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20章 かつてのように
今後の話
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「分かりましたか。」
「はい。」
「全く、何を考えているのか。」
そうオユキを掴んでいた手を離して、メイがオユキから離れていく。まったく、ひどい目にあったものだとばかりにオユキは簡単に乱れた裾を整えて、返事をする。
「いえ、その、トモエさんに見ていただこうかと。」
「ですから。いえ、もういいです。」
「そうですか、では。」
「オユキ様。」
ではとばかりに、いそいそと移動しようとするオユキの肩を掴んで、シェリアが逃がさぬとばかりに力を籠める。どうやら、どうにもならないようである。
「分かりました。諦めましょう。」
「ええ、それが良いかと。」
そして、メイが改めて己に与えられた椅子に座り、オユキの姿を一瞥したうえで話を始める。
「それで、ええと、何処まで話したかしら。」
「そう言えば、何処まででしたか。確か、アナさんやセシリアさん、アドリアーナさんに何が似合うかと。」
「そう言えば、そうでしたね。」
さて、改めて少女たちの方を見れば、何やら委縮している様子。オユキは一先ず、軽く手を叩いて少女たちに話を続ける。思えば、こうしたことを行っていたのは、いつ以来か。
「さて、皆さん。」
注意を引いて、改めて。
「何か、気になった物はありますか。」
そうオユキが話しかければ、何処かぎこちなくではあるが、各々が手に持った物を示して見せる。アナは木でできた、何やら複雑な意匠を持った腕輪。セシリアは金属でできているのだろう首飾り。そして、アドリアーナが金属製の髪飾り。各々が、それぞれに気になった物を手に取り、こちらに掲げて見せている。ただ、まぁ、相変わらず。
「成程。」
「そう、ですわね。」
ただ、どれにしてもやはり似合いそうもないというのが、まぁ、何とも。
「そうですね、皆さん、一度それを身に着けてこちらへ。」
さて、シェリアに言われて各々が身に着けてぞろぞろと鏡の前に来るものだ。そして、まぁ、なんと言えばいいのか。思っていたのと違うのだろう。少々歪みのある鏡ではあるのだが、そこに映った己を見て何やら落胆したりしている様子。一先ずそちらの事はシェリアに任せておいて、オユキはするりとメイの側に。そこに用意されている席に座り、メイに断って飲み物に手を付ける。どうやらここに用意されている飲み物は、オユキの好みに合わせているものであるらしい。コーヒーを口に運び、そして改めて声を掛ける。
「そう言えば、如何でしょうか。」
「何がですの。」
「何がよ。」
さて、座っているのはアイリスもであるが、こちらはまぁ、民族衣装らしきものを身に着けている。どうやら大陸からの流れを受けているようで、なにやら複雑極まりない意匠を施してある。尻尾にしてもそろりと背面から出ており、そちらを隠す布にしても何とも言えない物となっている。
「いえ、新しい拠点ですが。」
「ああ、その事ですか。今はイマノルとクララに任せています。」
「そうなりましたか。」
さて、そうなると色々と動きを作らねばならない事もありそうだと、そうオユキは考える。
土台、無理な話なのだ。この町でだけ、作れるもので。それは。
だとするならば、他に拠点を作らねばならない。多くの者達がそうしているように、オユキとしても。
「では、そちらはお任せしましょうか。恐らく、これまでの勉強を活かして、色々と試したいこともあるでしょうから。」
「そうですわね。まったく、貴女ときたら。」
「何を試そうというのかしら。」
「そうですね、恐らくは、ですが。」
さて、こうして少女たちがあれやこれやと持ってこられるものを身に着けては、キャイキャイとはしゃいでいるのを眺めながら、大人組というには少女もいるが、まぁ良しとして。
「一先ず、領主館を作るとして、後はそうですね。」
「どう、なのかしら。」
さて、オユキが口火を切ってみたは良いものの、実際にどうなるかばかりは分からない。
「オユキ。」
「いえ、完成系の想定はあるのですが、過程はどうなのかと言えば。」
「まぁ、そうなりますか。」
メイが、ただそう呟いて口をカップに付ける。
「さて、今後起こりうる予想なのですが。」
そうして、オユキが懸念点を伝えていく。
要は、一体いつあの拠点をイマノルとクララから取り上げて、新しい領主を立てるのか。
他にも当然いくつかの出来事もある。集めた木材をどうするのか、果実をどうするのか、はたまたあちらの拠点にどういった人員を置くのか。実に多くの問題があり、解決のめども立っていない。そして、それらの方針をメイが決めなければならないわけだが、そのメイから頼られているオユキとしては、勿論考えているのだが、どれも決め手に欠ける。
「難しい所ですのね。」
「ええ、そうなんですよね。」
溜息をつきたいのは、オユキも同じ。
「なかなか、難しい所ではありますが、そうですわね。オユキ、やってみませんか。」
「いえ、私はそもそも領地を持つ事は無いでしょうから。」
「そうなのですよね。」
そして、メイが重たいため息をつく。
「オユキは、どうするつもりなのかしら。」
「そうですね。トモエさんにお任せする形になるかと。」
「もう。仕様が無い事。」
メイの溜息に対しては、オユキからもただ苦笑いで応えておく。実際には、メイの想像とは異なるだろう。実際は逆。オユキが帰ろうと、戻ろうと話をして。トモエは、いやまだこちらにと。まぁ、そうなるに違いない。オユキはどうした所で、過去の世界に心残りがある。トモエは、何処まで行ってもトモエだ。過去は過去。今は今と割り切る事だろう。既に互いに対しての優先権は、何度使った物だろうか。それさえも思い出せない。
「仕方がありませんから。」
さて、こうしてのんびりと話していれば、少女たちが何やら意を決したようにシェリアにあれこれと相談し始めている。そちらはそちらで、少年達から何か用意があるものだろうが、シェリアはその辺り理解しているのだろうかとオユキが視線を向ければ、分かっているとばかりに頷かれる。そちらは、シェリアに任せておいて、オユキはオユキの事に集中して。
「どうにも、難しい所ですね。」
「まぁ、そうよね。」
そして、繰り返しての言葉になる。
「他に領地を持たれていない方は、誰がいるのでしょうか。」
「この町に住んでいる者達であれば、そうですわね。」
そして、メイから挙げられた名前は、オユキとしても聞いたことが無い名前ばかりではなく、聞き覚えのある家も。そして、引き受けてくれそうな相手として名前の挙がったものとしては、アルマ男爵家とユーベル子爵家。その前者にしかオユキは聞き覚えが無いのだが。
「アルマ男爵家と言えば、確か。」
「ええ。マリーア公爵第二子息の手伝いを頼んでいる子の家ですわね。」
「ああ、あの子の。」
さて、思い出してみれば、サリエラというあの少女の家が、アルマ男爵家であったはず。
「確か、行商から男爵になった方でしたか。」
「ええ、経歴も十分考慮に値する者でしょう。」
「今後は、あの拠点も交易拠点となっていくでしょうから、それもそうですね。」
それに、行商から出てきたもので有れば、今後巻き起こる問題についても色々と上手くやってくれることであろうと、オユキはそう考える。感覚的な物ではあるが、あの少女にしても両親から実に色々と習っているらしく、ファルコをよく支えている。それだけの教育を施した者達であるのならば、問題はない、はずでもある。
ただし、オユキとしては、いくつか。
「ですが、問題はありませんか。」
「ええ。」
「まぁ、色々と問題は起こるでしょうね。例えば、そうね。」
そういって、アイリスが髪をかき上げて、オユキに視線を送る。
「ひも付き、だとすれば、ね。」
「そうなんですよね。そちらについては、メイ様。」
「無理、ですね。」
そして、メイからはただ首を横に振って答えが返ってくる。
「土台無理な話なのですよね。忠誠を神に誓えというのは。」
「まぁ、確かにこちらではそうなりますか。」
「そう、かしら。オユキなら。」
「いえ、正直無理かと。」
アイリスに尋ねられる物の、オユキからは正直無理無謀の類であるというしかない。
例え、そこにどのような深謀遠慮があろうとも、難しいだろうというのがオユキの結論。要はアルマ男爵と、ファンタズマ子爵家。この両家の間に、現状何もないというのが問題なのだ。それこそ公爵辺りから言われれば、オユキとしても何かを行いはするのだがそれも今のところない。後はファルコからとなるが、そちらからも何も無いのだ。今後オユキの方で行う結婚式とでも呼べばいいのか。それに於いてあやかる者達も出てくるだろうことは分かっている。そこでアルマ男爵家から、何某かを言われそうなものではあるのだが。
「まぁ、そうね。」
「ええ。」
ただ、話しはそこに戻るのだ。アイリスの方でも何やら色々と考えていたらしいが、結局はそのように結論づけられる。
そこに少女たちの華やいだ声が聞こえてきたため、オユキが視線を送れば、何やらシェリアがひそひそと隠し事を話していた様子。そちらはそちらで置いておくとして、オユキ達はオユキ達で話し合いを続ける。色々と、話を詰めなければならない事が残っている。
「オユキ。」
「何でしょうか。」
「なんでしょうか、ではなくて。」
ほうとため息をついて、少女たちの方を見ているとメイから名を呼ばれて、そちらに向きなおる。
「全く、聞いていませんでしたのね。」
「失礼しました。何の事でしょうか。」
「貴女ね。」
こうして集まっていられるのも、今の内。ただ、オユキとしてはその姿を瞳に納めていたいだけではあるのだが、どうにもそうもいかないようだ。
「ですから、貴女にとっても悪い話ではないのですから。」
「いえ、そうは言いましても。」
「では、他にどうするというのです。」
そうして、侃々諤々と話し合いを続ける。他方で少女たちは、あれこれと装飾を持ってきては鏡の前で身に着けて見て、シェリアからダメ出しをされての繰り返し。どうにも、オユキとメイ、それからアイリスが話をしている場所が気になるようだが、今は未だそうしているのが似合いだろうと。そうして微笑ましく見守っていれば、オユキがメイに名を呼ばれる回数が増えていき、しまいには怒鳴り声が響くというものだ。
「はい。」
「全く、何を考えているのか。」
そうオユキを掴んでいた手を離して、メイがオユキから離れていく。まったく、ひどい目にあったものだとばかりにオユキは簡単に乱れた裾を整えて、返事をする。
「いえ、その、トモエさんに見ていただこうかと。」
「ですから。いえ、もういいです。」
「そうですか、では。」
「オユキ様。」
ではとばかりに、いそいそと移動しようとするオユキの肩を掴んで、シェリアが逃がさぬとばかりに力を籠める。どうやら、どうにもならないようである。
「分かりました。諦めましょう。」
「ええ、それが良いかと。」
そして、メイが改めて己に与えられた椅子に座り、オユキの姿を一瞥したうえで話を始める。
「それで、ええと、何処まで話したかしら。」
「そう言えば、何処まででしたか。確か、アナさんやセシリアさん、アドリアーナさんに何が似合うかと。」
「そう言えば、そうでしたね。」
さて、改めて少女たちの方を見れば、何やら委縮している様子。オユキは一先ず、軽く手を叩いて少女たちに話を続ける。思えば、こうしたことを行っていたのは、いつ以来か。
「さて、皆さん。」
注意を引いて、改めて。
「何か、気になった物はありますか。」
そうオユキが話しかければ、何処かぎこちなくではあるが、各々が手に持った物を示して見せる。アナは木でできた、何やら複雑な意匠を持った腕輪。セシリアは金属でできているのだろう首飾り。そして、アドリアーナが金属製の髪飾り。各々が、それぞれに気になった物を手に取り、こちらに掲げて見せている。ただ、まぁ、相変わらず。
「成程。」
「そう、ですわね。」
ただ、どれにしてもやはり似合いそうもないというのが、まぁ、何とも。
「そうですね、皆さん、一度それを身に着けてこちらへ。」
さて、シェリアに言われて各々が身に着けてぞろぞろと鏡の前に来るものだ。そして、まぁ、なんと言えばいいのか。思っていたのと違うのだろう。少々歪みのある鏡ではあるのだが、そこに映った己を見て何やら落胆したりしている様子。一先ずそちらの事はシェリアに任せておいて、オユキはするりとメイの側に。そこに用意されている席に座り、メイに断って飲み物に手を付ける。どうやらここに用意されている飲み物は、オユキの好みに合わせているものであるらしい。コーヒーを口に運び、そして改めて声を掛ける。
「そう言えば、如何でしょうか。」
「何がですの。」
「何がよ。」
さて、座っているのはアイリスもであるが、こちらはまぁ、民族衣装らしきものを身に着けている。どうやら大陸からの流れを受けているようで、なにやら複雑極まりない意匠を施してある。尻尾にしてもそろりと背面から出ており、そちらを隠す布にしても何とも言えない物となっている。
「いえ、新しい拠点ですが。」
「ああ、その事ですか。今はイマノルとクララに任せています。」
「そうなりましたか。」
さて、そうなると色々と動きを作らねばならない事もありそうだと、そうオユキは考える。
土台、無理な話なのだ。この町でだけ、作れるもので。それは。
だとするならば、他に拠点を作らねばならない。多くの者達がそうしているように、オユキとしても。
「では、そちらはお任せしましょうか。恐らく、これまでの勉強を活かして、色々と試したいこともあるでしょうから。」
「そうですわね。まったく、貴女ときたら。」
「何を試そうというのかしら。」
「そうですね、恐らくは、ですが。」
さて、こうして少女たちがあれやこれやと持ってこられるものを身に着けては、キャイキャイとはしゃいでいるのを眺めながら、大人組というには少女もいるが、まぁ良しとして。
「一先ず、領主館を作るとして、後はそうですね。」
「どう、なのかしら。」
さて、オユキが口火を切ってみたは良いものの、実際にどうなるかばかりは分からない。
「オユキ。」
「いえ、完成系の想定はあるのですが、過程はどうなのかと言えば。」
「まぁ、そうなりますか。」
メイが、ただそう呟いて口をカップに付ける。
「さて、今後起こりうる予想なのですが。」
そうして、オユキが懸念点を伝えていく。
要は、一体いつあの拠点をイマノルとクララから取り上げて、新しい領主を立てるのか。
他にも当然いくつかの出来事もある。集めた木材をどうするのか、果実をどうするのか、はたまたあちらの拠点にどういった人員を置くのか。実に多くの問題があり、解決のめども立っていない。そして、それらの方針をメイが決めなければならないわけだが、そのメイから頼られているオユキとしては、勿論考えているのだが、どれも決め手に欠ける。
「難しい所ですのね。」
「ええ、そうなんですよね。」
溜息をつきたいのは、オユキも同じ。
「なかなか、難しい所ではありますが、そうですわね。オユキ、やってみませんか。」
「いえ、私はそもそも領地を持つ事は無いでしょうから。」
「そうなのですよね。」
そして、メイが重たいため息をつく。
「オユキは、どうするつもりなのかしら。」
「そうですね。トモエさんにお任せする形になるかと。」
「もう。仕様が無い事。」
メイの溜息に対しては、オユキからもただ苦笑いで応えておく。実際には、メイの想像とは異なるだろう。実際は逆。オユキが帰ろうと、戻ろうと話をして。トモエは、いやまだこちらにと。まぁ、そうなるに違いない。オユキはどうした所で、過去の世界に心残りがある。トモエは、何処まで行ってもトモエだ。過去は過去。今は今と割り切る事だろう。既に互いに対しての優先権は、何度使った物だろうか。それさえも思い出せない。
「仕方がありませんから。」
さて、こうしてのんびりと話していれば、少女たちが何やら意を決したようにシェリアにあれこれと相談し始めている。そちらはそちらで、少年達から何か用意があるものだろうが、シェリアはその辺り理解しているのだろうかとオユキが視線を向ければ、分かっているとばかりに頷かれる。そちらは、シェリアに任せておいて、オユキはオユキの事に集中して。
「どうにも、難しい所ですね。」
「まぁ、そうよね。」
そして、繰り返しての言葉になる。
「他に領地を持たれていない方は、誰がいるのでしょうか。」
「この町に住んでいる者達であれば、そうですわね。」
そして、メイから挙げられた名前は、オユキとしても聞いたことが無い名前ばかりではなく、聞き覚えのある家も。そして、引き受けてくれそうな相手として名前の挙がったものとしては、アルマ男爵家とユーベル子爵家。その前者にしかオユキは聞き覚えが無いのだが。
「アルマ男爵家と言えば、確か。」
「ええ。マリーア公爵第二子息の手伝いを頼んでいる子の家ですわね。」
「ああ、あの子の。」
さて、思い出してみれば、サリエラというあの少女の家が、アルマ男爵家であったはず。
「確か、行商から男爵になった方でしたか。」
「ええ、経歴も十分考慮に値する者でしょう。」
「今後は、あの拠点も交易拠点となっていくでしょうから、それもそうですね。」
それに、行商から出てきたもので有れば、今後巻き起こる問題についても色々と上手くやってくれることであろうと、オユキはそう考える。感覚的な物ではあるが、あの少女にしても両親から実に色々と習っているらしく、ファルコをよく支えている。それだけの教育を施した者達であるのならば、問題はない、はずでもある。
ただし、オユキとしては、いくつか。
「ですが、問題はありませんか。」
「ええ。」
「まぁ、色々と問題は起こるでしょうね。例えば、そうね。」
そういって、アイリスが髪をかき上げて、オユキに視線を送る。
「ひも付き、だとすれば、ね。」
「そうなんですよね。そちらについては、メイ様。」
「無理、ですね。」
そして、メイからはただ首を横に振って答えが返ってくる。
「土台無理な話なのですよね。忠誠を神に誓えというのは。」
「まぁ、確かにこちらではそうなりますか。」
「そう、かしら。オユキなら。」
「いえ、正直無理かと。」
アイリスに尋ねられる物の、オユキからは正直無理無謀の類であるというしかない。
例え、そこにどのような深謀遠慮があろうとも、難しいだろうというのがオユキの結論。要はアルマ男爵と、ファンタズマ子爵家。この両家の間に、現状何もないというのが問題なのだ。それこそ公爵辺りから言われれば、オユキとしても何かを行いはするのだがそれも今のところない。後はファルコからとなるが、そちらからも何も無いのだ。今後オユキの方で行う結婚式とでも呼べばいいのか。それに於いてあやかる者達も出てくるだろうことは分かっている。そこでアルマ男爵家から、何某かを言われそうなものではあるのだが。
「まぁ、そうね。」
「ええ。」
ただ、話しはそこに戻るのだ。アイリスの方でも何やら色々と考えていたらしいが、結局はそのように結論づけられる。
そこに少女たちの華やいだ声が聞こえてきたため、オユキが視線を送れば、何やらシェリアがひそひそと隠し事を話していた様子。そちらはそちらで置いておくとして、オユキ達はオユキ達で話し合いを続ける。色々と、話を詰めなければならない事が残っている。
「オユキ。」
「何でしょうか。」
「なんでしょうか、ではなくて。」
ほうとため息をついて、少女たちの方を見ているとメイから名を呼ばれて、そちらに向きなおる。
「全く、聞いていませんでしたのね。」
「失礼しました。何の事でしょうか。」
「貴女ね。」
こうして集まっていられるのも、今の内。ただ、オユキとしてはその姿を瞳に納めていたいだけではあるのだが、どうにもそうもいかないようだ。
「ですから、貴女にとっても悪い話ではないのですから。」
「いえ、そうは言いましても。」
「では、他にどうするというのです。」
そうして、侃々諤々と話し合いを続ける。他方で少女たちは、あれこれと装飾を持ってきては鏡の前で身に着けて見て、シェリアからダメ出しをされての繰り返し。どうにも、オユキとメイ、それからアイリスが話をしている場所が気になるようだが、今は未だそうしているのが似合いだろうと。そうして微笑ましく見守っていれば、オユキがメイに名を呼ばれる回数が増えていき、しまいには怒鳴り声が響くというものだ。
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