Defense 2 完結

パンチマン

文字の大きさ
29 / 53
消えゆく存在と国家

29 戒厳下の密会

しおりを挟む

次の日には、昨日まではなかった異常な光景がそこにはあった。通りに止められた装甲車。駅前で立っている迷彩戦闘服をきた兵士。巡回パトロールする軍用車両に上空を飛ぶミニガンを搭載した輸送ヘリ、報道陣が異様な光景に食いつき興奮気味で伝えていた。その日の新聞も大々的に取り上げていた。ある文面に、戦時中を思い起こさせる、と書かれている。全くその通りだろう。実弾の込められたライフルを持つ兵士たちが日常の至る所にいるのだから。朝通勤ラッシュで忙しそうに駅から出てくる人は兵士の鋭い眼差しを受け、昼、ランチがてら入ったレストランの外に戦車が地面を揺らしながら走行して行っている。
 その日の報道番組はこの事でもちきりだった。その日特に何もする事なく、いや何も出来ずに時間だけが過ぎ去って行った。


「ケインさん。自宅に帰らせて。」


隊長室でだるまストーブに当たっていたケインにシャロンは言った。ケインは少し驚いた顔をしていた。


「珍しいね。俺がそんな事言ったらいっつも怒ってたのに。」


「今日は特別なの。」


ケインは何かを察した。


「分かったよ。いまから帰るの。」


「ええ。」


ケインは承諾した。シャロンはジャンパーを着て外に出て埋立地から出て行った。隊長室から見送ったケインは携帯を取り出して、ある番号にかけようとした。するとそれより先に携帯がなった。その相手は今から電話をかけようとした相手だった。


『あ、ビンテージさん?ちょうど俺も今掛けようと思ってたんだよ。』


『そいつは奇遇だな。あんたから掛けてくるなんて、一体なんだ?』


『いや、シャロンさんが様子変だからさ。それにシャロンさん、裏でちょっと色々あるじゃん?』


『ああ、あんたも知ってたのか、その件でだよ。』


『なんだ、ビンテージさんも知ってたのか。』


『まあな、お陰で手間が省けたよ。前置きは必要ないな。今日シャロンは俺たちがかねてより探していたイーベルと密会する事が分かった。俺の公安の友人からの情報だ。そこで取り押さえるつもりだ。何時に密会をするかは分からないが、場所はあらかた絞られている。あんたにも協力してもらいたい。20時に合流だ。』


『分かったよ。』


ケインはそう言って電話を切った。保安庁のワッペンのついたジャンパーを着て椅子に座った。
 
それから数時間後

ケインはビンテージに指定された場所へと向かい、車から降りた。なにやら海辺のプレハブ小屋に入るよう言われて、扉を開けて入ってみた。


「来たな。」


そこにはビンテージと彼の部下と思われる男は数人座っていた。壁にはM16が立て掛けられている。それを見てケインは言った。


「撃つの?」


「イーベルだけには当たらないようにしてやるさ。」


足を組んで座っている男がケインに向かって言った。ケインは無視して椅子に座った。ビンテージもスルーを決め込んでいる。


「なんだよ。公安調査庁の俺はお荷物か?」


アルフォンスもビンテージに呼ばれていた。


「密会のタイミングを見計らって突入する。簡単な事だ。それと、基本的に銃は使うな。不要な混乱を招いては、また面倒な事になりかねない。」


皆了解した。


「今部下の偵察隊が見回っている。動きがあれば無線で入ってくるからその時まで待機だ。」


そこからずっと待機していた。外は雪が降り出していて、相当冷え込んでいた。
 その頃シャロンはケイン達が待機するプレハブ小屋とは少し離れた港の方に来ていた。車から降りてしばらく歩いていると、港にニット帽を被った男がシャロンの方を見つめていた。シャロンは気がついて男に近づいた。男はシャロンを小さな漁船に乗せて出発して、狭い水路を奥に奥に進み始めた。
 

『ビンテージ。動きをとらえた。けど、プレハブから遠いぞ、第2号埋立地に隣接する鉄道用高架下の水路を内陸方面に進んで行ったぞ。』


無線が入ってすぐに外に出た。しかし、車で行くには遠回りしないといけない。するとビンテージが無線機で連絡して、しばらくするとゴムボートが二隻接岸した。


「乗れ。逃げれられるぞ。」


運転手が急かした。一同はすぐに乗り込んで急発進した。


「おい、まっすぐ行くのか?寒すぎるぜ」


アルフォンスが吐き捨てた。

 シャロンを乗せた漁船は背の低い橋をくぐり、また一つくぐって狭い水路の真ん中に停められた船が見えた。船首には人らしきシルエットがある。するとその船の前でとまった。


「イーベル.....」


「久しぶりだな。いつ以来だ?」


イーベルは後ろにいたICICLE隊員に聞いた。治安取締り活動前の会合以来です。と答えた。


「シャロン。早くこの島から去れ。上に伝えろ。お前たちマクロスとは、お前達の利益を上げる機会を作るのと引き換えに、独立を政府に進言するという内容で契約したんだぞ、だから俺たちはあの治安活動も黙認した。はやく伝えろ。」


「やってます....伝えているんです。」


「そうか。マクロスはこれからこの島をどうするつもりだ?こんな戒厳令を引かす事も奴らの計画に入っていたのか?」


「これからの予定は分かりません。この戒厳令は想定外でしょう。」


「お前の財閥の総帥はこの島から引く気は無いんだな?」


「分かりません。」


「なんで分からないんだよ。交わした事を守ってないじゃないか。」


イーベルの後ろにいたICICLE隊員が言って、ピストルをホルスターから抜いた。


「待て。」


イーベルがいさめた。
 その時奥の方からモーター音が聞こえ始めてきた。波も伝わって船が少し揺れ始めた。


「ここまでか。」


イーベルを乗せた船は方向転換して、内陸の方へと船首を向けた。イーベルは最後部に立ってシャロンの方を黙って見つめていた。そうして逃げるために勢いよく発進した。シャロンは、逃げて行こうとするイーベルに向けて隠し持っていたP226を出して構えた。


「止まりなさい!」


声が水路内に響いた。ビンテージらがその場に到着した。彼の部下がM16を逃げ行くイーベルに向かって構えた。


「やめろ。重要参考人だ。」


ビンテージが止めて銃を降ろさせた。


「どう言うことか教えてもらおうか?」


アルフォンスがシャロンの船に飛び乗った。


「やめろ。」


ケインがアルフォンスを下がらせて船に乗ってシャロンの方へ行った。アルフォンスは不服そうな顔をして、ビンテージのとなりに戻った。


「バカはバカだけで慰め合わせるのが1番か?俺は帰るよ。せっかく大物を期待したのにな。」


アルフォンスは付近に止めてあった他人の漁船に飛び乗って、陸に上がった。


「ケインさん。ごめんなさい。」


シャロンがケインに謝った。だがケインは何も答えず、ゴムボートに乗せた。ビンテージは展開した部下をゴムボートに乗せて、元のプレハブに戻って行った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...