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1話 そこは俺の知るゲーム世界だった
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VRMMOゲーム『ドラゴン・ソウル・オンライン』通称、DSO。
日本でVRMMOブームを巻き起こしたDSOは多くのプレイヤーを熱狂させた。
俺もその中の一人だった。
発売当初、高校一年生だった俺はDSOのPVを見て、心を踊らせた。
新しいものも好きだし、ゲームも好きだったので、俺は必死にバイトをしてパソコンとDSOを買った。
そして、いざプレイしてみると──どハマりした。
現実世界よりもDSOを優先する生活。
友人関係が疎遠になっていくにつれて、DSOでは仲間が増えた。
高校もよくサボるようになり、DSOのプレイ時間は4年で10000時間を超えた。
学校で学ぶ知識よりもDSOの知識を覚えることの方が有意義に感じているあたり、俺はどうかしていたのだろう。
ニートを1年経験したところで俺は、このままではまずい! と、スーツを着て就職活動を始めた。
話すことには困ったが、努力の結果、少し黒い感じはする企業だが役員面接にまでたどり着けた。
役員面接はまずまずといった感じで、内定をもらえるような気がした。
これから頑張って生きていこう。
迷惑を掛けっぱなしだった両親に恩返しをしよう。
そう思っていた矢先、ビルの外に出た俺は目を疑った。
「──は?」
待っていたのは見渡す限りの草原。
さっきまでの自分がいた場所とは全く違う。
「なんだこれ……。一体どうなってるんだ?」
戸惑いながらも俺は草原を歩いた。
そして、見つけたのは青い流線型のモンスター。スライムだ。
DSOにも存在していたスライムと同じ外見をしている。
俺は自分でも知らず知らずのうちにDSOを起動していたのか?
それともこれは夢か?
漫画みたいに頬をつねってみたが、ちゃんと痛い。
DSOでは痛みを感じない。
夢でも痛みを感じることはない。
「どうなってんだよこれ……」
俺はため息をついて、頭を抱え込んだ。
しばらく歩き続けると、街が見えてきた。
平原にはスライムしか生息しておらず、安全に移動することが出来た。
敵対してくるモンスターがいたら、俺は死んでいたことだろう。
……考えると、ゾッとした。
街に到着した俺は真っ先に人に街の名前を尋ねた。
素朴な服を着た17歳ぐらいの少女だ。
「ここは始まりの街リステカトルですよ」
やっぱりそうか。
街の名前を聞いて、俺は確信した。
ここは俺がやり込んだゲーム『DSO(ドラゴンソウルオンライン)』と同じ世界だ。
「ありがとうございます」
「それにしても見慣れない格好ですね」
「ええ、リステカトルから遠い国より訪れたものでして」
どうしてもスーツ姿は悪目立ちしてしまう。
俺は適当にごまかし、会話を終えた。
「ふぅ……」
広場のベンチに座り、俺は考えを整理することにした。
まず、この世界について考える。
ここ、始まりの街リステカトルはDSOにも存在している。
キャラクターメイキングを終えたプレイヤーがリスポーンする場所であることから、始まりの街と名づけられている。
ここまでは全く同じだが、違う点も一つ見つけることが出来た。
先ほど話しかけた人は、ゲーム中で存在していたNPCだ。
プレイヤーが交流を目的に集まる酒場で働くNPCで、酒場から出ているところは一度も目撃したことがない。
そして、話しかけても定型文しか返ってきたことはない。
だが、この世界で彼女は実際に生活していた。
表情も変化するし、会話も現実の人間に話しかけているのと何ら変わりない。
そこから分かること、それは──この世界がゲームではないということ。
それなら痛みを感じることも説明がつく。
何とも不思議なことだが、俺はDSOに酷似した世界にやってきてしまったのだ。
原因は不明。
これが近頃流行りのライトノベルなら神などの上位存在が出てきて何か説明をしてくれたかもしれない。
だが、そんなものは一切ない。
「これからどうする……?」
ポツリと呟きながら目的を考える。
自分の好きなゲームの世界にやってきたのが一年前なら、俺はこの状況を心から喜んだだろう。
しかし、今は違う。
俺がいなくなって悲しむ人間がいることを理解したし、親孝行だってしたい。
だから、第一の目的は元の世界に帰ること。
どうやったら元の世界に帰れるのか、なんてことは何も分からない。
ただ、この世界は俺の知っているDSOとは少し違う部分も存在する。
世界について知っていけば元の世界に戻る方法が存在しているかもしれない。
じゃあ知るためにはどうするか?
何はともあれ、強くなければいけないだろう。
ただの力を持たない一般人が世界を隅々まで調べることなんて不可能だ。
幸い、この世界の仕組みは全て理解している。
強くなるための手段なんていくらでもあるし、最速で最強になる自信があった。
なにせ俺は──DSO最強と呼ばれるプレイヤーだったのだから。
「VRMMOで最強の称号は廃人の証にしかならないと思っていたが、思わぬところで役に立ってくれそうだ」
この世界はVRMMOと違って現実だ。
死んでもリスポーンすることはできない。
……やれやれ、こんな状況でまさかワクワクしてしまうとはな。
どうやら俺は根っからのゲーム廃人らしい。
この世界が本当にDSOだとすれば、既に最強への足掛かりはある。
俺にしか取得することの出来ない隠しスキル。
それを取得すれば、俺はとてつもない速さで強くなることが出来るだろう。
日本でVRMMOブームを巻き起こしたDSOは多くのプレイヤーを熱狂させた。
俺もその中の一人だった。
発売当初、高校一年生だった俺はDSOのPVを見て、心を踊らせた。
新しいものも好きだし、ゲームも好きだったので、俺は必死にバイトをしてパソコンとDSOを買った。
そして、いざプレイしてみると──どハマりした。
現実世界よりもDSOを優先する生活。
友人関係が疎遠になっていくにつれて、DSOでは仲間が増えた。
高校もよくサボるようになり、DSOのプレイ時間は4年で10000時間を超えた。
学校で学ぶ知識よりもDSOの知識を覚えることの方が有意義に感じているあたり、俺はどうかしていたのだろう。
ニートを1年経験したところで俺は、このままではまずい! と、スーツを着て就職活動を始めた。
話すことには困ったが、努力の結果、少し黒い感じはする企業だが役員面接にまでたどり着けた。
役員面接はまずまずといった感じで、内定をもらえるような気がした。
これから頑張って生きていこう。
迷惑を掛けっぱなしだった両親に恩返しをしよう。
そう思っていた矢先、ビルの外に出た俺は目を疑った。
「──は?」
待っていたのは見渡す限りの草原。
さっきまでの自分がいた場所とは全く違う。
「なんだこれ……。一体どうなってるんだ?」
戸惑いながらも俺は草原を歩いた。
そして、見つけたのは青い流線型のモンスター。スライムだ。
DSOにも存在していたスライムと同じ外見をしている。
俺は自分でも知らず知らずのうちにDSOを起動していたのか?
それともこれは夢か?
漫画みたいに頬をつねってみたが、ちゃんと痛い。
DSOでは痛みを感じない。
夢でも痛みを感じることはない。
「どうなってんだよこれ……」
俺はため息をついて、頭を抱え込んだ。
しばらく歩き続けると、街が見えてきた。
平原にはスライムしか生息しておらず、安全に移動することが出来た。
敵対してくるモンスターがいたら、俺は死んでいたことだろう。
……考えると、ゾッとした。
街に到着した俺は真っ先に人に街の名前を尋ねた。
素朴な服を着た17歳ぐらいの少女だ。
「ここは始まりの街リステカトルですよ」
やっぱりそうか。
街の名前を聞いて、俺は確信した。
ここは俺がやり込んだゲーム『DSO(ドラゴンソウルオンライン)』と同じ世界だ。
「ありがとうございます」
「それにしても見慣れない格好ですね」
「ええ、リステカトルから遠い国より訪れたものでして」
どうしてもスーツ姿は悪目立ちしてしまう。
俺は適当にごまかし、会話を終えた。
「ふぅ……」
広場のベンチに座り、俺は考えを整理することにした。
まず、この世界について考える。
ここ、始まりの街リステカトルはDSOにも存在している。
キャラクターメイキングを終えたプレイヤーがリスポーンする場所であることから、始まりの街と名づけられている。
ここまでは全く同じだが、違う点も一つ見つけることが出来た。
先ほど話しかけた人は、ゲーム中で存在していたNPCだ。
プレイヤーが交流を目的に集まる酒場で働くNPCで、酒場から出ているところは一度も目撃したことがない。
そして、話しかけても定型文しか返ってきたことはない。
だが、この世界で彼女は実際に生活していた。
表情も変化するし、会話も現実の人間に話しかけているのと何ら変わりない。
そこから分かること、それは──この世界がゲームではないということ。
それなら痛みを感じることも説明がつく。
何とも不思議なことだが、俺はDSOに酷似した世界にやってきてしまったのだ。
原因は不明。
これが近頃流行りのライトノベルなら神などの上位存在が出てきて何か説明をしてくれたかもしれない。
だが、そんなものは一切ない。
「これからどうする……?」
ポツリと呟きながら目的を考える。
自分の好きなゲームの世界にやってきたのが一年前なら、俺はこの状況を心から喜んだだろう。
しかし、今は違う。
俺がいなくなって悲しむ人間がいることを理解したし、親孝行だってしたい。
だから、第一の目的は元の世界に帰ること。
どうやったら元の世界に帰れるのか、なんてことは何も分からない。
ただ、この世界は俺の知っているDSOとは少し違う部分も存在する。
世界について知っていけば元の世界に戻る方法が存在しているかもしれない。
じゃあ知るためにはどうするか?
何はともあれ、強くなければいけないだろう。
ただの力を持たない一般人が世界を隅々まで調べることなんて不可能だ。
幸い、この世界の仕組みは全て理解している。
強くなるための手段なんていくらでもあるし、最速で最強になる自信があった。
なにせ俺は──DSO最強と呼ばれるプレイヤーだったのだから。
「VRMMOで最強の称号は廃人の証にしかならないと思っていたが、思わぬところで役に立ってくれそうだ」
この世界はVRMMOと違って現実だ。
死んでもリスポーンすることはできない。
……やれやれ、こんな状況でまさかワクワクしてしまうとはな。
どうやら俺は根っからのゲーム廃人らしい。
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