ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第二章 冒険者の門出、差別、救済

十八

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 私はレイカ。

 つい先日生まれた私――否。

 この世界に生まれた私は、エンド様の従者として生きている。



 思えば、不思議な気持ちだ。

 初めて会ったエンド様のことを。

 本当にただの孤児だった彼のことを。

 今の私は、心の底から信頼しているのだから。









 ――私には、前世の記憶がある。

 その記憶はすぐにでも消し去りたいくらい嫌なものだ。

 絶望しかなかった人生。

 それを終わらせたのは、他ならぬ自分自身だった。



 気づくと、真っ白な空間にいた。

 そこにぼんやりと浮かび上がる人影が、私にそっと話しかけてくる。



「それで終わりでいいのかい?」



 いいに決まってる。

 なぜって、あんなにもつらい思いを感じ続けなくていいから。



「まだ始まってもいないのに?」



 いいに決まってる。

 なぜって、はじまってもどうせ死にたくなるのは変わらないから。



「ならば、もしおまえが望む人生があるのなら?」



 ないに決まってる。

 もしあっても、私の人生は終わったのだから。もういらない。



 それに、私だって私の望む人生なんてわからない。

 どうして欲しかったのかなんてわからない。

 なら、私の望む人生ってなに?

 私もわからないのに、なんであなたが知ってるの?



「お前に役目を与えよう――」



 役目ってなに!?

 一体何をさせようって――。



 そんな疑問に応えるように、突然、私の頭の中にすさまじい情報が詰め込まれた。

 全身に響くような頭の痛み。



 その痛みに耐えながらわかったのは、私はこれから転生すること。

 それは人としてではなく、誰かの所有物として。

 その世界の常識。

 知識。

 私を生み出す彼のこと。



 あらゆることが一瞬で詰め込まれ、自分の立場を理解する。

 目の前に現れたのは、なんの変哲もない、ただの男の子だった。











 最初は怯え。困惑。

 簡単に私のことを信じる様子は、危うさを感じた。

 けど、些細なことで驚いたり、喜んだり。

 真剣な表情で想いを語ったり。

 その一挙手一投足が新鮮だった。塞ぎ込み、すべてを拒絶していた私には、新鮮な感情だった。



 それに。

 彼は、いつでも私を守ろうとしてくれた。

 世界が広がる瞬間も。

 暴漢に襲われそうになった時も。

 彼は、その小さい体で、私を守ろうとしてくれたのだ。



 本当は怖かったのに。

 こんな私を守ってくれた。



「レイカがいてくれてよかったよ」



 そんな言葉をかけてくれたこともあった。

 失いたくないと、真剣な表情で語ってくれた。

 ましてや、ただの所有物である自分の防具のことも気にしてくれて。

 私なんかが褒めたって照れてくれて。



 何の価値もない私を必要としてくれた。

 何の価値もない私に価値をくれた。



 目の前でどんどん強くなっていくエンド様をみて、私はその信頼に応えたいって思ったんだ。

 信頼できる人が欲しいって言ったエンド様の想いに私は助けられたから。







「僕は、ルルルを助けたい」



 エンド様はそう言うってわかってた。

 でも、私は怖かった。

 エンド様がいなくなれば誰も私を必要としてくれない。

 エンド様がいなくなれば私には価値なんてなくなってしまう。



 もちろん、エンド様は強くなった。

 信頼もしている。



 けれど、私は本の世界の主だからわかるのだ。今のエンド様の力が。どれくらいなのかって。



『エンド

 14歳

 レベル:22

 スキル:ブックメイカー レベル2

 力  :2574(1000)

 素早さ:2552(1000)

 知力 ;2612(1000)

 魔力 :2547(1000)

 幸運 :257(100)』



 これが今のエンド様のステータスだ。

 これほど平均的なステータスも珍しいが、Aクラスの冒険者にでもなればもっと高いステータスがあってもおかしくはないだろう。

 エンド様が不足なのではない。

 同じAランクの魔物に対して、絶対安全じゃない、ということが不安だった。



 けど、エンド様は曲げない。

 なら、それをお支えするしかないだろう。

 そう思っていた私だったが、それは杞憂に終わった。



 危なげなく、オークキングを倒したエンド様。



 それを見た私は自分の浅さを思い知った。

 そうだ。

 彼は、この本の世界の王なのだ。

 きっと、世界は彼を導いていく。王となるべく。苦難を乗り越えながら。

 彼が辿る運命はもっと先にあるのだから。



 私は冷静にそう考えていた。

 というのも、オークキングを倒すエンド様の姿があまりに素敵で胸の鼓動が鳴りやまないから。



 オークキングという難関を乗り越え、弧人族を従えたエンド様。



 彼はきっと王になる。

 きっと、ここから始まるのだろう。彼の、世界が――。



 その世界が始まり、終わるときまで、きっと――。

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