Defense 完結 2期へ続く

パンチマン

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群青のハジヒロコウ

遭遇

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トヨの郊外、爆撃後2日目のある時

ストレイト島


「えー、はい。分かりました。ありがとうございますライアン主任。」


「こちら管制。セグワ本島、トヨ郊外域にて哨戒任務を遂行せよとの入電あり。第56航空隊は出撃準備に移れ。」


ストレイト島に待機していたヴェランダ航空隊にジェネッサの総司令部から指令が入った。
 第56航空隊は、いわば新米パイロット達の集まりであって実戦経験を積ませる意図が仕組まれていた。


「ルーキー供、さっさと準備整えろよー」


56航空隊の隊長はロレンス少佐だった。


「ロレンス少佐。今回の任務は郊外に侵攻する味方地上部隊を見守るだけの簡単な任務です。新米たちにしっかり教育させておいて下さいね。」


管制官が直々に伝えにきた。


「はいはい、またオーシア様ですかね?」


「そんな言い方しない方がいいですよ。また目つけられても、もう擁護しませんからね。」


「気をつけまーす」


ロレンスは、もともとヴェランダのジェネッサ加入に反対していた一人だった。以前から命令違反など連発してしばらくの間、謹慎処分をくらっていた人間だ。


「少佐!準備完了しました!」


彼の部下が格納庫で整列して敬礼した。


「あー、そんな堅くならなくて良いよ。んじゃ各自機体に搭乗しちゃって」


「了解!」


どことなく張り合いのない、出撃前の空気がそこにはあった。


「部下からしてみればたまったもんじゃねーよな。」


見かねた整備士らは口々に言った。
やがて搭乗し終え、誘導路前で待機した。


<こちらセイバー1。感度良好。各機現状報告。>


セイバー隊はF-16、4機編成の小規模部隊だった。


<んじゃ今から管制の指示に従って飛ぶから、ちゃんと上空で付いてきてよ?高度とか指示するの面倒くさいからさぁ?>


<りょ、了解。>


かえってこの緩さが新米を緊張させている。セイバー隊は順々に飛び立ち、やがて高度5000メートル付近で編隊を組んでトヨへ向かった。


<ロレンス少佐?>


<セイバー1って呼んでよね。なんだい3。>


<す、すみません。セイバー3からセイバー1>


<だからなんだってセイバー3>


<え、えっと、セイバー3現在高度5000メートル、速度500キロにて巡航中。異常なし。>


ヴェランダ空軍では、パイロットの集中力を高める意図で、高度、速度、機体状況を決まった時間ごとに口にするように決められている。


<あー、そういうの面倒いから、またトヨに近づいたら言っていいよ。それに今は450キロで巡航中だしね。君実戦は初フライト?>


<す、すみません。訂正450キロ、異常なし。それと、実戦は初です!>


<あらそ。名前なんだっけ?>


<ハリーです。階級は三飛曹です!>


<ふーん、ハリーね。まぁ緊張しなくていいよ。>


<了解しました。>


離陸後しばらくしてトヨに近づいた。海岸が見えた。


<こちらヴェランダ第56飛行隊セイバー隊隊長。作戦空域に到達した。地上隊応答されたし。>


<セイバー、こちらオーシア地上部隊。現在トヨの郊外を侵攻中。今のところ敵の反撃は無い。上空警戒を頼む。>


<了解。>


やがてセイバー隊は都心部上空を通過して、山を越えた。速度を400まで落として、ゆっくりと大きく反時計回りに旋回を始めた。左手に焼け野原となったトヨの郊外が見える。


<セイバー1から各機。400まで速度落とせ。編隊崩すな。>


<セイバー2からセイバー1、この左手の町が、トヨってところなんですか?>


<その通り、信じられないよね。これ、たったの数分で作っちゃったわけ。>


新米には少々過激だったかもしれない。多くが言葉を失ったか、あるいはバイザー越しに目をまん丸と開いている。


<セイバー3からセイバー1。これって敵部隊は全滅ですか?>


<多分ね。俺もよく知らないけどこの爆撃じゃあセグワ兵どころか、民間人まで被害出してるんじゃないのかな?>


<そ、そんな.....>


<まぁ戦争だしね。コレ。>


ハリーはしばらくの間左手に見える光景から目が離せなかった。大空に憧れてなったパイロットの初実戦フライトでのこの光景。


<隊長。この爆撃って先日の、我々の爆撃隊の行いですよね。>


<そーだよ。信じられないよね。戦前は親しい関係国だったのに、条約違反のクラスター爆弾数百個ぶち落としたんだからね。>


<そ、そんな....それはヴェランダの独断なんですか?>


<まさか。こんな国にそんな決断権なんて無いよ。どうせ上からの指示さ。これだから爆撃機乗りは嫌なんだ。>


ロレンスは左手に見える町を悠々と眺めて言った。操縦桿をゆっくり左に傾けて右足でラダーペダルを小刻みに踏む。貧乏ゆすりが癖だったロレンスにとって長時間のフライトはあまり得意ではなかった。たいしたGもかからない。


<あーそうそう、いずれ君達も戦闘機乗りとして、この空域で戦うかもしれないんだからそのイメージを持っててね。>


ロレンスはさりげなく言った。
その直後ノイズが無線機から流れ出して数秒後に渋い声の持ち主が話しかけてきた。


<上空哨戒任務中の航空隊応答せよ。>


<こちらヴェランダ第56航空隊、セイバー隊だ。名乗れ。>


<こちらスカイライン第2特殊航空戦術隊シエラ隊1番機ヤングだ。>


ロレンスの7時方向上空に5機編隊のF-22が飛行していた。


<エース部隊じゃないの。ご苦労様です。>


<ええ。セイバー隊はいつからここに?>


<はて、どれほどだったか忘れてしまいましたが、恐らくそろそろ帰投時間が迫ってきてると思いますよ。>


<シエラ1了解です。入れ替わりのはずですので確認しといてください。>


<了解です。>



そこから20分程シエラ隊と飛行したのち、56航空隊が帰投体制に入ろうとした時だった。

1つの警報音が鳴りわたった。


<トレボーから各機。ボギーが高速で接近中。迎撃体制に移行せよ。>


突然の一報だった。新米集団のセイバー隊とは別のエース揃いのシエラ隊はすぐさま上昇を開始して迎撃体制に移行した。


<す、すげぇ。>


ハリーはおもわず、その迷いのない挙動に魅入ってしまい本音を漏らした。


<何がすげーだよ3番機。>


ロレンスが間髪いれずに突っ込むと無線から笑い声がした。シエラ隊だ。


<シエラ1からセイバー1、貴国の空軍隊には先日お世話になりましたし、新人の方々にここで死んでもらう訳には行かないので帰投していただいて結構ですよ。>


<すみませんね。お言葉に甘えて帰投させていただきます。>


<幸運をセイバー1。>


ロレンスは部隊を率いて方角をストレイト島に合わせた。シエラ隊はちょうど3時方向に見えた。


<シエラ1から各機。気を引き締めろ。くるぞ。>


シエラ隊の正面に分厚い雲が広がっている。高速で雲を突き抜けると、そこには数機のグリペンが飛行していた。そのグリペンの尾翼にはローマ数字のⅢが書いてあった。


<なんだコイツは?>


4番機が言った。事実そのグリペンは彼らが今まで見てきたセグワ空軍機とは少し違った。機体胴体の上部は黒色塗装が施されていた。


<構うな。やれ。>


ヤングが指示した。高度的優位を得ていたシエラ隊は獲物をハントするワシのように降下し始めた。

速度が上がり、ギリギリに近づいていく。


<もらった!>


3番機が自信ありげに言ったその瞬間。グリペン全機が右周りで180度回転して一気に急降下した。


<うおっ。クソ!気をつけろ!>


雲の厚い層を抜け。地面スレスレまで十数秒程度。グリペンは地面スレスレを飛行し続け、回避行動をとっていた。



<やむを得ん。シエラリーダーから各機、攻撃中止。本来の任務に戻るぞ。>


3番機が悔しそうしている。


<そう悔しがるなレッド。またあいつらと戦えるさ。>


<あぁ。>


<まぁまだセグワにあんなパイロットが居たとはな。期待できそうだな。>


シエラ隊はセイバー隊の代わりに哨戒任務に移った。


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