キミと僕との7日間

五味

文字の大きさ
17 / 66

2-12

しおりを挟む
「うん、美味しいや。」
「ちまき、美味しそうだね。私ももらうね。」
「ああ、これ、そういう料理なんだ。」

僕が分からなかった回答を、彼女がくれる。どうやらこれはそういった料理らしい。
食感が、普段のご飯と違う事は分かるけど、正直炊き込みご飯で作ったおにぎりくらいに思っていた。
中には、おにぎりの具材みたいに、レンコンとタケノコ、それと豚のミンチらしきものが詰められているし。
夕食が少なめという事もあるったけど、思ったよりもしっかりとした食べ物に少し驚く。
彼女は彼女で、一つを手に取ってかじりついていて、美味しいとそんな感想を漏らしている。
ただ、持たされた容器にはあと4つ程残っていて、流石に半分ずつとするには、僕は少ししんどい。
晩御飯を食べていなければともかく、普段より少ないと、そう言えるくらいにはしっかり食べたのだから。

「美味しいね。お祖母さん、料理上手なんだ。」
「うん、たぶん。」
「なに、それ。」

あやふやな返しに、彼女が声を立てて笑う。

「んー、僕がそんなに食事にこだわりがないからかな。」
「それでも、美味しいって思う料理を相手が作ってくれるなら、それってすごく上手って事じゃないの。」
「そうかも。うん。これまで美味しくない食べ物って、あんまり食べたことが無いし。」
「へー、あるんだ。それでも。」
「うん、家以外で食べたときに。」
「ほら。」

思い返して、これまで美味しくないと、そう感じた料理の共通点を答えると、彼女は今度こそ楽しそうに笑う。
そう言えば、家の料理で美味しいと思った事しかないけれど、外食をしたときは、これはちょっと、そう思うものがたまにあるのだ。口に合わない、そう思うものが。

「慣れてるだけかも。」
「だったら、珍しい、そう感じるんじゃないかな。」
「そうだね。そうだ。」

そんなことを話しながら、僕がもう一つに手を伸ばせば、彼女ももう一つ取り上げる。
その動きのためらいの無さに、美味しいというのもあるのだろうけれど、お腹が空いていたのだろう、そんなことを思う。

「晩御飯は、もう食べたの。」
「ううん。食べて動くと、やっぱりきついから。」
「そんなに大変なんだ。」
「あんまり道も良くないし、やっぱり荷物が重いから。」
「そっか。」

そうして、それぞれに黙り、手に持ったものを片付ける。
そして、どうにか二つ食べた物の、流石にこれ以上はと、僕は相手に容器を押し出す。

「えっと。」
「僕は流石にお腹いっぱい。」
「気を遣わせちゃった。」
「いや、僕晩御飯も食べてるから。本当にこれ以上は無理。」
「あ、そうなんだ。」
「うん、食べきれないなら、持って帰ってもらっても。」

多分、それも考えて祖母はこうして葉っぱとはいえ、包んである料理を準備したのだろうと思うから。
相手の状況を詳しく話したわけでもないのに、祖母にしろ、祖父にしろ、一体どうしてここまで気が回るのだろうか。気を回して疲れないのだろうか。

「あの、お祖母さんに、ありがとうって。」
「うん、伝えとくね。」

どうやら、彼女はさっき話したように、空腹を結構我慢していたらしい。
僕が見ている前で、さらにもう一つと手を伸ばして食べ始める。

「えっと、普段は。」
「うん、その、栄養補助食品みたいなのだけ。」
「それで、何日くらい。」
「一週間かな。水は水道があるし。でも、去年は流石に途中で一回買い物に出て、そこで食べたかな。」
「よく大丈夫だね。」
「あんまり大丈夫じゃないけど、好きな事だから。」

そういって彼女は苦笑いをする。

「ま、程々で。体壊したら元も子もないし。道が危ないなら、なおの事怪我したら、どうにもならないし。」
「うん、そうだね。でも、やっぱりこうやっていい条件で観測できることって少ないから。」
「へー、条件とかってあるんだ。」
「さっきも言ったけど、町中みたいに、明るい場所じゃなくて、雲がないとか、うん色々。」
「まぁ、星が隠れたら、見ることは出来ないもんね。」
「そうなんだ。どうしてもね。」
「少し郊外にとかは。」
「その、街の明かりってすっごく強いんだ。実のところここでも少し明るかったりするくらいに。」

その彼女の言葉に思わず首をかしげる。
十分に離れているし、少なくとも僕には月明かりと星の明り、そういった物しか感じられない。

「分からないよね。うん、それでも街灯が一晩中ついてたりすると、本当は見える星が見えなかったりするんだ。
 極限等級、えっと、天体望遠鏡の性能を表す一つの数値なんだけど。」
「へー、そんなのがあるんだ。でも、そっか、それがわからなきゃ選びようもないのか。」
「うん。勿論持ち運びできるようなのだから、そんなにいいのじゃないけど、やっぱり極限等級の星は見えないんだ。他の明りがあると、それに隠れちゃって。」
「それは、町中で星が全然見えないみたいに。」
「月の明るさもあったりして、そのあたりは結構難しかったりするんだけど、天体観測には、実は新月の夜の方がよかったりもするんだよ。」
「月も、きれいだけど。」
「それこそ、満月の時にいくらでも見えるから。」

僕がそっと月のフォローをすれば、彼女はそう返してきた。
まぁ、それはそうだろう。陰に隠れず、全体が観測できる、月の観測は確かに満月の時が一番やりやすいのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...