新夢十夜

赤松帝

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第四夜

行列のできないケバブ店

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こんな夢を見た。
私は交差点に佇んでいた。

ぐぅと音が鳴ったところをみると、私は無性に腹が減っている様だった。
周りを見回すと、いつの間にやら目の前に朱いケバブ売りのワゴン車があった。

これ幸いと早速所望したところ、偉そうな口髭を生やした店主に、これはケバブだがケバブでない、と拒まれた。

これは可笑しなことを言う男だ。
ではそのケバブでないケバブをくれないか、と禅問答の如く返した。

すると、男は無言で鉈の様な肉切り包丁をふるって、店先に吊された肉を削ぎ落とすと、かけらを串に刺し手渡して寄越した。

私は串肉にむしゃぶりついた。

何やら昔懐かしい味がした。
はっきりとは覚えていないがいつかどこかで食べた気がした。


“忘れてたろう?”
口髭の男が話し掛けて来た。


“嗚呼、忘れていた。”
そう言い返した途端、記憶の波が一気に押し寄せた。


“ようやく思い出したようだね?”
私の顔を見て、男はにやりと笑みを浮かべた。


“嗚呼、すっかり思い出した。”
私は見覚えのある口髭を見つめて答えた。



随分昔、私はこの男を鉈で打ち殺した。
その後、襲われたあまりのひもじさに耐え兼ねて、仕方なしに男の肉を喰らい、飢えをしのいで生き延びたのだ。


“一体なぜに俺を殺したのだ?”
目の前の男はまたも問い返した。



“いつも俺を叩いて叱るその偉そうな口髭が殺したいほど大嫌いだったからさ。”
私は父に向かってそう答えた。


父は哀しげに口髭をさすると、押し黙ってただ笑みを浮かべた。




 
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