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しおりを挟む食事は終わったが、お父様とお母様はまだまだワインを楽しみたいご様子。なので、少し軽くつまめるものを用意する。
「天使ちゃん、サイコー」
お母様は少し酔っているみたいで、話し方がたどたどしくて可愛らしい。その様子をお父様は微笑んで見守っている。
いいなぁ、こういう雰囲気。私は昔を思い出す。こんな感じにはなれなかった。どんなに憧れても無理だった。可愛らしく男性に甘える女性とそれを見守る男性。
マリアンヌならこんな風になれるのだろうか。何しろマリアンヌは美少女だ。真理子ならできないようなことだってできるように思う。でも・・・。中身は真理子だ。そう思ったら、不安になった。アルバート王子とうまくやっていけるのだろうか。何しろ真理子は彼氏に捨てられた女だ。二股かけられていたのに気づかない鈍感女だ。恋愛なんて自信がない。
色々考えていたらため息が出た。今日はもう寝たほうがいい。私は部屋に戻って布団かぶって寝ることにした。
「マリ、少しいいかな」
と、思っていたらフランツ兄様に声をかけられた。優しい目で見つめられ、私は恥ずかしくなる。何しろものすごいイケメンなのだ。最近になってようやくお父様やレオポール兄様とのスキンシップに慣れてきたところ。なんでもない風を装っているけど、ふと気がついたら抱きしめられているということがあって恥ずかしくなる。
「加護を受けた人間を僕は何人か見たことがある」
優しいけど、どこか厳しさを感じる声。私は緊張した。何を言われるのか想像できなかったからだ。
「今までにない考えや知識が出てくるってみんな言っていた。文献にもそう書かれている」
お兄様の手が私の頭をゆっくり優しく撫でてくれる。昼は心地よさを感じたその仕草なのに、なぜかゾクゾクする。怖い。急に私は恐怖を感じた。
お兄様は何かを知っているのかもしれない。唐突にそんなことを思った。もしかしたら、お兄様は気づいてしまったのかもしれない。確かに何も知らないはずのマリアンヌが商売のことを言い出したり、この世界の常識にないことを言い出したら疑うはずである。今までは加護を受けたせいということで全て収まっていた。正直そんな人ばかりのはずがない。
「マリは社交界でなんて言われていたか知ってる?公爵家の人形姫。それがマリのあだ名だったよ」
人形姫。それは褒められていたわけではないのだろう。顔は綺麗だけど中身はない。そんなところだろうか。
「マリは公爵家の令嬢として完璧だ。なんでもそつなく確実にこなす。王族になったとしても完璧にその役割をこなすだろうね」
お兄様の目は悲しそうだった。その瞳を見ても、私は何も言えないしどうしていいかわからない。お兄様は私をきつく抱きしめた。
「加護を受けたと聞いて怖かった」
お兄様は震えている。私をきつく抱きしめてその震えを抑えようとしているようだ。私は苦しいけど、でも動けなかった。
「加護を受けた人の大半は性格が変わると言われている。大抵が横暴になったり、人とうまくいかなくなったり。でもマリは違う」
私はお兄様を見上げた。お兄様は優しい目で私を見つめてくれた。
「どんな風に変わってもマリはマリだよ。僕にとってはかけがえのない妹」
お兄様の言葉が身体中に染み込んでいくようだった。私はこのままでいいんだ。そう言われたようでとても嬉しかった。
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