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20話~39話
26:「ホラー」 社畜
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「本日の試食会では、前回賜った『歯ごたえのあるワイルドな食感がありながら口の中で蕩ける様に広がる肉汁のバランス』を改善した試作品番号171129-G4J3D1C2のハンバーガーです」
社長、副社長、取締役、取締役、取締役、営業部長、学生メインの客層なのに四十も違う連中が評価した結果が、一人負けの業績だろうに。それに、いつから営業が上から目線で評価できる身分になったんだ。売れなければ開発の所為、売れれば営業の尽力と言いやがって、売るものがなくても振込み詐欺は年間500億も売り上げているんだよ。少しは頭を使えよ。・・・まぁ、今はそれどころじゃないか。
「部長、本音が漏れていますよ」
試作発表に同席している課長が呟いた。
「大丈夫だ。奴ら頭も耳も悪いから」
課長は何事も無かった様に、作りたてのハンバーガーを配って行った。
「今回の試作番号171129-G4J3D1C2のハンバーグの具材は、こちらのサンプルの順番で重ねております。お客様と同じ感覚で『ガブリ』と召し上がってください」
一様に、両手で持つと左右上下を眺め、おもむろに皿の上に置くとクラウンを剥がし具材のマヨネーズ、レタス、トマト、オーロラソース、オニオンスライス、ハンバーガーパティ、ヒールを順に確認をしている。社長以外は確認する振りをしながら、社長の一口目を待っていた。
まず、普通にかぶりついてくれ、ハンバーガーの美味しさはそこにあるだろ。具材の確認の為にサンプルまで用意しているこちらの配慮に気が付け。
「部長、顔が怖くなってますよ」
普段以上に、気が利く課長だった。
「大丈夫だ、奴らの興味はコストだけだ」
!
「うまい・・・。今回のは、ホントうまい」社長の一言が出た。
次々と、ハンバーガーを頬張ると、副社長から順に「うまい」の一言が続いた。
「今回の改善のポイントはなんだね?」
社長がコストより先に美味さの話をしている・・・
「どうしたんだね。ポイントを説明しなさい」
「失礼しました」軽く咳払いをした。
「今まで既存の仕入れルートからの肉を使ってブレンドしていましたが、求められる歯ごたえと味わいを両立する事が出来ませんでした。そこで、極秘裏に開発した新ルートからの新しい肉を使ってブレンドしました。ワイルドな食感は素直に良く体を動かしている個体の肉を使う事にしました。同じく、蕩ける様に広がる肉汁は未経産の肉を使っております」
「未経産の肉はかなりのコストアップになるのではないか?」
社長の言葉を忖度した取締役が副社長を突いた。
「君、美味しくても高くなっては何の意味もないんだぞ」
社長の質問に追従する様に副社長が叱責してきた。・・・・むかつく。
「ご心配はいりません。原価は従来品より20円安くなっております」
一様に顔が緩み、手に持っていたハンバーガーを落とす者もいた。
「ほんとかね! この食感、この味わいなら最高級バーガーで売り出しも出来るだろう」
「ありがとうございます。営業部長の娘さんにも協力して頂いた甲斐があります」
!
社長と営業部長の顔が険しくなった。営業部長が立ち上がり椅子が弾き飛ばされ、
「娘の居場所を知っているのか!」
「君、今は会議中だぞ。場所をわきまえなさい」
社長の一括に営業部長は黙るしかなかった。
「この食感、この味わいを手放すつもりはない。安定供給は受けられるのか?」
社員の生活がこのハンバーガーに掛かっている事は社長が一番理解していた。
「当社には、全従業員と家族含めると十二万人おります。食材調達部によりますと問題ないとの事です」
「分かった。直ぐ量産体制に入ってくれ。キャンペーンを立ち上げて大々的に売り込みを掛けるぞ。営業部長は各地の店舗に出向いて徹底指導してもらう。いいね」
社長の指示に一同ひれ伏すしかなかった。
試食会の片づけを終えると、課長が聞いてきた。
「肉の出所を質問する人いませんでしたね・・・・」
課長の安堵が手に取る様に伝わってくる。
「ほらー、言った通りだろ。みんな我が身可愛さで他人の命なんて関係ないんだよ」
課長の肩を叩くと、開発室に戻った。
社長、副社長、取締役、取締役、取締役、営業部長、学生メインの客層なのに四十も違う連中が評価した結果が、一人負けの業績だろうに。それに、いつから営業が上から目線で評価できる身分になったんだ。売れなければ開発の所為、売れれば営業の尽力と言いやがって、売るものがなくても振込み詐欺は年間500億も売り上げているんだよ。少しは頭を使えよ。・・・まぁ、今はそれどころじゃないか。
「部長、本音が漏れていますよ」
試作発表に同席している課長が呟いた。
「大丈夫だ。奴ら頭も耳も悪いから」
課長は何事も無かった様に、作りたてのハンバーガーを配って行った。
「今回の試作番号171129-G4J3D1C2のハンバーグの具材は、こちらのサンプルの順番で重ねております。お客様と同じ感覚で『ガブリ』と召し上がってください」
一様に、両手で持つと左右上下を眺め、おもむろに皿の上に置くとクラウンを剥がし具材のマヨネーズ、レタス、トマト、オーロラソース、オニオンスライス、ハンバーガーパティ、ヒールを順に確認をしている。社長以外は確認する振りをしながら、社長の一口目を待っていた。
まず、普通にかぶりついてくれ、ハンバーガーの美味しさはそこにあるだろ。具材の確認の為にサンプルまで用意しているこちらの配慮に気が付け。
「部長、顔が怖くなってますよ」
普段以上に、気が利く課長だった。
「大丈夫だ、奴らの興味はコストだけだ」
!
「うまい・・・。今回のは、ホントうまい」社長の一言が出た。
次々と、ハンバーガーを頬張ると、副社長から順に「うまい」の一言が続いた。
「今回の改善のポイントはなんだね?」
社長がコストより先に美味さの話をしている・・・
「どうしたんだね。ポイントを説明しなさい」
「失礼しました」軽く咳払いをした。
「今まで既存の仕入れルートからの肉を使ってブレンドしていましたが、求められる歯ごたえと味わいを両立する事が出来ませんでした。そこで、極秘裏に開発した新ルートからの新しい肉を使ってブレンドしました。ワイルドな食感は素直に良く体を動かしている個体の肉を使う事にしました。同じく、蕩ける様に広がる肉汁は未経産の肉を使っております」
「未経産の肉はかなりのコストアップになるのではないか?」
社長の言葉を忖度した取締役が副社長を突いた。
「君、美味しくても高くなっては何の意味もないんだぞ」
社長の質問に追従する様に副社長が叱責してきた。・・・・むかつく。
「ご心配はいりません。原価は従来品より20円安くなっております」
一様に顔が緩み、手に持っていたハンバーガーを落とす者もいた。
「ほんとかね! この食感、この味わいなら最高級バーガーで売り出しも出来るだろう」
「ありがとうございます。営業部長の娘さんにも協力して頂いた甲斐があります」
!
社長と営業部長の顔が険しくなった。営業部長が立ち上がり椅子が弾き飛ばされ、
「娘の居場所を知っているのか!」
「君、今は会議中だぞ。場所をわきまえなさい」
社長の一括に営業部長は黙るしかなかった。
「この食感、この味わいを手放すつもりはない。安定供給は受けられるのか?」
社員の生活がこのハンバーガーに掛かっている事は社長が一番理解していた。
「当社には、全従業員と家族含めると十二万人おります。食材調達部によりますと問題ないとの事です」
「分かった。直ぐ量産体制に入ってくれ。キャンペーンを立ち上げて大々的に売り込みを掛けるぞ。営業部長は各地の店舗に出向いて徹底指導してもらう。いいね」
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試食会の片づけを終えると、課長が聞いてきた。
「肉の出所を質問する人いませんでしたね・・・・」
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課長の肩を叩くと、開発室に戻った。
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