キミと僕との7日間

五味

文字の大きさ
1 / 66

1-1

しおりを挟む
最初は、何となく、学校から帰ってきたときに、なんだか疲れたな、そんなことを考えた。
家族の仲はいいし、学校も楽しい。
友達と遊ぶ日もあれば、こうして一人で帰る日もある。
本当に、そんなよくある子供時代。
それでも、ある日、小学校の5年に上がった春。家に帰ってきたら、なんだかとても疲れたと、そう感じてしまった。
両親は、どちらも働いていて、家に帰ると、いつもガランとした、そんな中にいたからだろうか。
そこで、突然、本当に子供らしい脈絡のなさで、祖父母の家に行こう。
そんなことを考えてしまった。

幸い、それなりに裕福な家で、頼めば買ってもらえるものと、自分で使うためとある程度のお小遣いを毎日貰っていたこともあり、それなりの額は財布にあった。
珍しい事かはわからないが、祖父母の家の住所も覚えている。
最寄駅からは遠く、駅からかなりあるかなければたどり着かないだろうし、バスが走っているのも両親に連れられて行ったときに、碌に見た覚えもない。
それでも、そこに行こう。そんなことを考えた。
決めたが早い、明日から学校はしばらく休み、その思い付きはとてもいいもののように思えた。
この四月末の連休は両親はどちらも仕事が普通にあり、土日くらいしか休みがないと聞いていた。
そのため家族で何処かに行く予定もない。祖父母のところに行く予定もないのだ。
持っている携帯を使って、祖父母の住所を入力し道順を改めて確認し、周辺の地図もまとめて画像をそのまま保存していく。
電車で片道2時間以上はかかると出ているが、その時の僕にとっては、むしろ都合がよかった。
のんびりできるなと、そんなことを考えるほどに。

翌朝、両親と一緒に朝ご飯を食べて、仕事に出ていく二人を見送り、鞄に着替えを詰めて、さっそく家をでる。
疲れたから行きたいと、そんなことを考えていたはずなのに、気が付けば、すっかり冒険気分で楽しくなり始めた。
何処かわくわくした気持ちで、駅に向かい、一人で切符を買って、電車を待つ。
連休の始まりだからか、駅にはたくさんの人がいたけれど、僕の乗る電車が来るホームは、人がまばらで、連休、駅や駅に来るまでに感じた忙しさは何処にもない。
そうして、やってきた電車に乗り込めば、流れる景色をただぼんやりと見て、過ごす。
3両しかない電車に、数人の人が乗っているだけ。
時間帯もあるのだろうが、ほとんど乗り降りもない。ガランとした電車の中、ただぼんやりと窓の外を見る。
立ち並ぶビルやマンション、そういった物が減れば、工場が、それも過ぎれば緑が広がっていく。
それをみて、ああ、目的地が近くなってきた、そんなことを考え、何となく感じていた疲れは、何処かわくわくとした、そんなものに置き換わっていった。

ぼんやりと電車の窓越しの景色を楽しんでいれば、次は目的の駅、終点ではないから、乗り過ごしだけには気を付けて、アナウンスが聞こえれば、降りる準備をする。
持ってきたのは、少し大きなスポーツバッグ。中には着替えと、宿題、筆記用具、念のために携帯を充電するためのモバイルバッテリー、それだけを放り込んでいる。
そんな、身軽な、荷物は重いけれど、いつも持ち歩く教科書やノートが詰め込まれた鞄よりも軽く感じるそれを肩から下げて、止まった電車から降りる。
電車を乗った駅に比べれば、あまりにも小さい駅舎。他に誰もいないし、古めかしいプラスチックの独特な単色が目に優しくない椅子が、壁際にいくつか引っ付いている。
線路にも、草が生えているし、その脇に至っては、もっとだ。
誰もいない改札に、ぽつんと置かれた切符入れと書かれた箱に、ここまで持ってきた切符を放り込み、待合に移るが、そこも違いといえば囲われていて、先ほどまでいたホームに比べれば、薄暗い、その程度でしかない。
そこから出て、周囲を見れば、駅の前で車が一回りできるようになっていて、脇には駐車場もある。
タクシーが止まっているわけもなく。舗装された道は続いているが、これもどこまでかはわからない。
駅の脇には自動販売機があり、そこで水を一本だけ買って、荷物を改めて肩に担ぎなおして歩き出す。

少し駅から離れれば、大きく間隔をあけて家が何軒かあり、そこを超えてしまえば、舗装された道は、遠くに見える山に向かってだけ伸び、脇に逸れる道は、そのどれもが砂の色を晒している。
その道を、急ぐでもなくのんびりとスマホを片手に歩く。
保存した地図だとここから歩いて3時間そんな数字が見えるが、特に急ぐわけでもない、子供の足ならさらにかかるかもしれない。
それでも、時折スマホを見て、それよりも車が通った後だけが残っている道、その脇に流れている、草に隠れる様な水の流れ、何処かから聞こえてくる、住んでいる場所では聞くことが無い音、そういった物に意識を向けながらのんびりと歩く。
四月の末、風は涼しいけれど、日差しは暖かく、暫く歩けば熱く感じるくらいになっていた。
何処からか覚えのある匂い、食事の匂いもしてくるけれど、それでも誰かに合うこともない。
ここに来る前に感じた疲れは、すっかりなくなり、僕はただのんびりと道を歩いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...