ひまわり計画

風宮 秤

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エピローグ

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 十年近くが過ぎた・・・。

 インフラを失った都市に人影はなく、野生動物が入り込むには年月が浅く、植物が都市を覆うには半世紀足らなかった。
 最初の冬を生き延びた都市の人々は食べ物を求め農村部を目指した。カントリーエレベーターを見つけると食料の分配を迫った。飢えを満たすためには種芋を強奪した。麦秋を待たずに刈り取った。農家の人数では多勢に無勢だった。
 避難民に放火された収穫間際の麦畑もあった。来季の食糧より今日の飢えが避難民を蝗の如く動かした。
 それが収まり理性的に抑制的に共産的な生き方を求めた地域は復興の光が見えていた。

 どこの国も太陽フレアによる電磁嵐による人工衛星の壊滅を公式発表として天災からの復興を目指していた。
 減少した人口とは言え品種改良によって農薬なしでは育たない作物ばかりだ。化学肥料の原料である原油の輸入が最優先課題だった。その為にはGPSの代替である北斗測位衛星システムの利用権の確保は国家の存亡に関わった。生き残った船舶に北斗測位衛星システムの受信機を取り付けるには工業製品のサプライヤーチェーンが残る中国から購入するしかなかった。常任理事国は国連憲章の上にある拒否権よりも更に上にあるものを痛感した。
 北斗測位衛星システムの利用権は法律よりもプライドよりも大事なものなのだ。


 美国の復興への歩みが早かった。自国に食料も原油もあるからだ。内乱は収まり南部の穀倉地帯を中心に秩序を取り戻していた。乗り捨てられた車を修理するガレージショップが賑わうようになった。車が動けば物流が回りだす。各地にコミュニティーが生まれた。
 欧州の教会はホームレス用に貯えていた食料をいち早く放出し地域の鎮静化に貢献したが長くは続かなかった。食料は早々に底を突き飢えた若者から『教会の地下で食料を見た』とのデマが流されると、蝗の如く集まり倉庫から倉庫へと襲撃を繰り返した。彼らは夜になると暖を取る為に図書館の本を燃やした。薪より手軽で良く燃えた。しかし、燃やしたのは本ではなく知識だった。キリギリスは冬に踊ったが、蝗は蟻を襲ったのだ。インフラも知識も失った欧州は散発的に発生する若者の群れが復興を妨げていた。
 中東は予想以上の展開になっていた。キリスト教徒が旧約聖書と言う三大宗教共通の経典が彼らに問い掛けた。壁は偶像崇拝にあたるのではないか? そこに積年の怨恨が地形を変えるまで止まらなかった。
 死海湾が形成されると大量の水蒸気を作り東岸の山脈を雨雲が超えられるようになった。砂漠に雨が降るようになると耕作地が一気に広がった。宗派間の対立はまだ残っていたが緑が増えた事で共存する余裕が生まれた。腹が満たされれば諍いは減る。仕事が出来れば不満より幸せを考える。武器より鍬を持つ若者が増えた。


 一方、主席の沈黙は掃討作戦の開始が合図となって解除された。司令部の激励に始まりチベット高原に展開する陸軍の兵にも及んだ。食料の買い占めに厳罰を公布するなど都市部を中心に想定された餓死を未然に防ぐ策が講じられた。事前に備蓄した食料の放出も行われた。それと同時に主席の沈黙は踏み絵でもあった。政敵を次々と追放していった。
 そして、中央軍事委員会の副主席に四十代の女性が抜擢された。二十歳の若返り以上に彼女の名前に世界が驚かされた。


  了

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