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権力者の宴
12 権力者の訪れ.2 進展
しおりを挟むやってきた訪問日当日。ライアンは夕暮れ時に本島に訪れる予定だが、警察や保安庁は午前中から厳重な警備を行なっていた。
<保安庁から特警、現状を知らせよ>
<こちら特警1、今の所異常はありません。どうぞ>
港湾通りは既に検問が設置されていて、シャロンはその近くに指揮車を停めて待機していた。警官らが笛を吹きながら車を停止させ一台一台用心にチェックしていた。シャロンが現場で警備当たる中、ケインは州警の検問所に居た。警官が車を停めるたびに後ろから覗き込むようにしていた。ケイン自身、警備任務の一環だと勝手に思い込んで行なっていたが、あまりにも不審だった為に警官らに目をつけられてしまった。
「おい」
左から警官が睨むような目つきでやって来た。
「貴様保安庁か?」
「保安庁、特殊警備課の者であります。」
ケインが敬礼して所属を述べた。
「特殊警備課?指揮官は頭に血が昇り易いんだろ、冷静になれって伝えたけ、それと銃器にはセーフティ掛けておけよ。」
明らかに小馬鹿にするように言ったがケインは動ずること無く「了解です」と述べた。それを聞いたその警官は嘲笑した。ケインはそれきりその警官が去ると思い込んでいたものだから、引き続き、その場に留まろうと思ったが、思惑とは裏腹にその警官が「去れ!」と一喝したから止むを得ずケインはその場を去った。
仕方なく保安庁職員が待機する為に作られた屋外広場で時間を潰そうと思いその場に向かっていると、後ろから声を掛けられた。
「特殊警備課は嫌われ者だな。」
その声の主はビンテージだった。
「ありゃ、ビンテージさん。こんな時にどうしたの?」
「なぁに、俺もあんたと同じ警備活動をしてるだけさ。」
「どうせ建前でしょ?」
「あんたも勘がいいな。」
「誰でも分かるだろう。」
「まあ、そんな事は良いんだ。ちょっと今日はロレーヌの隣の州に用があってね。」
「隣?」
「この州の北、ベルン州さ。」
「そこには捜査活動で?」
「まあ、そんな所だ。以前例のサイバー事件の事を教えただろ?あの件で少しばかり進展があってね。発信源が特定することが出来たんだ。」
「捕まえられたのか?」
「それは出来なかった。だが、連中、かなり用意周到でね。オーシアの大学とヴェランダの新聞社のネットワーク回線を経由して、情報を盗み出したのさ。そしてそれをたどっていくと、スカイラインの廃墟同然の建物にたどり着いたらしいんだ。」
「という事はスカイラインに乗り込んだという事?オーシアの公安調査庁も、かなり攻めるね~、スカイラインも黙ってないでしょ?」
「まぁな公安の連中もかなり気が立っているし、たった一言だけ事前通告して向こうの返事も待たずに突入したそうだ。」
「自分の庭でそんな事されたらね。それで、何も収穫は無かったわけでしょ?」
「いや、犯行グループの検挙には至らなかったが、どうやら証拠がいくつかあったらしい。まあ、それら全部現地政府や治安当局の許可も得ずにかっさらって行ったらしいがな。」
「まあ、やり方は置いといてそれでビンテージさんはその証拠に基づいて捜査中ってわけか。」
「そうだ。その証拠の中にベルン州の旧セグワ軍の防衛戦用の陣地跡があるらしくてな。その跡地になにやら頻繁に訪れていた事が分かったらしいんだ。」
「ああ、あそこか。知ってるよ。ロレーヌとの州境、少し高めの山の麓に位置しているよ。あそこは冬になるとかなりの雪が積もるから今のうちに行っておいて正解だな。」
ケインがそう言った直後に盾を持った機動隊員らが通りを駆け足で移動し始めた。駆け足で行った方に目をやると反オーシアを掲げるデモ隊が通りを進行していた。
「あんたらも行った方がいいんじゃないのか?」
ビンテージが見て言った。
「本庁からは無線連絡もないし、ことデモ絡みになると特警はまず敬遠されちゃうからね。」
「まあ、他にも事案はあるだろ。俺はやる事があるから、じゃあな。」
そう言うとビンテージは再び歩き始めた。ケインもまた広場に向かって歩き始めた。
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