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-1日目-
「円環」
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「川上さん、井ノ上課長が昨日頼んでおいた書類、どうしたって君のことを探してたよ。」
昼休憩の後、戻って早々、同僚で同期の沢井(男)が、声を掛けて来た。
「ルーズリーフに挟んで、いつもの書類入れに保管しておいたけど。」
「無い無いって騒いでたよ。また例の自分で何処かへ置いちゃった病かも知れないけどな(笑)」
「やあねぇまったく、勘弁して欲しいなぁ。早速行ってみる。ありがと。」
よくある事とはいえ、本当に頭が痛い。
「どう致しまして。きっと課長にはどこかに物を隠しちまう小人でも憑いてるんだよ。」
「大丈夫。わたしには物を探し出してくれる小人が憑いてるから♪」
「そりゃいいな。今度俺にも貸してくれよ。」
「そのうちね。」
同期との軽い冗談の会話を交わした後、まずは課長の所へと出頭する事にした。
「川上くん困るよ!大事な書類を渡す前に食事に行っちゃ。午後いちにお得意さんにFAXするって言っちゃってあるんだからさ!」
開口一番、わたしを見つけた課長が怒鳴り始める。
「昨日の内に仕上げて書類入れに入れて置きますねって、課長には昨晩お伝えしておいた筈ですけど。」
正直、午前中の内に確認の為に見ておいて欲しかった。この人はいつもそう、土壇場ギリギリになって騒ぎ始める厄介者だった。
「さっき見てみたけど無かったよ。ホラね?」
課長がもう一度書類入れの一番上の棚をを開ける。
「エェ?おかしいですね。夕べ残業して仕上げたあと、確かにここに入れておいたんですけど・・・。」
「他の所に入れ間違えちゃったんじゃないか?あっ在った!在ったよ!」
課長が上から二段目の棚を開くと、くだんのルーズリーフは、一番上に鎮座していた。
「困るよ。書類は一番上の棚だって、常々口を酸っぱくして、言ってあるだろう?忙しい時にいちいち他の棚なんて探していられないよ。」
「申し訳ありません。確かに一番上の棚に入れたと思ったんですけど。」
「現に二段目の棚に入っていたじゃないか。言い訳はいいよ。取引先には、1時間だけ待ってもらってあるから。これからは気をつけてくれよ。ほら、これ早くFAX送っておいて!」
「ハイ。以後気をつけます。大変申し訳ありませんでした。」
如何ともし難い釈然としない氣持ちを引きずりながらも、わたしは課長に頭を下げると、自分のデスクへ引き上げて送信状の作成に取り掛かった。
当たり前に出来ていた筈の物がきちんと出来ていなかった。こういうあり得ない様なイージーなミスが、仕事をこなしていると自負しているつもりであったわたしには一番堪える。
自分ではそんなつもりは無くても、普段の仕事がルーティン・ワークになってしまっているのだろうか?
また、そんな自分のミスを棚に上げて、課長の所為にしていたこともまた然りだった。
改めて自分自身に問いかけ直さなくてはいけないなと、深く反省した。
そして、朝からの妙な負の連鎖も影響してか、わたしなりにとても凹んでしまった。
昼休憩の後、戻って早々、同僚で同期の沢井(男)が、声を掛けて来た。
「ルーズリーフに挟んで、いつもの書類入れに保管しておいたけど。」
「無い無いって騒いでたよ。また例の自分で何処かへ置いちゃった病かも知れないけどな(笑)」
「やあねぇまったく、勘弁して欲しいなぁ。早速行ってみる。ありがと。」
よくある事とはいえ、本当に頭が痛い。
「どう致しまして。きっと課長にはどこかに物を隠しちまう小人でも憑いてるんだよ。」
「大丈夫。わたしには物を探し出してくれる小人が憑いてるから♪」
「そりゃいいな。今度俺にも貸してくれよ。」
「そのうちね。」
同期との軽い冗談の会話を交わした後、まずは課長の所へと出頭する事にした。
「川上くん困るよ!大事な書類を渡す前に食事に行っちゃ。午後いちにお得意さんにFAXするって言っちゃってあるんだからさ!」
開口一番、わたしを見つけた課長が怒鳴り始める。
「昨日の内に仕上げて書類入れに入れて置きますねって、課長には昨晩お伝えしておいた筈ですけど。」
正直、午前中の内に確認の為に見ておいて欲しかった。この人はいつもそう、土壇場ギリギリになって騒ぎ始める厄介者だった。
「さっき見てみたけど無かったよ。ホラね?」
課長がもう一度書類入れの一番上の棚をを開ける。
「エェ?おかしいですね。夕べ残業して仕上げたあと、確かにここに入れておいたんですけど・・・。」
「他の所に入れ間違えちゃったんじゃないか?あっ在った!在ったよ!」
課長が上から二段目の棚を開くと、くだんのルーズリーフは、一番上に鎮座していた。
「困るよ。書類は一番上の棚だって、常々口を酸っぱくして、言ってあるだろう?忙しい時にいちいち他の棚なんて探していられないよ。」
「申し訳ありません。確かに一番上の棚に入れたと思ったんですけど。」
「現に二段目の棚に入っていたじゃないか。言い訳はいいよ。取引先には、1時間だけ待ってもらってあるから。これからは気をつけてくれよ。ほら、これ早くFAX送っておいて!」
「ハイ。以後気をつけます。大変申し訳ありませんでした。」
如何ともし難い釈然としない氣持ちを引きずりながらも、わたしは課長に頭を下げると、自分のデスクへ引き上げて送信状の作成に取り掛かった。
当たり前に出来ていた筈の物がきちんと出来ていなかった。こういうあり得ない様なイージーなミスが、仕事をこなしていると自負しているつもりであったわたしには一番堪える。
自分ではそんなつもりは無くても、普段の仕事がルーティン・ワークになってしまっているのだろうか?
また、そんな自分のミスを棚に上げて、課長の所為にしていたこともまた然りだった。
改めて自分自身に問いかけ直さなくてはいけないなと、深く反省した。
そして、朝からの妙な負の連鎖も影響してか、わたしなりにとても凹んでしまった。
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