Defense 2 完結

パンチマン

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長の帰還

47 目覚め

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 あの日の断末が頭の片隅に...目覚めは急にやって来た。ここはどこなのだろうか。朝日が眩しく差し込んでくる。部屋の壁にかけられたカレンダーを見てみた。あの日からもう5年くらい経ってる。私は何年眠っていたのだろうか。ええっと、最後は飛行機に乗ってて、それで....そうだ、私は墜落したんだ。皆んなはどこなんだろう?

 すると病室のドアが開いて看護師はアレアが目覚めているのに気が付いた。

「す、すぐに医師を呼んでくるから待っててね!」

それから数分で医師が駆けつけてやって来た。

「大丈夫ですか?記憶はハッキリありますね?」

繰り返される質問に勢いに押されるがまま答えた。どうやらアレアは数年間昏睡状態にあって今の今まで寝たきりだったらしい。見当たらない家族について聞いてみた。

「非常に申し上げにくいのですが、あなた以外助けられませんでした。」

それを聞いて、酷くショックを受けた。

皆んな、死んだの?私、1人?

すると医者の後ろから体の大きな軍服姿の兵隊が2人ズカズカとやってきた。

「そちらの方を迎えにきました。どいて下さい。」

制止に入った看護師を手荒に突き飛ばしてどかし軍人はアレアに近づいた。すると連行しようした軍人の前に医師が躍り出て咄嗟にかばい言った。

「ダメです!彼女にはまだ墜落時のダメージが残っています。今は安静にしておく方が良いでしょう。」

軍人は医師を睨みつけた。不意に沈黙が訪れ、病室は妙に殺気立っていた。医者には軍人に渡せばアレアの身がどうなるかは分かっていた。それ故に退かずひたすらに軍人と対峙し続けていた。
 先に折れたのは軍人の方だった。軍人は、再度明日来るとだけ伝えて病室を後にした。
 張り詰めた空気から解放され、アレアは胸を撫で下ろして医者に礼を言ってお辞儀した。すると医者は膝をついてアレアの肩に手を置いた。

「あなたはここにいると危険だ。さっきの通り、オーシアの軍隊にあなたは狙われています。今はホールにも軍人がいて逃げる事は不可能でしょう。ですが夜になると院内の軍人は撤退して、外に警備にあたっている軍人だけになります。可能性は決して高くありませんが、明日になれば連れて行かれるのは明白です。今日の夜ここから逃げなさい。」

医者は真剣にアレアに語りかけた。アレアは目をまん丸として、よく理解出来てなかった。

「とにかく、あなたは命を狙われている。だから今日の夜にここから逃げなさい。分かったね?」

少し理解して頷き夜が来るのを待った。時折震えながら。
 そうして夜。深夜0時を回った頃。こっそり起きて、部屋を出た。
 薄暗い病院を抜けて外に出た。かなりの肌寒さを感じた。どこに逃げれば良いのか、どうする事も出来ずとにかく遠くへ行こうと通りに沿って歩き始めた。

しかしそれが仇となった。

通りに出てしばらくすると、正面からライトで照らされた。眩しい光がアレアを包む。

「いたぞ!捕まえろ!」

車から一斉に武装したオーシア兵が降りてきた。アレアは慌てて来た道を引き返し、道路を超えて畑のあぜ道を駆け抜けた。後ろから兵士が追いかけてくる。アレアは何度も転びそうになったが必死になって逃げる。

絶対に捕まっちゃダメ。逃げなきゃ、私はあの島に帰るんだ。

しかし、逃げて行く内に追い込まれるように囲まれていき、目の前が藪だらけの所で追い込まれた。アレアは振り返って別の道を探そうとしたが、すぐ後ろには武装したオーシア兵がわんさかいた。銃を構えて、投降するよう呼びかけてくる。アレアは広がる藪をみた。この山に逃げ込めば何とかなるかもしれない。意を決した彼女は、一気に藪に飛び込んだ。意表をつかれたオーシア兵はすぐに後を追おうとしたが中々進めずにいた。藪の中を突き進む。足に痛みが時折走る。

こんなところでやられるわけにはいかないんだ。

アレアは藪を超えて山道を逃げ始めた。しかし増援要請を受けたオーシアのヘリがアレアの上空を飛んでいた。

<HQからハンター、ターゲットはセグワの王女アレアだ。>

<ハンター了解。現在地上隊から連絡を受け山道を捜索中、地上隊の最終視認ポイントを教えてくれ。>

<HQ了解。参照点より4-4-3-0だ。奴は国を守るためなら何人でも死なす国家主義者の魔女だ。殺せ!何としてもセグワ島に帰すな。>

<ハンター了解。>

だがコールサインハンターこと、ブラックホークの副操縦士は不服そうな顔をしていた。

「本当に殺す必要があるのか?」

副操縦士の問いかけに機長は答えた。

「命令だ。従うほかないだろ。」

「元はと言えば俺たちが勝手に攻め込んだんだぞ?」

すると文句を吐き捨てる副操縦士に向かって、キャビンで銃を構える兵士がこう言った。

「何言ってんだ。司令の言う通りあの女は悪魔の女だ。自分の命が危なくなったら投降して、そうじゃないときは国のために死ね死ねと命令するような奴だ。あいつを抹殺しなければ、また悪夢が再来するぞ」

すると副操縦士は、キャビンの兵士に真っ向から食いついた。

「違うだろ。俺たちは正義なんかじゃないし、世界の警察でもない!お前はあの文書流出の事を知らないのか?俺たちはあの国を蹂躙したんだぞ?」

「あの女には関係ないだろ!あの女のせいで何人のオーシア兵士やジェネッサ兵士が死んだ!お前は仲間が死んでいった事を何も感じないのか!」

「それは彼らだって同じだ!彼らにしてみれば俺たちは都合のいい侵略者だろ!あの王女を殺した所で何になるんだ!」

「なんだと.....この国賊め!俺が殺してやる!」

すると兵士はキャビンからコックピットの方に向かって掴みかかろうとした。すぐに同乗者が抑えつけた。

「2人ともやめろ!何をしてるんだ!作戦中だぞ!」

2人は諌められた。副操縦士は納得が行かなそうに「了解」とだけ返事して下を見下ろした。
 アレアの頭上をヘリが飛んでいる。サーチライトに照らされないように回避するが、回避すればするほど険しい道に追いやられ、体が傷ついて行く。気がつく頃には腕も足も擦り傷だらけになってしまっていた。それでもアレアは負けじと山を登って行った。恐怖心にかられながらも、自分を信じて逃げる他無かった。
 一方オーシア兵達は武装して山に展開し、辺りを捜索していた。

「いたか?」

「こっちはいない。」

「さっさと出てこいよ。この状況下で生き延びるなんて無理だろう。」

地上兵らはヘリからの情報を頼りに動き、銃を構えていた。発砲許可は下りている。加えて射殺許可も。
 しばらくしていると、アレアからヘリが離れ出した。少し余裕が出てきたアレアは辺りを見回してみた。しかし逆に死ぬかもしれない恐怖とどこに行けば良いか分からない不安が彼女を襲った。

「いたぞ。ターゲット視認。」

不運な事に前方にはたまたま移動しようとしていた武装したオーシア兵がいたのだ。だがアレアは兵士に気づいていない。

<A隊からHQ、ターゲットを捉えた。>

<HQ了解。息の根を止めてやれ。>

<了解。>

「女は手を木に当てて、辺りを見回している。この角度ならあたまは難しいが胴なら狙えるかもしれない。」

兵士は他の隊員に伝え、膝をついてホロサイトのレティクルをアレアの胸部の中心に合わせた。
 兵士が引き金に指を掛けて、まさに引こうとした瞬間、アレアは山を更に登ろうと思って足を踏み出していた。しかしボロボロになったサンダルはうまく踏み込めず、滑ってしまい勢いよく転んだ。転んだ瞬間に狙い定めていたオーシア兵が発砲した。アレアは銃撃を受け、弾丸は体勢を崩したアレアの露出した左腕を掠めた。

「運がいい奴め。撃て!撃て!」

その発砲を皮切りに暗闇に息を潜めていたオーシア兵たちが一斉にアレアめがけて発砲した。アレアは倒れ込んだまま頭を必死に地面に擦り付け、恐怖におののき、動けずにいた。逃げようという一心で、下を見た瞬間、踏ん張っていたサンダルがはちきれ、アレアはそのまま斜面を転げ落ちて行ってしまった。どこまでも転げ落ちる。体制を立て直す余裕も無かった。
 気がついた時、アレアは山の中腹辺りを流れる川岸にぐったりと倒れていた。右腕は血まみれだったが骨は折れては無さそうだった。アレアは痛みに耐えて川岸に座り込んだ。
 
もう、誰もいない。あの日一緒に飛行機に乗ってくれたお父様やお母様、それにおじいちゃん。親衛隊の皆んな。それに私に逃げるよう言ってくれたお医者さん。

アレアは絶望していた。小一時間川岸でぐったり落ち込んだのちにアレアは立ち上がり、どこを目指す事なく比較的綺麗に整備されている山道を進んだ。
 ずっと歩いていると、目の前がかすみ始めた。

もう、私はここで死ぬのかもしれない。けど、けど私はあの島に帰りたい。でもそう思う反面楽になりたい。

この2つの思惑がアレアの心を支配した。アレアは死ぬに死ねれず、時折そんな自分に嫌気がさした。下唇を強く噛み締めた。
 そんな時遠くで銃声がした。アレアはそれを聴いた瞬間、恐怖のあまり背筋が凍りつくような感じに襲われた。アレアは逃げるように再び歩き始めた。

今の自分は本来の自分の立場をわきまえて行動出来ているだろうか。

自暴自棄になっていると、ふとひらけた場所に出た。朝日が昇り始めて薄明るくなり始めた空の下、アレアは見つけた。山奥にたたずむ、ひっそりとした一軒家がそこにはあった。



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