時空モノガタリ

風宮 秤

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1話~19話

18:「上司」 転職の相談

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「どうぞ、おかけ下さい」
 今日のクライアントも、相談するかを悩んでいる。悩み事を相談するかで悩んでいては悩みが増えても減る事はないのに・・・・、無視して様子を見るのも面白いかな?
「転職について悩んでいますよね。悩んでいるだけでは埒が明かないですよ」
 何故、分かるのか驚いている。占い師だから分かるのか?ハッタリで言ってきているのか?また、悩んでいる。でも、ここまで来たんだから決心できる筈。

 見た目二十代後半、ナチュラルメイクではないけれど、薄化粧。
「私、今の仕事に向いていないのかも。上司に怒られてばかりで・・・・。転職した方が良いのかも。でも、転職先で上手くやって行けるのかも分からないから。どうしたら良いのか分からなくなってしまって」
 占いの結果は出ている。占いの結果を受け入れるのかも分かっている。占い師だからね。でも、仕事だから。
「まず、どう言う仕事をされています?」
「品質保証室でデータの入力や校正を行っています」
 品質管理も兼務していると言う事は、準大手規模。待遇面を考えればしがみ付く事を考えてもいいのに、二十代ではそこまで意識が回らないみたい。
「データの入力や校正で怒られるのですか?」
「どちらも手順が決まっていて、その通りに行っています」
 怒られる要素が出てこないと、問題点を認識させる事が出来ない。
「どう言う仕事をしている時に、怒られるのですか?」
 また、悩んでいる。毎日怒られている訳ではない。『怒られてばかり』と言った訳だから、毎日怒られている事を説明しないと辻褄が合わないと考えている様だ。
「入力したデータが間違っていると怒られます」
 上司が簡単に見つけられる間違い・・・?
「十倍大きな数値とか、十分の一の数値が混ざっているとかですか?」
「入力したデータはグラフにして確認しているので、そう言うミスではないです」
「では、どう言うミスですか?」
「検査員が変わると数値の周期性が変わるとか。検査員と字体に整合性がないとか。それをそのまま入力するのは、入力者のミスだそうです」
 これは凄い上司。自分でも確認をしているのは部下を信用していない? と、言う事ではなさそう。
「そこまで、見抜けるのですか?」
「座右の銘は三現主義とか言っていました。検査日報を持って来て私が入力したデータを確認していました。その上で、製造部長経由で検査課長に指導する様に言ってあるから、現認して対処する様に言われて。でも、歳も上、役職も上の人に何と言ったらいいのか・・・」
「品質保証室は上位組織だから製造部長にも改善要求できますよね?」
「そうなんですか?」
 この上司なら説明をしていそうだけど・・・、
「大丈夫です。あなたが話しやすい様に、室長が仁義を切っているから問題ないですよ。そこまでしてくれる上司は少ないですよ」
「そうですか?」声のトーンが更に下がった。
「万能上司はいないし相性の問題もありますが、これから先その人以上の上司に巡り合う事はないと思いますよ。丸投げ、梯子外しの上司が多いですからね」
「そうですか・・・・、育てて貰わなくも構わないし、丸投げされても出来ないし、梯子に登る様な仕事はしませんから」
 悩まずに帰る準備に入っている。
「上司を替えたいだけでも、会社を替えれば、お給料も、休みも、同僚も全て変わってしまいますよ。それに、上司との関係性は常に変化するもの。良くも悪くも二三年の辛抱ですよ」
 すでに、何を言っても声は届かない。酷い上司だと賛同し転職を勧める結果ではなかったからだ。志のない部下から見れば暑苦しい上に嘘もすぐに見抜く面倒臭い上司なのだろう。
「参考になりました。ありがとう御座いました」
 軽くお辞儀をすると、占い料をおいて立ち去った。

 彼女がそこを離れる事で、別の人が救われる。出来れば私の目の前に現れた人に幸せになって欲しいけれど、私のエゴで世の中が動く訳でもない。
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