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トヨの戦い
INF
しおりを挟む分厚い雲が空一面に広がっていて、太陽がぼんやりと水平線上にいるのが見えた。昨日の天候とは打って変わって今日は雪が降っている。教会の周りは民家が立ち並ぶ住宅街があってとても入り組んでいる。
俺は民家の軒下に座り込み、ポーチを出してドックタグを取り出す。ところどころ血で汚れていたドックタグを積もった雪でこすり元の輝きを取り戻させようとした。
こうしてゆっくりと見るのは初めてかもしれない。汚れがひどい物もあれば、そこまでの物もあって、ドックタグに直接弾丸が命中したであろう大穴が開いてあった物もあった。数十分かけて一通り綺麗にし終えた。
意外に暇だった。
俺は持ち場に戻って銃器の清掃をしようと思って立ち上がった。俺たちの持ち場、教会へと向かい、着いてみると皆リラックスしていた。背嚢を枕がわりにして仮眠をとる者、どこから拾ってきたか分からないドラム缶に木を詰めて火をつけ暖をとる者、何か書き殴る者もいた。俺は土嚢に立て掛けてあった552を持ち、清掃を始めた。
清掃を始めてしばらく経った頃だろうか、やけに教会前の通りが騒がしい。俺は起き上がって、通りを見てみた。左右の味方兵も俺と同じようにしていた。トラック数台が止めてあって、そこから続々と味方兵らが降りてきた。中には見かけない森林迷彩の兵士もいた。
「おい、あの森林迷彩はどこの所属だ?」
陣地内でざわめきが聞こえる。意外にも森林迷彩の兵士は多く、50名かそれくらいはいた。数列に並び、指示を受けている。よく目を凝らすと指示を出しているのはケインだ。
「あれは隊長か?何やってんだ?」
右のやつが言った。俺はあの森林迷彩の迷彩パターンをどこかで見たような気がしてならなかった。
「日国......?」
付近の奴がそう言った。すると誰かがそれに突っ込んだ。
「日国が応援で駆けつけるなんて聞いたことないぞ?"カネは出しても血は流さん"って皮肉られてる程だぞ?」
「いや!日国だ!」
俺は確信した。あの迷彩パターンは俺が訓練生時代、格闘術の講師が日国人で、その人が着用していたからだ。
「本当か?」
より一層ざわめきが起こった。
ーーーーーーー数十時間前ーーーーーーーー
セグワ南方洋上
<スピアリーダーから各機、日国機接近中。上空を警戒せよ。>
セグワ陸軍が戦闘を繰り広げている間、今まで温存されていた空軍隊がようやく始動し始めたていた。
INF同盟の効力が発効され、先駆けとして日国空軍が増援部隊として30数機派遣された。
また、同盟条文の中では原則として"空軍戦力だけ"と記されていたが日国は例外として空挺師団と普通科連隊の派遣も行なった。
セグワ航空隊、グリペンの5機編隊とタイフーンの16機編隊に日国機はエスコートされロレーヌへと着陸した。ロレーヌの首都空軍基地にはイーベルとアレアが待機していた。全機着陸し終え、ハンガーに日国のC-1輸送機が格納された。C-1の後部ハッチが開かれると続々と日国の兵隊らが降りてきた。
「Mr.タカセ!」
イーベルが隊の先頭にいた男を呼んだ。彼は隊を先に行かせ、イーベルの方へ駆け足でやって来た。
「Mr.タカセ、この度は誠にありがとうございます。」
イーベルは深々と頭を下げ、それに合わせてタカセという男も下げた。
「イーベル参謀総長殿、第1空挺師団長兼、今回の応援部隊総隊長、高瀬和則陸将補であります。」
高瀬はキレの良い敬礼をした。
「高瀬陸将補殿、よろしくお願いしますぞ。」
イーベルは高瀬と握手を交わした。
その後高瀬は背嚢から一枚の白い封筒を取り出し、アレアに渡した。
「そちらの封筒は我が国の渡部首相からと我が国の門宮天皇陛下からアレア陛下宛の手紙が同封されております。」
「ありがとうございます。」
アレアは深々と一礼した。
高瀬は敬礼をして、セグワ兵の誘導に従ってハンガーを後にした。
「頑張りましょう陛下。」
イーベルはアレアにそう言うとイーベルも作戦司令室へと戻って行った。
日国の増援部隊は到着後すぐに編成され、いくつかの普通科部隊はすぐにトヨに向けて出発した。
その出発した部隊が、度重なる悪天候に見舞われながらも数時間かけて、トヨの郊外部へとたどり着いたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ケインが指示を終えたのだろう。森林迷彩の兵士らがそれぞれの場所へ駆け足で動き始めた。ただ教会付近に向かって来る者は居なかった。指示を終えたケインが戻ってきた。
「大尉!あれは日国の兵士ですか?」
「ああ、日国の増援部隊だ。近々イーランカスの部隊も来るって噂もある。」
陣地の味方は皆日国の兵士を目で追っていた。
森林迷彩柄の戦闘服になんのアクセサリも付けていない彼らの銃。サイトの一つでもつければいいのに。
「さぁ!お前ら日国の部隊に負けないようにセグワの実力を見せつけてやるぞ。」
ケインが意気込んだ。俺にとっては正直どうでもよかったが、少しはマシになるだろうと思った。
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