キミと僕との7日間

五味

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「あのさ。」

どうにも彼女は人が側にいるときは、話していないと落ち着かないたちのようなので、運氏の練習をしている間はと、声をかける。
そうすれば、少し嬉しそうに、直ぐに返事が返ってくる。

「えっと、なにかな。」

ただ、声をかけたはいい物の話す内容を考えておくのを忘れていた。
ついつい黙りそうになるが、それも良くないからと、何も考えずに話す。
僕にしては珍しいのだけど。

「それ、運んでくるの大変そうだけど。」
「うん。まぁ。」

そう言うと彼女は望遠鏡をそっと撫でる。

「重たいし、分解できる場所も限られてるから、かさばるから、うん、大変。」
「遠いの。」
「片道で3時間くらいかな。」

彼女はあっさりそう言うが、望遠鏡以外にも、シートに上着と他にも色々と運んでいるのだ、その労力はかなりの物だろう。

「もっと近いところに、無いの。」
「残念だけど。人が住んでるところって、どうしても明るすぎるから。」
「そうだろうけど。」
「このあたりは、もう少し離れても大丈夫そうだけど、今度はそうなると場所が、ね。」
「僕はそっち側いった事ないからわかんないけど。」
「降りる駅が違うのかな。私が泊まってる場所って、それなりに明るいし、離れたらすぐ山だから。」
「へー。」

行ったこともない、反対側の話をされ、少し楽しくなる。
地図をアプリで確認するときも、あくまで自分が移動する道なりを調べただけで、反対側に何があるのかなんて調べたこともなかった。
ただ、電車はもちろん先まで走っているし、祖父の家に近い路線を選んでいるだけなのだから、他の物だってあるのだろう。分かったところで、興味は止まってしまうのだけれど。

「その、そっちはギターの練習のためだけに。」
「え、違うけど。これはおまけ。」
「あ、そうなんだ。」
「よく来てるし、ここに上ってくるのは、初めてだけど。」
「本当。私は去年、たまたま見つけて。それから長い休みの時に、こうして。」
「ああ、そうなんだ。去年、僕は来てなかったから。」
「じゃ、間が悪かったのかな。」
「どうなんだろう。見つけてしまったから、不安もあっただろうし。」

僕が見つけなければ、気まぐれを起こさなければ、彼女はここで一人で趣味の時間を過ごせたのだろう。
だから、いいのか悪いのか。それは僕だけで判断できるものではない。

「ううん。勝手するよりはいいから。正直私も、この先に人の家があるなんて思ってなかったし。」
「まぁ、そういうもんかもね。」
「流石に、荷物を持ってさらに歩くのは。」

そういって彼女はちらりと広げているものを見る。

「大変そうだよね。」
「えっと、それは、うん。だからよかった。ここ、安心して使えるようになって。」
「そう、ならよかった。それにしても、どうやって見つけたの、ここ。」
「このあたりって、部活の先輩が昔来たみたいで、その時の活動記録が残ってたの。」
「部活なんだ。」
「趣味だけどね。部員も私だけだし、一応籍だけは入れてくれてる人もいるけど。」
「まぁ、夜にしか活動できないだろうし。」

天体観測。星を見ようと、そう思えばどうしたって日が沈まなければいけない。
日が出ている間、それこそ日中は太陽以外に観測できるものなどないだろう。
冬の短い期間なら、もしかしたら活動時間中に少しくらいは時間を得られるかもしれないが。

「そう、なんだよね。」

そうして彼女は少し悲しげに笑う。

「一応、過去の記録を見たり、天文学の勉強したり、それこそ海外の有名な天文台が公開している資料を見たり、出来る事はあるけど、やっぱり花形というか、みんながやりたいのは自分での観測だから。」
「合宿とか、学校に泊まり込みで、少しくらいならできそうだけど。」
「都市部は夜空が明るすぎるから。」
「そっか。」
「あとは、手作りでプラネタリウムを作ったりかな。」

その言葉に、少し興味が出る。

「へ―自分で作れるんだ。」
「簡単だよ、ピンホール式、中に光源を入れて、それを覆う容器に穴をあけるだけだから。」

そう言われてみれば、確かに簡単そうに聞こえる。

「こだわれば、やっぱりそれだけ大変だけど。」
「そうなんだ。」
「うん、星の位置に穴をあけるだけじゃなくて、星座のモチーフになってる図案を入れたりとか。」
「あ、そこまでできるんだ。」
「できるよ。私も何回も作ったし。」

そうして話しながら指を動かし続けていれば、だいぶ滑らかに動くようになってくる。
そう感じはするものの、冷えて硬くなってきているような、そんな感覚も。
一度弦を弾く手を止めて、ポケットに入れた懐炉を握り、温める。

「それは、少し面白そうかも。」
「珍しいね。そっちに興味を持つなんて。」
「そうかな。」
「うん、やっぱりみんな星を見たがるから。」

変わってる。みんな。
その言葉に少し心がささくれ立つ。
向こうにいるときは、それに馴染めるように努力、そう努力をしているけれど、ここではそんな言葉を聞きたくなかった。
そう言った物から離れて、のんびりと、自分の思うままに、祖父母に気を使いはするけど、そう居られるここが僕は好きだったのだから。
最も、それを始めてあった相手に理解しておいてくれ、そう考えるほどに、僕も心は狭くないのだけれど。
初めて会った、碌に会話をしたこともない相手、なら、こういうのも仕方ないな。
そんなことを考えながらも、少しだけ、やり返す。

「そっちもじゃないかな。一人で、そんなに重たいものを持ってこんなところまで。」
「そっか、そうだよね。」
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