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消えゆく存在と国家
36 守るべき戦い
しおりを挟むロベスピエールの案内で、ブリュメール達は西方に広がる雪原を猛スピードで駆け抜けていた。軍隊を振り切った物だと思っていたが、バックミラー越しに数台の車両を確認した。
「マクロスだ...」
ロベスピエールはそれらを見て言った。
「レイ、撃ち払え!」
ブリュメールがそう言うと、レイは振り向いて、後部座席から追ってくるハンヴィーに向けて銃撃した。だが、ほとんど効果はみられず、逆に撃ち返してきた。割れた窓ガラスが宙を舞う。
「頭を伏せて!」
レイはロベスピエールの頭を抑えて、前傾させた。
「おい、ロベスピエール!目的地ってのはあれか?」
ブリュメールが前方の建物を見て言った。ロベスピエールは怯えながら頭をあげて視認して「そうだ。」と言った。コンクリート造りの建物で、何の目的でこんな所に建てられたのかは不明だった。ブリュメールはラストスパートを掛けるかのようにアクセルを強く踏み込み一気に加速した。
「もう少しで着くぞ!」
建物が目の前に迫ったとき、後部ガラスから通り抜けて来た敵弾がブリュメールの左肩に命中した。衝撃で車のバランスが崩れた。ブリュメールは片手で運転して、体制を立て直そうとしたが、中々上手くいかず、フラフラと蛇行しながらブレーキを強く踏み込み、建物に接触した。
リストはすぐに車から降りて、追手に攻撃をしながら後部ドアを開けた。
「リスト!彼を中に連れて行って!早く!」
レイがリストの目を見て言った。リストは強く頷いてロベスピエールを庇いながら建物内に入れた。玄関口から車両の方を見る。
「レイ!ブリュメール!こっちだ!」
リストは玄関口から身を乗り出して呼び込んだ。レイは玄関口を見て、車両を降りて、運転席に回った。ブリュメールは右手で左肩を抑えている。
「ブリュメール、大丈夫?」
「くそ痛えよ。」
出血していた。レイは再び玄関口の方を見る。
「リスト!援護を!」
レイはそう言ってブリュメールの肩を持った。リストは思った。
そんな無茶だ。撃たれる。
だがそう思ったのはリストだけでは無かった。ロベスピエールは建物の奥からMP7を2丁持って現れた。その内の一丁をリストに手渡し、最後を自ら構えた。
「レイ!援護したらこっちに来い!」
それを聞いたレイはリストを見て頷いたが、不安そうな表情がまだ残っていた。リストはそれを見て言った。
「俺を信じろ!」
レイは頷き直して準備した。ロベスピエールもガッチリとMP7を握り直して構える。
「今だ!行け!」
とっさにリストは玄関を飛び出して連発しながらレイの方へ駆け寄り搬送を手伝い、ロベスピエールは玄関口からひたすらに撃ちまくった。だが多勢に無勢、敵攻撃の勢いはいくばくか抑えられたが、虚しくもブリュメールは背中に2発被弾した。玄関が近づくとロベスピエールも撃ちながら手を貸して、何とか死角に引き込んだ。敵は今だと言わんばかりに車両の陰から出てきて詰めようとして来た。リストは壁から、時折覗かせて撃ち続ける。敵何人かを撃ち倒したが、それでもまだ何人か敵はいた。ブリュメールは悶え苦しんでいた。残念だが今は応急処置も何も出来ず、ただ、「耐えろ」と声を掛けることしか出来なかった。
ロベスピエールはすぐに辺りを見回し、広い室内を探し回り、部屋の1番奥にあった引き出し付きのテーブルから情報とその暗証番号を遂に発見した。
「よし、ひとまず情報は確保できた。だが、これからどうする。」
ロベスピエールは3人の元にいき言った。
「本部と連絡は繋がったか?」
リストはレイを見て言った。だがレイは首を横に振った。どうする、リストは考えを巡らせた。こっちは孤立無援状態。司令との連絡も繋がらない。一方あちら側の勢力数は不明だけれども増援は呼びやすい状況下にある。このまま立てこもってもいつかやられる。
「上の階に売りさばく予定だった武器がある。」
リストが悩んでいると、ロベスピエールは言った。だがここから階段に行くには射線が通ってしまっている。ここでロベスピエールを死なせるわけにはいかない。リストはそう思ってロベスピエールに尋ねた。
「あんたを死なすわけにはいかない。だから俺が行く、二階のどこにあるんだ?」
するとロベスピエールはすぐに反論した。
「ダメなんだ。そこには私の生体認証が必要になる。君が行っても開かないんだ。」
「なんでこんな所にそんなのがあるんだよ。」
「ここはマクロスが私に提供した所でもあるんだ。第三者、いわば君達のような組織に襲撃されても大丈夫なように考慮されて作られたんだ。」
「そのMP7はどこから持ってきたんだ。」
「これはそこの奥にあった物だ。上から取ってきた訳じゃない。」
リストはそれを聞いて顔を曇らせた。
「私に任せて。」
レイがいきり立って銃を構えた。
「レイ。」
リストはレイを凝視した。
「立場は違うけど、けど私はリストを信じるから。」
リストは頷いた。
「ありがとう。」
レイも頷いてみせた。リストとロベスピエールは壁の際に身を寄せる。レイはタイミングを見計らった。
「今!」
レイは声をかけて、MP7を小刻みに連射して援護した。2人はさっと素早く飛び出して階段に向かって駆け出す。弾が体のすぐ横を過ぎ去り、コンクリートに当たって塵を巻き上げた。だがレイの応射もあったおかげで何とか階段にたどり着き、二階に駆け上って行った。
しかし2人が二階に登ったのと同時に1階の防御が手薄になった事に乗じて、敵は一斉に距離を詰め始めた。通すわけにはいかないんだ!レイは1人ながらも果敢に身を乗り出して反撃した。敵が何人か倒れる。身を隠してリロードし、また乗り出して撃つ。必死になって時間を稼いでいた。弾が少ない、効率的に撃たないと。でも敵は何人なのかな、とりあえず確認しよう。レイは一息吐いて装填して壁際によって機会を伺う。だが覗こうにも至近弾が多く、巻き上げられた塵などが頻繁に顔に付着した。その影響で緊張と恐怖が高まり、過呼吸気味になりかけた。一度胸をなでおろし、落ち着かせて再度集中力を高める。しばらく張り付いていると至近弾が少なくなってきた。今がチャンスだ!レイはそう思って身を乗り出した。玄関口から外を確認する。敵は車両のボンネット辺りから顔を出して様子を伺っている。敵は5人くらいだ。レイはその調子で確認していた。その時、ふと足先に何かが当たったような感触を感じた。一度頭を引っ込み、視線を落として確認してみた。
それは手榴弾だった
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