kotookiー境界線の鏡のむこうへー2人の台本師ー

天咲琴乃 あまさき ことの

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対等に戦う仲間

9話

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第9話 それぞれの名前で

名前は、立つ場所を決める。
肩書きよりも、役割よりも、
どこに責任を持つかを示すものだ。

同じユニット名で呼ばれていた頃、
私たちは便利だった。
説明しなくてよくて、期待もまとめて引き受けられた。

でもその分、
誰の声なのか、どっちの力がとか
意識しておらず
ふたりで作品を書いていた。
少しずつ曖昧になっていた。

私は自分の名前で文章を書くようになった。
評価も批判も、すべて一人分。
逃げ場はないけれど、誤魔化しもない。

彼もまた、
プロデューサーとして、企画者として、
自分の名前で判断を下すようになった。
表に出ない選択も、
表に出る覚悟も、全部自分のものだ。

それぞれの名前で動くようになってから、
不思議と、相手を呼ばなくなった。

実績を借りない。
関係性で押さない。
「一緒にやってきたから」という言い訳も使わない。

必要なら声をかける。
対等でありたい。
必要でなければ、無理に絡まない。

その距離が、健全だった。

まひるは、まだ揺れている。
名前と役割の間で、
行ったり来たりしている。
それでも、前よりも焦っていない。

織木は手を出さない。
私は言葉を足さない。
自分の名前を引き受けるまで、
待つしかないことを知っているからだ。

それぞれの名前で立つと、
世界は少し厳しくなる。
同時に、少しだけ優しくもなる。

誰かの影に隠れなくていい。
誰かの期待を背負わなくていい。

鏡に映る顔は、
もうユニットの一部じゃない。
個人としての輪郭を持っている。

それでも、線は消えない。
境界線は、個を分断するためにあるんじゃない。
個を保ったまま、つながるためにある。

名前を持つことは、
孤独を引き受けることだ。
でもその孤独は、
誰かに利用されない強さにもなる。

私は自分の名前を、
もう一度、心の中でなぞった。

彼もきっと、
どこかで同じことをしている。

それぞれの名前で。
それぞれの場所で。

終わりは近い。
でも、これは解散の物語じゃない。

始まり直す物語だ。
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