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消えゆく存在と国家
23 武器商人.3
しおりを挟む午後7:30過ぎ
雨が降る夜だった。
攻撃部隊はターゲットのいるアパート前の建設途中のビルの陰で待機していた。援護役の狙撃隊は攻撃隊のいる建設中ビルの3階で正面のアパートを監視していた。
<CPから各隊、着手せよ。>
<了解した。これより、作戦を開始する。ICICLE4援護を頼む。>
<4、了解。>
雨音が車のボンネットを叩く音があたりを埋め尽くしている中、A、B両隊はそれぞれ分散して塀や車の陰に身を隠しながらゆっくりと進んで行った。すると狙撃隊から無線が入った。
<待て、駐車場に武装したボディガードがいる。>
グーテンベルクは塀から覗き見た。
<やれるか?>
<了解。>
しばらく待っていると、ボディガードの男は倒れた。その男以外敵影は確認できない。隊は前進を再開した。四方を警戒しながら進んでいき、アパートに着いた。
「レーマン、お前達の隊は辺りを警戒しろ。俺たちが突入する。」
グーテンベルクはB隊隊長のレーマンに言った。レーマンは了解して、隊を辺りに分散させた。リストはセダンの陰に、レイはアパート側の塀から警戒していた。
A隊の隊員達がターゲットのいると思われる部屋の前で突入準備をした。1人の隊員が扉に爆薬を仕掛けて、他の隊員達を下がらせる。辺りに緊張感が走った。「爆破するぞ」と簡潔に言うと、直後にスイッチを押して扉ごと吹っ飛ばした。
間髪入れずに隊員達が次々と室内に突入する。が、そこにはターゲットどころかボディガードの1人もいなかった。
<ICICLE1からCP、ターゲットはいない。繰り返すターゲットはいない。>
<了解した。CICICLE1、ダートからの情報は間違いなくそこだ。ターゲットがいなくとも、情報さえあれば良い。情報や証拠を捜索せよ。>
<ICICLE1了解。>
グーテンベルクはA隊の隊員達に部屋の内部を探すよう命じた。すぐに引き出しの中や、隅々まで探し始めた。すると、テーブルの上に何やら細長い物が置いてあるのをグーテンベルクが発見した。それを手にとって、辺りにいた隊員に言った。
「おい、ダートってのはこれか?」
近くの隊員が手にとってまじまじと見た。
「多分そうじゃないですかね?レイに聞いてみたらどうですか?」
隊員の進言でグーテンベルクは無線で警戒に当たっていたレイを呼んだ。
「すぐに向かいます。」
連絡を受けたレイは持ち場を代わりの隊員に任せて部屋に向かって行った。
「もしもこれがダートだったら、厄介だな。」
グーテンベルクが隊員と会話をしていると室内にカチャっというような機械音が響いた。
その瞬間ー
室内に仕掛けられていた爆薬が炸裂して、凄まじい爆風と鉄片がA隊を切り裂いた。連絡を受けて向かっていたレイも、玄関付近で爆風に巻き込まれた。爆風が抜け道だった玄関に集中したため、そこにいたレイは駐車場の車の方にまで吹き飛ばされ、フロントガラスに叩きつけられた。すると直後に隠れていたボディガード達が、ICICLE目掛けて攻撃を開始してきた。警戒していたB隊は応射し始める。
<ICICLE4、撃て!排除しろ。>
狙撃隊も援護射撃を開始して、ボディガード達を次々と倒していった。
そんな中、レイは衝撃で視界がボヤけ、音もこもったように聞こえていた。すぐに他の隊員がレイを引きずって降ろして、レイに返事をするよう何度も呼びかけていた。数回の呼びかけと体を揺さぶられて、やっと意識を取り戻したレイは辺りの状況を把握しようと見回した。車に弾が命中して出る音、薬莢の転がる音、すぐにレイは転がったSIG553を持って車に身を隠して、応射し始めようとした。だが、体が重く感じて上手く動く事が出来ずに、553を置いて左足のホルスターからピストルを抜いて陰から撃った。
すると後方にいたB隊員が後ろを見ながら叫んだ。
「ターゲット!車で逃げて行くぞ!」
すぐに後ろを振り返ると、奥にあった駐車場から白のセダンが猛スピードで駐車場のゲートを突破した。
「行け!逃すな!」
レーマンは近くにいたリストの方を見て怒鳴った。リストはすぐに通りの方へ駆け出して、乗ってきたSUVで後を追い始めた。それと同時にレーマンは狙撃隊にも無線を入れた。
<ポッツ!メンデス!ターゲットがそっちに逃げてる!目視しただろ、逃すな!>
2人はうつ伏せ状態から、すぐに立ち上がって、MP5を片手に3階から2階に階段を駆け降りて、そこから地上に飛び降りた。その勢いのまま、通りに出てこちらに向かって加速しようとしているセダンを視認した。距離はかなり近かった。2人はすぐに連射した。集中攻撃を食らったセダンはタイヤがバーストして雨で濡れた路面を滑りながら電柱に激突した。そして、2人は煙を吹き上げている車のに近づき、ドアを開けようとしたが鍵がしまっていた。メンデスはMP5の銃床を勢いよく振りかざして、窓ガラスを粉々に叩き割った。すぐにポッツが内側からロックを外してドアを開けた。ターゲットは顔面に切り傷を数カ所負っていたが、意識はハッキリしていて、そのまま抑え込み結束バンドで両手を固定した。
<こちらICICLE4、ターゲットの車を停車させた。>
<了解。部下がそっちに向かっている。>
2人は後から追ってきたリストを見つけた。
「こいつがターゲットで間違いないな?」
メンデスがリストに尋ねた。
「ああ、間違いない。コイツだ。」
それを聞いてメンデスはターゲットの男に黒布を被せた。
<隊長。ターゲットを確保しました。撤退しましょう。>
リストがレーマンにいった。
<もちろんだ。こっちも片付いた。合流だ。ターゲットと一緒に戻ってきてくれ。>
メンデスはターゲットをリストが乗ってきたSUVに押し込んだ。
「俺たちはコイツの車両を調べる。それに俺たちの移動手段があるから、先に行け。」
メンデスがそう言うと、リストはすぐに車を出発させてレーマンの方へ行った。
アパート付近では、爆発のあった部屋から巻き込まれた隊員達を搬出して応急手当てを行なっていた。
「隊長!戻りました!撤退を。」
リストが言った。レーマンは頷いて辺りを見回した。
<CPからICICLE各隊、現状報告。>
<こちらICICLE2、レーマンだ。ターゲットは無事確保。だがグーテンベルクを含むA隊の隊員3名がKIA、他3名が負傷した。これより撤退に入る。>
<CP了解。警察が通報を受けて行動に入ったようだ。即座にその場を離脱せよ。アウト。>
レーマンは「撤退するぞ!」と一声かけた。車を通りに持って来させて、遺体も負傷者も乗せた。レーマンは全員が乗り込んだ事を確認して、最後に車に乗って、本拠点へと帰還を開始した。
<ICICLE4から2へ、ターゲットの乗っていた車両から数個の記憶媒体を発見。押収した。どうぞ。>
狙撃隊からの無線が入った。
<了解した。それとICICLE4、今どこにいるんだ。>
<車列の最後尾だ。>
レーマンがバックミラーを見ると、黒のセダンがピッタリついていた。レーマンは満足そうに頷いた。
<CPからICICLE、現状報告。>
<こちらICICLE2、無事帰路についた。また情報もICICLE4が押収し、ターゲットも、この車両に乗っている。>
<CP了解。>
<それと、負傷者等の手当てを願いたい。>
<CP了解。基地で待機しているぞ。アウト。>
そうして彼らはターゲットであった武器商人を確保して、基地に帰り着いたのだった。
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