キミと僕との7日間

五味

文字の大きさ
13 / 66

2-8

しおりを挟む
すっかり日も沈んだ頃、そろそろ行こうかと着替えを終えて、ギターを担いだ時ぎ、玄関で靴を履こうとしている時に祖父と祖母が見送りに来る。
そして、それぞれに手に持っているものを渡してくる。

「これは。」
「二人でお上がりなさい。」
「分かった。えっと、じーさん。これって。」
「以前見ただろう。天文図鑑だ。お前が必要ないと思って、その子が欲しいと言ったらあげるといい。」
「いいの。」
「置いているだけというのも勿体ないからな。」
「でも、ばーさんが。」
「良いんですよ。古い物ですし、もう久しく開いていませんでしたから。」

そういって笑う祖母は、何処か有無を言わせず持って行けと、そんな迫力を見せている。
昔興味があって買っただろうに、それをどうして簡単に、むしろ強引にでも手放そうとするのか。
僕はよくわからないけれど、とりあえず従う事として、それらを受け取る。
ギターも含めると、今日はなかなかの大荷物になった。

「それじゃ、行ってきます。」
「ああ。」
「体が冷える前に、戻ってらっしゃいね。その子にも風邪をひかないようにと。」
「分かった、伝えとく。じゃ、行ってくるね。」

そういって、僕は玄関を出て、山への道を歩く。
さて、そうは言った物の、彼女は今日も来ているのだろうか。
昨日私有地だと伝えたから、結果を伝えるとは言った物の遠慮してこないかもしれない。
もしくは二度手間を嫌って、別の場所を探しに行ったかもしれない。
それも、山を昇ればわかると、ずれて肩から落ちそうになった、ギターケースをどうにか体を揺らして担ぎなおす。
生憎両手は既に荷物でふさがっていて、どうすることもできない。
連絡先の確認という事もあって、筆記用具迄持ってきているから、なおの事荷物が多い。

彼女がいるから増えた荷物、少しの手間。
そう言った事を考えれば、どうなのだろう、居てほしくないと、そもそも気兼ねなく練習が出来ればと、そんなことも考えていたわけだし、何処か邪魔だなと、そんなことを考えてもおかしくないのだろうけれど、僕は不思議と彼女を歓迎していた。
何故と聞かれればよくわからないが、それでもどこかこうして荷物を抱えて歩くことを楽しんでいる自分がいるし、今日会えることを望んでいる自分もいる。
何より、昨夜にしても祖父が難色を示せば、説得しようかと、そんなことを考えたりもしたのだから。
秘密の場所、そんなものを共有できる初めての相手、そんな嬉しさがあるのだろうか。
そう考えて、のんびりと山を登っていけば、そこには昨日と同じように天体望遠鏡、広げたシート、変わらず制服姿の相手が待っている。
少し開けた山頂で、いくつかの切り株が残された、そんな空間に。
周囲はそこまで背の高くない木々が生えており、辺りを見回しても、他に人など見当たらない。
人の手が入った形跡は、それこそ彼女が持ち込んだものと、残された切り株だけ。
そんな特別な、そう特別な空間に、彼女がこちらのランタンの明りに気が付いていたのか、何処か不安げな面持ちで佇んでいる。
そんな風に表情が分かる距離まで近づいて、ようやく僕は声をかける。

「こんばんは。」
「あ、こんばんは。その、荷物一杯だね。」
「うん、まぁ、色々持たされて。こっち、祖母が一緒に食べなさいって。」

中身がなにかは聞いてもいないし見てもいないが、とりあえずと全部まとめて丸太の上に置いてしまう。

「えっと、それって。」

何処か戸惑うように聞き返されて、伝える順番を間違えたなと、今更に気が付く。

「うん、祖父に聞いたら、別にいいってさ。」
「本当。良かった。他に近い場所だと、此処みたいに開けてる場所がないから。」
「なんか、昔母がキャンプだかピクニックをしたいって言ったみたいで、開いたんだって。」
「そうなんだ。」
「そうらしいよ。僕も昨日知ったばかりだけど。」

一先ず荷物を置いて身軽になり、改めて、祖父母から渡された物を渡そうかと、そんなことを考える前に、筆記用具が目に入り、思い出す。

「あ、でも。」
「えと、やっぱり何か。」
「いや、祖父から、連絡先と名前だけは聞いとくようにって。
 何かあった時に、保護者に連絡しなきゃいけないからって。」
「あ、そうだよね。それくらいはいるよね。ちょっと待ってね。」
「うーん、いいや、これに書いといて。」

聞いてメモを取るのも面倒だし、相手にそのまま渡す。
僕以外の字だとはっきりわかったほうが祖父も良いだろう、そんなことを考えて。
すると相手は、スマートフォンを取り出し、何かを書きつけてから、こちらに返してくる。
それを受け取って、しまいこむと、祖父から渡されたほんと、祖母から渡された物を今度は渡す。

「えっと、これは。」
「祖父から、天文事典と、祖母から多分食べ物。さっきも言ったけど、一緒に食べなさいって。」
「その、悪いなって。」
「事典は、必要ないなら持って帰るよ。」
「安い物じゃないし、貰えるならそれは嬉しいけど、うんまずは見せてもらうだけで。」
「そう。僕も昔見たけど面白かったよ。」

そう告げて、荷物を渡せば、僕は僕でギターを取り出して、早速とばかりに調律を始める。
そんな様子にどこか不思議そうな顔をして、彼女は僕を見る。

「えっと、事典見て、面白かったんだ。」
「うん。」

なんでそんなことを聞くのかな、と、思わず首をかしげながら応えてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...