛び込んできたのは、ルルルのお母さんだ。
ルルルのお母さんは温和でとてもやさしそうな人だ。
今も、笑顔でルルルの話す子供らしい話に頷いている。
「カターニャさん。まあ、これも小さい子のいうことですから。あまり真に受けず」
「あら? 狐人賊では十歳で結婚も珍しくないですよ? ですから、この子の言葉はちゃーんと真に受けますから」
ルルルの母親であるカターニャさん。
どこか強引さを感じる言葉に、僕は思わず顔を引きつらせた。
うん、これってマジなやつかも。
なんとか話をはぐらかし、徐々に夜も更けてくる。
そろそろお開きかな、と思っていると、いつのまにか、僕の周りには弧人族の人が集まっていた。
その表情は先ほどの陽気さとは裏腹に、真剣な表情だった。
その独特の雰囲気に、ごくりと唾を飲み込むと、目の前から村長さんがやってきた。
そして、頭を下げて声をあげた。
「エンド様。改めまして、この度は我々、狐人族を助けてください本当にありがとうございました。この恩は到底返せるものではない」
「いいえ、ルルルのお陰です。彼女が僕のところにやってこなかったら僕は何もできませんでしたから」
「その助けに応じられるのも力でしょう……そんな恩人であるエンド様にどうしたら報いることができるのか。皆で話し合ったのですが、ようやく結論がでました」
「報いるだなんてそんな――」
僕はルルルの頼みを聞きたいと思っただけだ。
だから、こうやって無事を喜び失った人たちに想いをはせるだけでいいんじゃないかと思ってる。
だからこそ、断ろうとしたのだけれど――。
村長さんがおもむろに手を上げると、集まっていた村人達、全員が跪き、そして頭を下げた。
「我々狐人族は、これからの未来永劫、エンド様に仕えていきたいと思っております。すべてを奪われかけ、そしてそれを助けてくれたエンド様には感謝が絶えませぬ。ぜひ、我々をエンド様の手足とし、エンド様の望みをかなえるご助力ができればと思っております」
村長さんはそういうと、顔をあげた。
そして、その年齢からは考えられないくらいの力強い視線で、僕を貫いている。
「我々狐人族はエンド様と共に」
「「「「「エンド様と共に!!!」」」」」」
僕の名前の大合唱にうろたえ横に視線を向けると、そこにはレイカが恍惚とした表情で微笑んでいた。
うん、これってきっと僕には味方がいないやつだな、と思いながら僕は引きつった笑いを浮かべることしかできなかった。
そういって料理をふるまってくれたのは、狐人族の村長だ。
オークキングを討伐したその日。
僕は、生き残りと、遺体の残りを集めて村へと返った。
生き残りの中にはルルルの母親もいて、彼女はとても嬉しそうだった。
僕も間に合ってほっとした。
だが、男達はすべて殺されていた。この村で殺されたものも、追いかけていったものも全てだ。
あの集落であった残虐な行いは、なんのためだったのか。
そんなこと知らないし知りたくもない。ただ、死者を冒とくした行為ということはわかった。
しかし、この村の人たちはそれでも膝を曲げずに気丈にふるまっている。
生き残っていた女性には何があったのか聞かなかった。
それは聞かなくていいような気がしたのだ。
「レイカ」
「はい、エンド様」
「ここにいる人たちは強いね。本当に」
「私も……そう思います」
僕らは、生きていくという意志とその前向きさに圧倒された。
生き残ったことを祝うために宴が行われようとしていることにも驚いたけど、弔いの意味もあると知って納得だ。
それが、今目の前で催されているものだけど。
出された料理はお世辞にも豪華とは言えない。
けれど、勇敢に戦った男達との別れの儀式だと思えば、それは十分なものだ。
どこかしんみりと出された料理を食べていたら、後ろから何かが飛びついてくる。
「エンド! 食べてるか!? 楽しいか!?」
ルルルはそのまま僕を背中から抱きしめると、無邪気な笑顔を向けてくれた。
「うん、おいしいよ、ありがとね」
「でも! これだけじゃ恩を返せない! けど……あんまりあげられるものがない」
「たくさんもらってるから大丈夫だよ。ね、レイカ?」
「はい。ルルルさんも、気にせずたくさん食べてくださいね」
「うん! ……ねぇ、エンド。レイカ」
はしゃいでいた矢先、急に言葉が小さくなる。
ふと視線を向けると、そこには涙を向けたルルルがいた。
「お母さんを助けてくれてありがと――ありがとね、エンド」
「うん。どういたしまして」
僕の方でひとしきり涙を流したルルルは、すぐに持ち前の明るさを取り戻した。
乱暴に涙をぬぐうと、ぱっと飛びのいてこちらに笑顔を向ける。
「いいこと思いついた!」
「いいこと?」
「うん! エンド! 私のことももらってくれる?」
「ぶっふ――っ!!!」
唐突に落とされた爆弾に、僕は思わず吹き出していた。
レイカもあまりの軽さに目を見開いているようだ。
「げほっ、けほ……もらってって、どういう意味!?」
「そのままの意味だよ! もしエンドが良ければ、ルルル、エンドのお嫁さんになってあげる! そしたら、ちゃんと恩返しできるから!」
「……お嫁さん?」
いやいやいや。
どうしてそれを聞いてレイカが冷気を出すのかな?
正直、いつもの笑ってない笑顔、とても怖いんだけど。
その怖さというか圧力が、ルルルが子供っぽく僕に顔をぐりぐりやるたびに増していくんだけど、気のせいかな!?
「うん! あ! レイカもお嫁さんになる? レイカなら一緒にやってもいいよ!」
「え? あの、私が? エンド様のお嫁さん? そんな、私は使用人であって――、でも、そんな、しかし――」
ルルルが言った言葉に、レイカの剣呑さは雲散した。
うん、ナイスプレーだよ、ルルル。
よくわからないけど、よかったよ! これ以上あの冷気を浴びてたら、僕、きっと凍ってたと思うんだよね。
「それはいいことですね。ねぇ、エンド様?」
僕とレイカとルルルが話しているところに飛び込んできたのは、ルルルのお母さんだ。
ルルルのお母さんは温和でとてもやさしそうな人だ。
今も、笑顔でルルルの話す子供らしい話に頷いている。
「カターニャさん。まあ、これも小さい子のいうことですから。あまり真に受けず」
「あら? 狐人賊では十歳で結婚も珍しくないですよ? ですから、この子の言葉はちゃーんと真に受けますから」
ルルルの母親であるカターニャさん。
どこか強引さを感じる言葉に、僕は思わず顔を引きつらせた。
うん、これってマジなやつかも。
なんとか話をはぐらかし、徐々に夜も更けてくる。
そろそろお開きかな、と思っていると、いつのまにか、僕の周りには弧人族の人が集まっていた。
その表情は先ほどの陽気さとは裏腹に、真剣な表情だった。
その独特の雰囲気に、ごくりと唾を飲み込むと、目の前から村長さんがやってきた。
そして、頭を下げて声をあげた。
「エンド様。改めまして、この度は我々、狐人族を助けてください本当にありがとうございました。この恩は到底返せるものではない」
「いいえ、ルルルのお陰です。彼女が僕のところにやってこなかったら僕は何もできませんでしたから」
「その助けに応じられるのも力でしょう……そんな恩人であるエンド様にどうしたら報いることができるのか。皆で話し合ったのですが、ようやく結論がでました」
「報いるだなんてそんな――」
僕はルルルの頼みを聞きたいと思っただけだ。
だから、こうやって無事を喜び失った人たちに想いをはせるだけでいいんじゃないかと思ってる。
だからこそ、断ろうとしたのだけれど――。
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