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ICICLE
7 あの狸親父が
しおりを挟む爆発事件から数週間後の某日。ケインやシャロンら管理職の人間たちは、とある件で本庁に召集されていた。
「この度は集まっていただきありがとうございます。」
前で幹部がプロジェクターを使いながら話し始めた。
「さて本題に入ります。2週間後に信任統治省傘下、統治府のライアン長官がロレーヌを視察するために訪問する事が決定しました。爆発されたブリッジ視察を主な内容にしているとの事です。ですが昨今のこの島の治安情勢はかなり不安定であり、必然的に犯罪の可能性も増えてくると予測しております。そこで本庁は州警と連携して本日より厳戒態勢に移行し、治安活動の強化を図ることを決定しました。」
するとプロジェクターがロレーヌ州内を映し出した。
「旧宮殿前の港湾通りは当日は片道規制を実施し州警の交通課が担当、警備局、一般警備部の隊は交通課と連携して当たってください。特務警備部の警衛課は主にライアン長官の身辺警護を担当し、特殊警備課は武装隊を配置しブリッジ付近の警戒強化をお願いしたい。また洋上保安局の沿岸警備隊は湾内に巡視船数隻を派遣し、航空隊はヘリ3機で上空から地上警備を行なって下さい。」
各部署のリーダーたちがメモを取る中、ケインは机の上に置かれていたコーヒーを飲み飲み聞くだけでいた。みかねたシャロンがケインを肘で突いた。ケインはハイハイと投げやり気味に返事してパイプ椅子に座り直した。
「本庁は反政府勢力が攻撃を仕掛けてくると予測されるポイントを3つ予め算出しています。」
危機管理局の局長が前に出てプロジェクターで資料を映し出した。
「まずライアン長官が宿泊する新都ホテルです。このホテルは昨年建てられたばかりで、セキュリティ面に関しては未知数な所が多いです。そのため訪問中は各部24時間態勢での任務に就いていただきたい。その旨をよろしくお願いします。そして2つ目はブリッジ訪問前、ホテルから出る時です。多数の報道陣が殺到すると思われますので過度に近づかせないようにお願いします。そして最後はブリッジ前でのインタビューの時です。ここは開けた場所ですので狙撃犯に要注意して下さい。危機管理局からは以上です。」
簡潔に局長が伝えた。次の局長にマイクが渡り無駄に長い会議は延々続いた。
「・・・よって各部署連携して訪問を無事に終わらすことが出来るようお願いします。」
進行役が一礼すると、付け足しで終わりですと言い会議場が騒がしくなった。ケインは大あくびをして立ち、会議室を出た。地下駐車場に降り、車に乗ると直ぐにシャロンが強めに聞いた。
「ケインさん、あなたちゃんと聞いてたんでしょうね?」
「コーヒー飲んだから起きてたよ。」
「起きてたかどうかは聞いてないの。聞いてたの?」
「そりゃもちろんだよ。」
「大事な任務なのよ?分かってるの?」
「そりゃ一応保安職員だからわきまえてるさ。けど今回の訪問は少し危なすぎない?」
「会議もまともに聞いてなかったのに、言いたい事があるのかしら?」
「ありすぎるくらいさ。」
「良いわ、言ってみたら?」
「大元が問題なんだよ。ライアン長官って奴、きっと自分の統治政策を閣僚に見せつけてやりたいんだよ。」
「随分と抽象的ね?どういう事かしら?」
「まず長官が泊まる新都ホテル、ありゃライアン自身が作った改革計画の中にあったホテルさ。それに爆破されたブリッジ、それも同じ。ここ最近の島内における治安情勢の事で上から詰められてるのは違いない。だからこの危険な時期に来て、しかもインタビューまで受けようって話さ。」
「待って、最初のは分かるけどどうしてインタビューはダメなの?」
「今回インタビューを行えるのは2社だけ、1つ目は本国1のシェアを誇るOS会社だ。これは特に問題もないし当初からの有力候補だった。最後の2つ目がちょっと怖いんだ。MOX社、知ってる?」
「ええ、ちょっとなら。確か旧セグワ人雇用法で人材を確保して作られた放送会社よね?それがなぜ?」
「考えてみなよ。まだ体制の基盤が固まりきってない彼らなんか、ICICLEにしてみれば1番利用しやすいんだよ。それにMOXはライアンが育て上げたと言っても過言じゃないし、この機に自分が成し遂げだ経済策を世界に公表できるチャンスだしな。」
「まだ分からないわ?どういう事?」
「つまり反政府勢力とかがMOX社を利用して何かしらの犯行に及んだ場合、それが成功するにしろ失敗するにしろライアンの失脚は免れないわけ。そうなれば政府側にも影響は及んで、反対に右翼の連中はきっと更に加熱するだろうね。」
「つまり、ライアン長官は今回の訪問で自分の政策を世間に公表して支持を確保しようって事?」
「もっぱらそんな所かな?」
「でも確固たる証拠は無いじゃない?」
「証拠なんて要らないよ。あの狸親父の考えそうな事だ。」
「局長に伝えようと思ったら伝えられるのよ?」
「ハイハイ。すみませんすみません。」
シャロンはため息を吐いて交差点を曲がった。するとケインは右を指差した。
「ちょっとMOX社寄ってこうよ。」
「勤務中よ?」
「訪問の件だよ?」
「行くなら暇な時にしてちょうだい。」
シャロンはそのまま無視して埋立地に戻った。
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