ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「え?私?」

 思わず人差し指を自分の顔に向けてしまう。声がひっくり返った。

「そうですわ」
「自覚がないんですの?」
「・・・いいのです。私は・・・」

 シャロンとアンは厳しい目つきでピシャリと言ってくるが、メイミーは弱々しく節目がちに呟く。そうしながらも時々はチラチラとこちらを見てくるのである。うん、面倒くさい。メイミーってこんなキャラなのか。

 マンガを思い出そうとするのだが、メイミーってシャロンの後ろに控えているだけでセリフを言っていたかどうかも思い出せない。でも時々涙を浮かべていたような気もする。


「なりませんわ」
「そうですわ、このような愚業、許してしまってはなりません」
「でも・・・」

 シャロンとアンはメイミーを慰めながらも、時々私のことを睨みつけてくる。やっぱりこうなるのか。と、心の中でマンガのシーンがいくつも浮かんでくる。マンガではリサは王子にグイグイ詰め寄っていた。だから私は避けようと思っていた。でも王子たちのほうが懐いてきたのだ。王子相手に避けるわけもいかない。そこはわかってほしいが、無理だろうな。

「リサが何をしたというのだ」

 王子が一歩前に出た。あら、逞しいわね、と思ったがすぐにポールが王子の前に立つ。それが結構な勢いだったので、王子の鼻がポールの背中に当たった。王子は鼻を抑えている。が、ポールは気にすることもなく女性陣3人を睨みつけた。

「何をしたかですって?」
「厚顔無恥とはこのことですわ」
「・・・おやめくださいまし」

 ポールが目の前にいるせいか、メイミーのチラチラ度が上がった。ポールへのアピールなら確実に間違っていると思う。それが証拠にポールの目が冷たいのだ。とても自分の婚約者を見る目ではない。

「ランチをご一緒したのでしょう?」

 シャロンの言葉にアンは大きくうなづき、メイミーは泣きそうな顔で俯く。え?なんで知ってるの?そりゃ仕方なくご馳走したけどさ。見てたわけじゃないよね。

「私たち、お待ちしていたのに」
「そうですわ」
「・・・」

 キッとシャロンから睨みつけられ、アンからは軽蔑したような視線を向けられる。メイミーは俯きながらもチラチラとこちらの様子を伺ってくる。

「それの何が悪いのだ?」

 王子がポールの前に出ていくと、心底意味がわからないという顔でシャロンの目の前に立った。ものすごい至近距離のため、シャロンは赤い顔になってたじろいでいる。王子の距離感、おかしいだろう。

「確かにリサとランチを食べた」

 あっけらかんと話す王子。

「酷いですわっ」
「そうですわ、殿下」
「・・・」

 シャロンは涙目になっている。

「食事を一緒に食べるということは、家族の証ではありませんか!」

 え?そうなの?この世界ではそういう意味があるの?思わず周囲を見渡した。ジョンさんが軽く首を左右に振っている。

「そんなの、聞いたことないぞ」

 王子が強気で発言する。意外に言う時は言うんだな。少し感心してしまうが、こんなことで感心するのもどうかと思う。だがせっかくの王子の言葉なのだが、シャロンは目を見開き甲高く叫ぶように言った。

「常識ですわ!」
「そうですわ」

 シャロンの言葉に被せるようにアンも言った。

「・・・しょうでしゅ・・・」

 しかしメイミーの声が小さすぎて聞き取れなかった。自信なさそうに見えるが、実はそれが通常なのかもしれない。とにかく3人は一致団結し、ランチを食べるという行為はすなわち家族のように親しいことを意味する。婚約者がいる身でそれは不実な行いなのだ、恥じるべきなのだと糾弾してくる。

 それって本当なのか。そもそも本当だったらアメリアさんが止めるはず。しかしそんなことはなかった。だとしたらおそらくはシャロンたちの言いがかりなのか。でもなぁ、好きな人が別の異性と食事していたらそれはショックだよね。単に好きなだけではなく結婚を約束した相手だ。確かにそれは浮気にも匹敵する・・・。

 と呑気に考えてしまった。よくよく考えたらこれって相当マズイ状況である。このまま王子たちとシャロンたちの仲が拗れてしまったら。マンガと同じストーリーに近づいているってことだ。これはマズイ。本当にマズイ。

「皆さん!」

 今にも大喧嘩が始まりそうな王子たちに向かい、私を大声を出した。6人が一斉に私を見る。気合いを入れ直し、私は話し始めた。



 

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