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37章 新年に向けて
そもそもが
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「こちらの衣装に合わせるつもりであったことは、前回の話し合いの事待ってご理解いただけていたものだとばかり」
「それにしても、此処まで知識があるのなら」
言われるがままに、かつての世界の婚礼衣装。和装に加えて、洋装の知識までをあれこれと話してみたところ。何やら随分と周囲からの視線が、オユキに対して何とも言えぬ物に。
それぞれにしてみれば、確かにここまで盛装に対しての知識をオユキが持っているのなら何故それが常の事に生かされないのかと。そうしたことを考えざるを得ない者たちでもある。オユキにしてみれば、知っていることと行える事は全く意味が違うのだとそう返すしか無いものなのだが。加えて、オユキにしてみればもとより性別が異なっているのだとそうした言い訳というのが真っ先に口を出てくる。幸い、この場にはトモエがいないこともあり、男性の礼装に関する知識があるのに生前も変わることが無かったという至極真っ当な言葉をこの場でかけることが出来る物はいない。
「こうした衣装、特にハレの日、いえ、いい言葉が思い浮かびませんが、特別な日に着るものと言えばいいのでしょうか」
「確かに、特別な衣装という物は文化を色濃く反映する物ではありますか」
「私は、そのように」
既に用意のある衣装、一応は異邦に慮る形でと用意され対象というのが、尽くオユキにしてみれば論外というしか無いものであった。それが、今回の衣装合わせで浮き彫りに。仮縫いとはいえ、ある程度は作成の進んでいた衣装は、この後どうなるのであろうか等とオユキは考えながらも、今はクララと揃って公爵夫人に茶席に招待をされて腰を下ろしている処。
クララに関しては、オユキが褒めたこともあるのだろう。また、色味としても今回の縁という物が分かり易い色合いでもあるからと、少なくとも生地の色に関しては決着を見た。薄く光に当たったところが赤みを帯びて輝く髪を持つクララ。その髪色にも、薄桃色の衣装というのは確かによく似合っているだろう。形状に関しては、いよいよ伝来のとでも言えばいいのだろうか、一先ずよくある形とされている物が用意されていたらしい。こちらではよくあると言えばまた語弊はあるのかもしれないが、こちらの世界では一般的なクララにしてみればそちらも良く似合っているようには見えた。
だが、オユキが良しとしたところで公爵夫人は勿論の事、クララにしても良しとできるようなものではなかったと、要はそういう話。
「それにしても、オユキは知識だけは持っていますのね」
「その、知識だけという評価に対しては、流石に少々モノ申したいところもあるのですが」
「そういわれるだけの現状を得ているのだと、ラスト子爵子女にすら言われるほどなのだと理解すると良いでしょう」
「クララさんに、劣る、ですか」
改めて、そのように声をかけられて。オユキは、いよいよクララに視線を向けてみる。確かに、騎士としての振る舞いとでも言えばいいのだろうか。以前からよく見た振る舞い、オユキとしても少々硬いと感じる動きは既に一応は新しく学んだらしきことで覆われている。はっきりと言ってしまえば、彼女の妹、きちんと己の妹だからと侮る事無く習ったのだろうと分かるほどには、リュディヴィエーヌによく似ている。寧ろ、此処までの鍛錬の成果で、他者の動きを模倣することに対して慣れているのだと、そうした振る舞いが見て取れる。
では、そうした部分を踏まえた上で。子爵家の女当主でもあったエステールから色々と習ったうえで、セツナという氷の乙女の長と呼ばれる相手にあれこれと折に触れては言われている己はどうであろうかと振り返って。
「オユキも、エステールだけではなく、よく習っているのでしょう。少しは見られるようになってはいますが」
「少し、ですか」
「先ほども話しましたが、婚礼の儀に正式に、王家が行うものに正式に参加をするとなると、とてもではありませんが貴女方は二人ともとてもではありませんが」
そして、公爵夫人が改めてため息を一つ。
「それと、オユキ。忘れているのかもしれませんが、忘れようとしているのかもしれませんが、婚礼の儀よりも先に、貴女は」
「ええと、何か、予定がありましたか」
公爵夫人に声をかけられるものだが、さていよいよ心当たりが無いとオユキが首をかしげて見せれば。
「やはり、忘れていますか」
そして、さらに重たい溜息が。
「貴女のデビュタントが、あるでしょう」
「そういえば、そのような事もありましたか。エスコート役は、レジス候にお願いさせて頂くことになっていたかと思いますが」
「思いますが、ではありません。オユキから、改めてレジス侯爵に手紙を出しておくように」
「それは、確かに必要になりますか。その、それに関しては」
「私を経由して、となるでしょう、どうしたところで。これで、ラスト子爵子女が十分であれば、そちらに頼めたのですが」
「私は、書状の運搬くらいであれば」
「騎士として行うものとは、全く異なるのですが、さて、貴女に本当に務まるのかしら」
何やら、凄みのある笑顔を公爵夫人が浮かべてクララを見遣れば、こちらにしても綺麗に言葉を飲み込んでいる。そも、理解していればその様な事、口の端に上るまでも無いだろうと、公爵夫人がそう示してしまえば生憎と今茶会の席についているのはそれが分からぬ二人ばかり。
「さて、話は変わりますが、いえ、全体としてみれば同じ範囲ではあるのですが」
「はて、何か他に確認すべきことが。いえ、新年祭に関しては確かに記憶からいなくなっていましたが」
「それに関しては、後でエステールに、いえ、彼女にしても少し時期が離れていますか、シェリアにデビュタントの流れを確認したうえで、そこで貴女は別で席を誂た上で座って挨拶を受けるのだとそうした認識を」
「まさにお飾りと、そうなりそうですね。であるならば、衣装はやはり」
「そちらは今戦と武技の教会とやり取りを行いながら、用意を。当日にはやはりすべての功績を身に付ける必要がありますから。いえ、そちらも後にしておき来ましょう」
書面でも十分、というよりも、そちらの方が互いに何かと良い事もあるだろう。
「氷の乙女、でしたか。そちらは、貴女の婚姻で」
「その事、ですか」
セツナが、オユキを幼子と呼んでいるのは、屋敷に務める者たちであれば当然耳にしている。さらには、種族の長としてと、セツナが語るのも当然のように。その伴侶たるクレドに関しては、色々と分からぬことも多いからとおいておかれている。満月の夜には姿が変わる。セツナの説明では、確かそのような話であったのだが、そもそもオユキの、トモエの認識できている範囲では、こちらの世界では常に満月なのだ。
それこそ、せいぜいが月の数が人によって、見える数が違うらしいと、その程度。
互いにそのように見えていない以上、やはり誰かに聞いたところでという物でもある。一度戯れに、それこそ直接名をあやかっている初代マリーア公爵その人であるミリアムに尋ねてみたこともある。そちらからは、何かを長く説明されたのだとそれが分かる程度であり、そこから先への理解が進む事は無かった。要は、全くもって足りていないのだとそれをただ示されるだけの形を得て。
「その、私としても、こう、どういえばいいのでしょうか」
トモエにからかわれる、そうしたことを考えてのことでは無いのだが。実のところ、オユキにとってセツナというのは己の年長だと強く感じてしまうのだ。はっきり言ってしまえば、これまでオユキの周りにいなかった親類縁者。それこそ、シグルドの呼び方をクレドが咎めたがために口にこそ出していないのだが、祖母が己にいたとしたのなら、このような気分になるのであろうかとその様に考えるのだ。
だからこそ、こうして公爵夫人に尋ねられていることは分かっているのだが。
「私としては、是非ともと。ですが、その、静寂をどちらかといえば、好む方のようですから」
「と言う事は、オユキ、貴女、尋ねてはいないのですね」
「その、申し訳ながら」
トモエとオユキの事を、セツナが祝ってくれるのならば。セツナとクレドが祝ってくれるのであれば、これほどうれしい事は早々無いだろうとそんな事を考えてしまうのだ。
しかして、どうであろうかと。
己のそうした感情の為に、間違いなく苦手だろうあの二人を、クレドが苦手としていることを頼んで、セツナがそれを受け入れてくれるのかと言われればと言うものだ。
「デビュタントは無理でしょうが、婚姻の儀であれば」
「その、この度の事は」
「いえ、確かに先ほど私がそういったのでしたか」
「一応は、その、始まりの町で行うつもりの物には」
儀式として、王城を使う訳では無いのだが、王家が、新年をもって新たに玉座に就く今は王太子が参加する儀式。厳かな物とすることもできるには違いないのだが、今回はどうやら広くと言う事であるらしい。それこそ、どういった方法化までは分からないのだが、間違いなく王都から参加を望む者たちまでもが、神殿へと向かう事になるだろう。そして、式への参加を望む者たちだけでなく、そこからの親類縁者というのも間違いなく顔を並べていくことだろう。
そして、そのようなよく知らぬ者たちの中へ、群衆に混ざってくれとまでは流石にオユキも望まず。しかし、間違いなく長くなる儀式へと参加をしてくれと頼んだのならば、用意される席はやはりオユキの、巫女の招いた客としての席になる。そちらには、間違いなくその時には前王夫妻などが座るには違いない。
「クレリー公爵をはじめ、今度の物はやはり少し難しい事になりそうですね」
「そういえば、クレリー公爵令嬢いえ、クレリー公も、でしたか」
「ええ。あちらはあちらでそうした教育は間違いなく受けてはいるのですが、何分式が近くなるまで」
変わらぬ日々の忙しさ、突然に継ぐこととなった公爵家の家督。そして、追い落としたからこそ、処断された者たちが多いからこそ突然に増えた仕事を慣れ等全く無い者たちを主体として、慣れのあるものたちにしても最低限の助言しかできぬような状況で行わなければならないのだ。
「オユキ、一度そちらには」
「ご迷惑では、無いでしょうか」
「それは尋ねてみて、そこで返答がなされる物でしょう。それと、クララ。いえ、ラスト子爵家令嬢。あなたの妹も当日には我が孫の相手として参加するのです。よもや、そこで」
「それにしても、此処まで知識があるのなら」
言われるがままに、かつての世界の婚礼衣装。和装に加えて、洋装の知識までをあれこれと話してみたところ。何やら随分と周囲からの視線が、オユキに対して何とも言えぬ物に。
それぞれにしてみれば、確かにここまで盛装に対しての知識をオユキが持っているのなら何故それが常の事に生かされないのかと。そうしたことを考えざるを得ない者たちでもある。オユキにしてみれば、知っていることと行える事は全く意味が違うのだとそう返すしか無いものなのだが。加えて、オユキにしてみればもとより性別が異なっているのだとそうした言い訳というのが真っ先に口を出てくる。幸い、この場にはトモエがいないこともあり、男性の礼装に関する知識があるのに生前も変わることが無かったという至極真っ当な言葉をこの場でかけることが出来る物はいない。
「こうした衣装、特にハレの日、いえ、いい言葉が思い浮かびませんが、特別な日に着るものと言えばいいのでしょうか」
「確かに、特別な衣装という物は文化を色濃く反映する物ではありますか」
「私は、そのように」
既に用意のある衣装、一応は異邦に慮る形でと用意され対象というのが、尽くオユキにしてみれば論外というしか無いものであった。それが、今回の衣装合わせで浮き彫りに。仮縫いとはいえ、ある程度は作成の進んでいた衣装は、この後どうなるのであろうか等とオユキは考えながらも、今はクララと揃って公爵夫人に茶席に招待をされて腰を下ろしている処。
クララに関しては、オユキが褒めたこともあるのだろう。また、色味としても今回の縁という物が分かり易い色合いでもあるからと、少なくとも生地の色に関しては決着を見た。薄く光に当たったところが赤みを帯びて輝く髪を持つクララ。その髪色にも、薄桃色の衣装というのは確かによく似合っているだろう。形状に関しては、いよいよ伝来のとでも言えばいいのだろうか、一先ずよくある形とされている物が用意されていたらしい。こちらではよくあると言えばまた語弊はあるのかもしれないが、こちらの世界では一般的なクララにしてみればそちらも良く似合っているようには見えた。
だが、オユキが良しとしたところで公爵夫人は勿論の事、クララにしても良しとできるようなものではなかったと、要はそういう話。
「それにしても、オユキは知識だけは持っていますのね」
「その、知識だけという評価に対しては、流石に少々モノ申したいところもあるのですが」
「そういわれるだけの現状を得ているのだと、ラスト子爵子女にすら言われるほどなのだと理解すると良いでしょう」
「クララさんに、劣る、ですか」
改めて、そのように声をかけられて。オユキは、いよいよクララに視線を向けてみる。確かに、騎士としての振る舞いとでも言えばいいのだろうか。以前からよく見た振る舞い、オユキとしても少々硬いと感じる動きは既に一応は新しく学んだらしきことで覆われている。はっきりと言ってしまえば、彼女の妹、きちんと己の妹だからと侮る事無く習ったのだろうと分かるほどには、リュディヴィエーヌによく似ている。寧ろ、此処までの鍛錬の成果で、他者の動きを模倣することに対して慣れているのだと、そうした振る舞いが見て取れる。
では、そうした部分を踏まえた上で。子爵家の女当主でもあったエステールから色々と習ったうえで、セツナという氷の乙女の長と呼ばれる相手にあれこれと折に触れては言われている己はどうであろうかと振り返って。
「オユキも、エステールだけではなく、よく習っているのでしょう。少しは見られるようになってはいますが」
「少し、ですか」
「先ほども話しましたが、婚礼の儀に正式に、王家が行うものに正式に参加をするとなると、とてもではありませんが貴女方は二人ともとてもではありませんが」
そして、公爵夫人が改めてため息を一つ。
「それと、オユキ。忘れているのかもしれませんが、忘れようとしているのかもしれませんが、婚礼の儀よりも先に、貴女は」
「ええと、何か、予定がありましたか」
公爵夫人に声をかけられるものだが、さていよいよ心当たりが無いとオユキが首をかしげて見せれば。
「やはり、忘れていますか」
そして、さらに重たい溜息が。
「貴女のデビュタントが、あるでしょう」
「そういえば、そのような事もありましたか。エスコート役は、レジス候にお願いさせて頂くことになっていたかと思いますが」
「思いますが、ではありません。オユキから、改めてレジス侯爵に手紙を出しておくように」
「それは、確かに必要になりますか。その、それに関しては」
「私を経由して、となるでしょう、どうしたところで。これで、ラスト子爵子女が十分であれば、そちらに頼めたのですが」
「私は、書状の運搬くらいであれば」
「騎士として行うものとは、全く異なるのですが、さて、貴女に本当に務まるのかしら」
何やら、凄みのある笑顔を公爵夫人が浮かべてクララを見遣れば、こちらにしても綺麗に言葉を飲み込んでいる。そも、理解していればその様な事、口の端に上るまでも無いだろうと、公爵夫人がそう示してしまえば生憎と今茶会の席についているのはそれが分からぬ二人ばかり。
「さて、話は変わりますが、いえ、全体としてみれば同じ範囲ではあるのですが」
「はて、何か他に確認すべきことが。いえ、新年祭に関しては確かに記憶からいなくなっていましたが」
「それに関しては、後でエステールに、いえ、彼女にしても少し時期が離れていますか、シェリアにデビュタントの流れを確認したうえで、そこで貴女は別で席を誂た上で座って挨拶を受けるのだとそうした認識を」
「まさにお飾りと、そうなりそうですね。であるならば、衣装はやはり」
「そちらは今戦と武技の教会とやり取りを行いながら、用意を。当日にはやはりすべての功績を身に付ける必要がありますから。いえ、そちらも後にしておき来ましょう」
書面でも十分、というよりも、そちらの方が互いに何かと良い事もあるだろう。
「氷の乙女、でしたか。そちらは、貴女の婚姻で」
「その事、ですか」
セツナが、オユキを幼子と呼んでいるのは、屋敷に務める者たちであれば当然耳にしている。さらには、種族の長としてと、セツナが語るのも当然のように。その伴侶たるクレドに関しては、色々と分からぬことも多いからとおいておかれている。満月の夜には姿が変わる。セツナの説明では、確かそのような話であったのだが、そもそもオユキの、トモエの認識できている範囲では、こちらの世界では常に満月なのだ。
それこそ、せいぜいが月の数が人によって、見える数が違うらしいと、その程度。
互いにそのように見えていない以上、やはり誰かに聞いたところでという物でもある。一度戯れに、それこそ直接名をあやかっている初代マリーア公爵その人であるミリアムに尋ねてみたこともある。そちらからは、何かを長く説明されたのだとそれが分かる程度であり、そこから先への理解が進む事は無かった。要は、全くもって足りていないのだとそれをただ示されるだけの形を得て。
「その、私としても、こう、どういえばいいのでしょうか」
トモエにからかわれる、そうしたことを考えてのことでは無いのだが。実のところ、オユキにとってセツナというのは己の年長だと強く感じてしまうのだ。はっきり言ってしまえば、これまでオユキの周りにいなかった親類縁者。それこそ、シグルドの呼び方をクレドが咎めたがために口にこそ出していないのだが、祖母が己にいたとしたのなら、このような気分になるのであろうかとその様に考えるのだ。
だからこそ、こうして公爵夫人に尋ねられていることは分かっているのだが。
「私としては、是非ともと。ですが、その、静寂をどちらかといえば、好む方のようですから」
「と言う事は、オユキ、貴女、尋ねてはいないのですね」
「その、申し訳ながら」
トモエとオユキの事を、セツナが祝ってくれるのならば。セツナとクレドが祝ってくれるのであれば、これほどうれしい事は早々無いだろうとそんな事を考えてしまうのだ。
しかして、どうであろうかと。
己のそうした感情の為に、間違いなく苦手だろうあの二人を、クレドが苦手としていることを頼んで、セツナがそれを受け入れてくれるのかと言われればと言うものだ。
「デビュタントは無理でしょうが、婚姻の儀であれば」
「その、この度の事は」
「いえ、確かに先ほど私がそういったのでしたか」
「一応は、その、始まりの町で行うつもりの物には」
儀式として、王城を使う訳では無いのだが、王家が、新年をもって新たに玉座に就く今は王太子が参加する儀式。厳かな物とすることもできるには違いないのだが、今回はどうやら広くと言う事であるらしい。それこそ、どういった方法化までは分からないのだが、間違いなく王都から参加を望む者たちまでもが、神殿へと向かう事になるだろう。そして、式への参加を望む者たちだけでなく、そこからの親類縁者というのも間違いなく顔を並べていくことだろう。
そして、そのようなよく知らぬ者たちの中へ、群衆に混ざってくれとまでは流石にオユキも望まず。しかし、間違いなく長くなる儀式へと参加をしてくれと頼んだのならば、用意される席はやはりオユキの、巫女の招いた客としての席になる。そちらには、間違いなくその時には前王夫妻などが座るには違いない。
「クレリー公爵をはじめ、今度の物はやはり少し難しい事になりそうですね」
「そういえば、クレリー公爵令嬢いえ、クレリー公も、でしたか」
「ええ。あちらはあちらでそうした教育は間違いなく受けてはいるのですが、何分式が近くなるまで」
変わらぬ日々の忙しさ、突然に継ぐこととなった公爵家の家督。そして、追い落としたからこそ、処断された者たちが多いからこそ突然に増えた仕事を慣れ等全く無い者たちを主体として、慣れのあるものたちにしても最低限の助言しかできぬような状況で行わなければならないのだ。
「オユキ、一度そちらには」
「ご迷惑では、無いでしょうか」
「それは尋ねてみて、そこで返答がなされる物でしょう。それと、クララ。いえ、ラスト子爵家令嬢。あなたの妹も当日には我が孫の相手として参加するのです。よもや、そこで」
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