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潜入捜査
潜入捜査
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茉都香の通学する高校は、県内でもトップクラスの偏差値を誇る進学校で、生徒たちはあまり他人に対して関心が無い様に感じられた。校内における競争の激しさも多分に影響しているのかも知れない。社会に出てから弱肉強食の厳しさを今から体感させておく為に、生徒たちの敵愾心を煽るなども日常的な教育の一環なのだという。そんなお陰で大して疑われる事もなく潜入を果たしたわたしは、比較的自由にこの校内を動き回る事が出来た。
予め茉都香のおばさんには、これまでに聞いたことのある名前のコをリストアップしてもらい、この学校に通っている友だちにヘルプの手を借りる手はずも整えておいた。事前に紹介してアポを取っておいてもらい、現地でも何人かにそれとなくアプローチを試みるつもり。
流石に進学校だけあってうちの高校とは違い、折角の夏休みだというのに、図書室で自主学習している利用者は半端なく多い。
冷房が効いてキンキンに冷えた室内はシーンと静まり返っていて、カリカリカリカリという物書きの音だけが無機質に響いている。
これからここでミッションを遂行しなければならないわたしとしては、過大なプレッシャーを感じていた。
「秊(みのり)さん、だよね?」
わたしは周りを見回して頃合いを見計らってから声のトーンをグッと落として、前の席で熱心に暗記に励んでいる女の子に話し掛けた。
「そうだけど・・・誰?」
“出た、明らかに胡散臭いビーム発射!”
「わたしは茉都香の幼馴染みで栞って言うの。秊さんと茉都香とはお友だちだって聞いたんだけど?」
“なんだか紛らわしい。”
「友だち?あたしが?ナイナイ!」
“即断かよ!ふーんイヤな感じ。でもこれ位覚悟の上だからね。負けちゃいられない!”
「でも、茉都香の家でお泊まりしたんでしょ?」
“おばさんからちゃんと聴いてるんだからね!”
「入学して直ぐの話でしょ?そういうの止めてくれる?」
“どういうのでしょう?”
「茉都香がなんで学校に来なくなっちゃったのか、心当たりないかな?」
「さぁ?最近会ってないし、あたしはあたしで勉強があって忙しいから。幼馴染みだって言うんなら、あなたの方が詳しいんじゃないの?時間惜しいからもういい?」
つっけんどんな物言いで参考書に眼を落とす。
「あと1つだけ。茉都香と誰かが付き合ってたとか、秊さん知らないかな?」
「茉都香が男の子と?ナイナイ?」
“そのフレーズあなた好きね。わたしは嫌いだけどな。”
「そっかわかった。どうもありがとう。」
秊が、また参考書に集中し始めたので、これ以上はこの子からは聞き出せないなと判断したわたしは、諦めて座席から腰を浮かせ掛けた。
「あ、でも・・・」
彼女がふと眉を上げた。
「でも?」
わたしも動きを止める。
「そういえば、ここで勉強して帰る時に、体育館に行く渡り廊下のトコで、あの子が誰かと話してるのを見たかも。」
「誰かって知らない人?」
わたしは思わず身体を乗り出した。
「遠くからだったし、かなり怒ってたみたいで茉都香を振り切る様に直ぐ行っちゃったから、顔までは判んない。それになんだか・・・茉都香も人目を気にしてる雰囲気だったから、声を掛けそびれちゃったんだよね。」
「それ、いつ頃の話?」
「う~んそうね、10日くらい前かな?」
そこまで言うと秊は勉強に戻り、もうこちらを見なくなった。
「思い出してくれて助かったわ。どうもありがと。」
どうやら茉都香には、人には言えない関係の相手がいたらしい。わたしはまずまずの収穫があった事に満足した。出足としては好調である。
予め茉都香のおばさんには、これまでに聞いたことのある名前のコをリストアップしてもらい、この学校に通っている友だちにヘルプの手を借りる手はずも整えておいた。事前に紹介してアポを取っておいてもらい、現地でも何人かにそれとなくアプローチを試みるつもり。
流石に進学校だけあってうちの高校とは違い、折角の夏休みだというのに、図書室で自主学習している利用者は半端なく多い。
冷房が効いてキンキンに冷えた室内はシーンと静まり返っていて、カリカリカリカリという物書きの音だけが無機質に響いている。
これからここでミッションを遂行しなければならないわたしとしては、過大なプレッシャーを感じていた。
「秊(みのり)さん、だよね?」
わたしは周りを見回して頃合いを見計らってから声のトーンをグッと落として、前の席で熱心に暗記に励んでいる女の子に話し掛けた。
「そうだけど・・・誰?」
“出た、明らかに胡散臭いビーム発射!”
「わたしは茉都香の幼馴染みで栞って言うの。秊さんと茉都香とはお友だちだって聞いたんだけど?」
“なんだか紛らわしい。”
「友だち?あたしが?ナイナイ!」
“即断かよ!ふーんイヤな感じ。でもこれ位覚悟の上だからね。負けちゃいられない!”
「でも、茉都香の家でお泊まりしたんでしょ?」
“おばさんからちゃんと聴いてるんだからね!”
「入学して直ぐの話でしょ?そういうの止めてくれる?」
“どういうのでしょう?”
「茉都香がなんで学校に来なくなっちゃったのか、心当たりないかな?」
「さぁ?最近会ってないし、あたしはあたしで勉強があって忙しいから。幼馴染みだって言うんなら、あなたの方が詳しいんじゃないの?時間惜しいからもういい?」
つっけんどんな物言いで参考書に眼を落とす。
「あと1つだけ。茉都香と誰かが付き合ってたとか、秊さん知らないかな?」
「茉都香が男の子と?ナイナイ?」
“そのフレーズあなた好きね。わたしは嫌いだけどな。”
「そっかわかった。どうもありがとう。」
秊が、また参考書に集中し始めたので、これ以上はこの子からは聞き出せないなと判断したわたしは、諦めて座席から腰を浮かせ掛けた。
「あ、でも・・・」
彼女がふと眉を上げた。
「でも?」
わたしも動きを止める。
「そういえば、ここで勉強して帰る時に、体育館に行く渡り廊下のトコで、あの子が誰かと話してるのを見たかも。」
「誰かって知らない人?」
わたしは思わず身体を乗り出した。
「遠くからだったし、かなり怒ってたみたいで茉都香を振り切る様に直ぐ行っちゃったから、顔までは判んない。それになんだか・・・茉都香も人目を気にしてる雰囲気だったから、声を掛けそびれちゃったんだよね。」
「それ、いつ頃の話?」
「う~んそうね、10日くらい前かな?」
そこまで言うと秊は勉強に戻り、もうこちらを見なくなった。
「思い出してくれて助かったわ。どうもありがと。」
どうやら茉都香には、人には言えない関係の相手がいたらしい。わたしはまずまずの収穫があった事に満足した。出足としては好調である。
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