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第1話 退学命令
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京都市内のホテルで美希は母からの電話を受けた。朝食を食べながら見ていたテレビでは、関西ローカルの情報番組が遅咲きの枝垂れ桜の名所を画面に映している。
「もしもし。美希? 京都での下宿、物件は見つかった?」
美希は慌てた。京都の大学に合格したのに未だに適当な物件を見つけられず、こうしてぐずぐずホテルにいると、怠惰だと叱られてしまう。
「ゴメンナサイ。昨日良さそうなワンルームマンションを見つけたけど、ママが気に入るか分からないから今日も別の物件を見に行くつもりなの」
「そう、それは良かった」
しかし、母の「良かった」理由は、美希の全く思いがけないものだった。
「下宿が決まる前で良かったわ。美希、退学しなさい」
「……え?」
「今日はこれから大学で退学の手続きをしてきなさい。そして今夜中に東京に帰って来て」
美希は、驚きのあまり固まった唇を懸命に動かした。
「どうして? 先月入学手続したばかりよ?」
「パパがね、癌だって分かったのよ」
「癌? そんなに悪いの?」
娘が合格したばかりの大学を辞めて駆けつけなければならないほど?
「今はたいしたことないらしいの。でも、これから通院とか色々大変だわ。貴女がいてくれないと困るの。進学なんてしてる場合じゃないわ」
今すぐどうこうというのでないのなら……折角合格した第一志望校を辞めなくても……。もちろん病状に合わせて京都から頻繁に東京に帰省するつもりだし……。
「私……大学……」
「女の子が学歴あったって仕方ないでしょ。こういう時、娘は親の看病に戻るべきなのよ」
美希は「だけど!」と悲鳴のような声を上げた。
「私、西都大学に行きたいって、あれだけ勉強して……」
苦手な数学なんか一日ぶっ通しで十時間以上勉強した。得点源になりそうな得意科目だってさらに磨きをかけた。
「一生懸命に努力して合格したのに……」
母が鼻で笑う音が受話器から漏れた。
「努力? ママが今までどれほど苦労してきたと思ってるの。パパは三人兄弟の末っ子なのに、ママだけが姑と同居させられて。あんなに気の強いお祖母ちゃんのせいで本当に屈辱的な思いをしてきたわ。パパが助けてくれなくても離婚もせずに我慢してきたのは我が子の為よ。それに比べて美希の努力なんて結局自分の為じゃないの」
それは幼い子どもの頃から嫌というほど聞かされた。二年前に祖母が亡くなった後も母は恨みを忘れていない。
「ママはこんなに苦労したのに、それでもお祖父さんの遺産を多く貰える訳じゃないのよ?」
美希の家は祖父の代まで資産家だった。祖父は美希が赤ん坊の頃に他界したが、その後も三人の息子の間で遺産相続の決着がつかないまま現在に至る。父もその兄弟も優柔不断な性格なのだ。
「パパにはこの癌をきっかけに今度こそ遺産相続を先に進めてもらわないとね。ここで美希が頑張ってくれないとママは遺産が貰えないわ」
姑と同居しその世話を引き受けさせられたのに、小舅達は感謝どころか辛く当たってきたのだと母は言う。だから母はその分小舅達より遺産を多く貰いたい。これも美希が物心つく前から散々聞かされてきたことだった。
「お祖父ちゃんの遺産はね、嫁のママには権利が無いの。血の繋がった美希が頑張ってくれれないとママは手に入れられないのよ」
子の死亡時に孫が代襲相続人となる制度を母は誤解したままだ。父が生きているならあくまで相続人は父なのだ。
「ママ、前に説明したように、それはパパに言って……」
「ママから言ってもパパは何もしてくれないもの。娘の貴女がパパに働きかけてくれないと。全然いい方向に進まないわ」
いい方向……。
「ママ、だから私が西都大学の法学部を受験することにしたんじゃない。東大に並ぶほど司法試験の合格率の高い大学で学べば、将来弁護士になれて、そしたら遺産相続だってママに有利なようにしてあげられるかもって」
美希が親元を離れて首都圏以外の大学に進学するのを親に納得させるには、この理由しかなかったのだ。
「別に弁護士なんて他の法科大学院でもなれるでしょ」
「制度上はそうだけど、勉強する環境が整っているところの方が司法試験の合格率だって……」
母は「なぁに~?」と長く続く粘着質な声で美希を遮る。
「偏差値の高い大学じゃないと行く価値がないと言いたいのね? 一流大学一流大学って、美希は本当に心が汚くてダメね。人間の値打ちは偏差値なんかでは決まらないのに貴女って子は醜い考えに染まっていて」
下宿だって反対していたのだと母は言う。
「そんな女の子は自宅から通うちゃんとしたお嬢さんより一段低く見られてしまうわ。いい? 実家から高校の付属の聖星女学院大学に通いなさい。そして親の看病をするの。まともな女の子ならそうするのが普通なんだから」
まとも? でも、世の中の受験生は自分の将来のために自由に大学を選ぶものじゃないの? そして適う限り優秀な人が集まるところで切磋琢磨したいと願うのが普通じゃないの? それに美希の希望と家の都合をかなりすり合わせて、既に認めてくれた進路のはずなのに。
美希が言葉を失っていると母はさらに大袈裟なほど苛立たしげに言い募る。
「貴女は本当にダメ。人間性が歪んでる。どんなに勉強ができても人としての優しさに欠けた冷たい人間。ダメだわ、本当に」
「だって……」
母が口調を変えた。
「あのね、パパが病気じゃ今の会社から出向になるかもよ。お給料だって下がっちゃう。遺産が手に入らない今、パパのお給料が減ったらお金のことが大変。親が病気で経済的に苦しくなるのに、貴女ったらよく自分の大学進学のことなんてワガママが言えるわね。自分さえよければそれでいいと思ってる冷酷な人間。人として最低よね」
美希は目をつむった。美希への人格攻撃は今に始まったことではないから聞き流すとしても、現実的にお金の問題がある。学費の免除や奨学金をざっくり調べたことがあるけれど、一人暮らしをするのにあまり心強いものではない。
「……わかった」
首都圏から五百キロメートル離れた京都の街。東大に次ぐとされるほどの西都大学にさえ合格すれば、母だって自分を手放してくれるだろうと思った。実際、教師や親戚に娘の学業成績の良さを誉めそやされ、母だってまんざらでもない顔をしていたはずだ。
だけど、運は美希に味方してくれなかった。父親が病気……これを振り払って親元を離れることはできない。道義的にも金銭的にも。
――自分はやっぱり逃げられない。
勉強ができても人間性に問題があると言われ続けてきた。これ以上さらに自分を否定する親と闘う気力もない。
「ママ、私……今日これからホテルを引き払って大学に退学手続きに行ってくる」
「もしもし。美希? 京都での下宿、物件は見つかった?」
美希は慌てた。京都の大学に合格したのに未だに適当な物件を見つけられず、こうしてぐずぐずホテルにいると、怠惰だと叱られてしまう。
「ゴメンナサイ。昨日良さそうなワンルームマンションを見つけたけど、ママが気に入るか分からないから今日も別の物件を見に行くつもりなの」
「そう、それは良かった」
しかし、母の「良かった」理由は、美希の全く思いがけないものだった。
「下宿が決まる前で良かったわ。美希、退学しなさい」
「……え?」
「今日はこれから大学で退学の手続きをしてきなさい。そして今夜中に東京に帰って来て」
美希は、驚きのあまり固まった唇を懸命に動かした。
「どうして? 先月入学手続したばかりよ?」
「パパがね、癌だって分かったのよ」
「癌? そんなに悪いの?」
娘が合格したばかりの大学を辞めて駆けつけなければならないほど?
「今はたいしたことないらしいの。でも、これから通院とか色々大変だわ。貴女がいてくれないと困るの。進学なんてしてる場合じゃないわ」
今すぐどうこうというのでないのなら……折角合格した第一志望校を辞めなくても……。もちろん病状に合わせて京都から頻繁に東京に帰省するつもりだし……。
「私……大学……」
「女の子が学歴あったって仕方ないでしょ。こういう時、娘は親の看病に戻るべきなのよ」
美希は「だけど!」と悲鳴のような声を上げた。
「私、西都大学に行きたいって、あれだけ勉強して……」
苦手な数学なんか一日ぶっ通しで十時間以上勉強した。得点源になりそうな得意科目だってさらに磨きをかけた。
「一生懸命に努力して合格したのに……」
母が鼻で笑う音が受話器から漏れた。
「努力? ママが今までどれほど苦労してきたと思ってるの。パパは三人兄弟の末っ子なのに、ママだけが姑と同居させられて。あんなに気の強いお祖母ちゃんのせいで本当に屈辱的な思いをしてきたわ。パパが助けてくれなくても離婚もせずに我慢してきたのは我が子の為よ。それに比べて美希の努力なんて結局自分の為じゃないの」
それは幼い子どもの頃から嫌というほど聞かされた。二年前に祖母が亡くなった後も母は恨みを忘れていない。
「ママはこんなに苦労したのに、それでもお祖父さんの遺産を多く貰える訳じゃないのよ?」
美希の家は祖父の代まで資産家だった。祖父は美希が赤ん坊の頃に他界したが、その後も三人の息子の間で遺産相続の決着がつかないまま現在に至る。父もその兄弟も優柔不断な性格なのだ。
「パパにはこの癌をきっかけに今度こそ遺産相続を先に進めてもらわないとね。ここで美希が頑張ってくれないとママは遺産が貰えないわ」
姑と同居しその世話を引き受けさせられたのに、小舅達は感謝どころか辛く当たってきたのだと母は言う。だから母はその分小舅達より遺産を多く貰いたい。これも美希が物心つく前から散々聞かされてきたことだった。
「お祖父ちゃんの遺産はね、嫁のママには権利が無いの。血の繋がった美希が頑張ってくれれないとママは手に入れられないのよ」
子の死亡時に孫が代襲相続人となる制度を母は誤解したままだ。父が生きているならあくまで相続人は父なのだ。
「ママ、前に説明したように、それはパパに言って……」
「ママから言ってもパパは何もしてくれないもの。娘の貴女がパパに働きかけてくれないと。全然いい方向に進まないわ」
いい方向……。
「ママ、だから私が西都大学の法学部を受験することにしたんじゃない。東大に並ぶほど司法試験の合格率の高い大学で学べば、将来弁護士になれて、そしたら遺産相続だってママに有利なようにしてあげられるかもって」
美希が親元を離れて首都圏以外の大学に進学するのを親に納得させるには、この理由しかなかったのだ。
「別に弁護士なんて他の法科大学院でもなれるでしょ」
「制度上はそうだけど、勉強する環境が整っているところの方が司法試験の合格率だって……」
母は「なぁに~?」と長く続く粘着質な声で美希を遮る。
「偏差値の高い大学じゃないと行く価値がないと言いたいのね? 一流大学一流大学って、美希は本当に心が汚くてダメね。人間の値打ちは偏差値なんかでは決まらないのに貴女って子は醜い考えに染まっていて」
下宿だって反対していたのだと母は言う。
「そんな女の子は自宅から通うちゃんとしたお嬢さんより一段低く見られてしまうわ。いい? 実家から高校の付属の聖星女学院大学に通いなさい。そして親の看病をするの。まともな女の子ならそうするのが普通なんだから」
まとも? でも、世の中の受験生は自分の将来のために自由に大学を選ぶものじゃないの? そして適う限り優秀な人が集まるところで切磋琢磨したいと願うのが普通じゃないの? それに美希の希望と家の都合をかなりすり合わせて、既に認めてくれた進路のはずなのに。
美希が言葉を失っていると母はさらに大袈裟なほど苛立たしげに言い募る。
「貴女は本当にダメ。人間性が歪んでる。どんなに勉強ができても人としての優しさに欠けた冷たい人間。ダメだわ、本当に」
「だって……」
母が口調を変えた。
「あのね、パパが病気じゃ今の会社から出向になるかもよ。お給料だって下がっちゃう。遺産が手に入らない今、パパのお給料が減ったらお金のことが大変。親が病気で経済的に苦しくなるのに、貴女ったらよく自分の大学進学のことなんてワガママが言えるわね。自分さえよければそれでいいと思ってる冷酷な人間。人として最低よね」
美希は目をつむった。美希への人格攻撃は今に始まったことではないから聞き流すとしても、現実的にお金の問題がある。学費の免除や奨学金をざっくり調べたことがあるけれど、一人暮らしをするのにあまり心強いものではない。
「……わかった」
首都圏から五百キロメートル離れた京都の街。東大に次ぐとされるほどの西都大学にさえ合格すれば、母だって自分を手放してくれるだろうと思った。実際、教師や親戚に娘の学業成績の良さを誉めそやされ、母だってまんざらでもない顔をしていたはずだ。
だけど、運は美希に味方してくれなかった。父親が病気……これを振り払って親元を離れることはできない。道義的にも金銭的にも。
――自分はやっぱり逃げられない。
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