ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第二章 冒険者の門出、差別、救済

十七

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「でも、正直な話。僕を仕えるっていっても、家もなければ住むところも決まってないんだよ? そんなの無理だと思うんだけど」

「いいのです! われらは獣人。建物などなくとも生きていけます!」

「人間の街にきたらひどいことになるんでしょ!?」

「そのような困難、われらはきっと乗り越えて見せます!」



 何を言ってもくじけない弧人族の人たち。

 僕はたまらずため息を吐いてしまう。



 そんな僕につかみかかってくるのは小さな少女、ルルルだ。

 彼女は、僕に抱き着きながら頬をぷくっと膨らませた。



「エンドはルルルと一緒にいるの、嫌なのか?」

「え? いや、そういうことじゃないけど――」

「だったらいーじゃん! 一緒にいようよ!」

「ふふふ、大丈夫よ、ルルル。きっとエンド様は受け止めてくださるから」



 そんな無責任なことをいうカターニャさんに批判を込めた視線を向けるも、ほんわかした笑顔で返されてしまう。

 うん、これは無理だ。

 僕にはどうしようもない。



「ねぇ、レイカ。どうしたらいいの?」

「いいんじゃないですか? エンド様は王になる方。従者も私だけじゃ心もとないですから」

「そんな、レイカまで――」

「そんな顔しないでください。それに、エンド様の考えてることって、大した問題じゃないと思いますよ?」

「え? それってどういう?」

「お忘れですか? 私がどこから生まれたのか」

「あっ――!!」



 すっかり忘れていた。

 今まで全然なじみのなかったスキルだ。

 正直、レイカと向上したステータスに気を取られていたけど、僕には本がある。本の世界が。



 レイカは僕に頭を下げ続ける村長さんに近づくと、普段通りというかいつもよりもやや芝居がかった口調で話しはじめた。



「狐人族の長よ。私の主、エンド様は外敵に襲われることのない、人間に迫害されることのない、飢えることのない地をあなた方に与えることができます。もし、あなた方が言う仕えるということが、偽りなく、生半可な覚悟ではないのなら、エンド様はその地に狐人族を迎え入れることもやぶさかではないとおっしゃっています。いかがいたしますか?」

「そんなもの! 決まっている! 我ら弧人族は滅びる寸前だったのじゃ! 種が絶える寸前まで追い詰められそれを救ってくれたエンド様を裏切ることなありはしない! エンド様! ぜひ、ぜひ、我ら弧人族を配下にしてくだされ」

「ルルルもエンドと一緒にいるもん!」



 村長さん達はそういって再び頭を下げる。

 ルルルは仁王立ちして、こちらを睨みつけている。

 気まずいことこの上ない。

 それを見届けたレイカは、いたずらが成功したかのような可憐な笑みを浮かべて僕を見た。



「こういっていますけど……ここまで必死に頼んでいる狐人族を見捨てるんですか? 戦う者達がいない彼らをこのまま村に置き去りにするのは、見殺しにすることと同じだと思いますけど」



 卑怯だ。

 なんとも卑怯だと思った。

 こんなの、受けるしかないじゃないか。

 狐人族を助けるのは決めていたことだ。そして、彼らを助けるためのものは僕は持っている。



 なら。

 助ける以外に選択肢なんてない。

 彼らにも僕と同じ――救いがあってもいいと思う。



 でも、なんだか釈然としない。

 なんだろう。このしてやられた感は。

 僕は、そんなことを思いながら肩を竦めた。



「たしかに問題はないよね。うん……なら村長さん。一度僕の本の世界に来てみてください。決めるのはそれからでいいですから」

「はい! ありがとうございます! ありがとうございます!!!」



 まあ。

 僕なんかが誰かを助けることができるんだ。

 そう思うと、むしろこうなったのはよかったのかもしれないな。









「ここが……エンド様の本の世界?」

「うん。僕とレイカが探索したら、あんまり強い獣はいなかったかな? 植物や果物も豊富にあるし、なにより人間はいないから。安心していいですよ」

「まさか、こんな場所があるなんて!」

「さすがはエンド様だ!」



 狐人族はすぐさま僕の本の世界に移り住むことを決めた。

 何か不測の事態があるかとおもったけど、無事、みんなを迎え入れることができた。

 あんなにつらいことがあったにも関わらず、こうやって笑っているみんなをみると、僕のスキルがあってよかったって心底思う。



「僕のスキルも役に立つことがあるんだね」

「もちろんです。エンド様はこの世界の王なのですから」



 レイカの言う王。

 それがどんなものかは僕にはわからない。



 けれど、僕はこの笑顔を守りたいと思ったんだ。

 すこしだけ、背筋が伸びるような気がしていた。
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