123 / 248
24.歌音と巧
歌音と巧
しおりを挟む
「なあ七人みさきって知ってるか?」
車の助手席から神妙な面持ちで小辻巧が問い掛けた。
「何それ?知らない。七人の小人なら知ってるけど。」
運転しながらかぶりを振って加々見歌音が安定のボケでリターンを返した。
「ふうん、そっか。」
巧は巧で慣れたもの、あっさりと引く。
「・・・え?ちょっとだから何なの?」
むしろ歌音の方が食いついていく。
「お、知りたい?」
「知りたいとか知りたくない以前にそのフリが気になるじゃん。人として。」
「そういうもん?」
「そういうもんなの。いいから早く教えなさい!」
歌音は、有無を言わさぬ口調で命令した。
「海の言い伝えというか、民間伝承というか、悪霊というか、そんな感じ?」
「・・・で終わり?」
「以上。」
「ザックリ過ぎ!話のディテールが全然解んないじゃん!内容を話してよ。はい、もう一回!」
「仕方ない人だな。いいかい、七人ミサキに遭った人間は高熱に見舞われ、死んでしまう。1人を取り殺すと七人ミサキの内の霊の1人が成仏し、替わって取り殺された者が七人ミサキの内の1人となる。そのために七人ミサキの人数は常に7人組で、増減することはないという(棒読)。by ウィキペディア・・・なんだってさ。」
巧は読み上げていたスマホを降ろすと、再び歌音と向き合った。
「ちょっ怖えー!!しかもそこスマホ読むなよ!!そもそも何でそんなの教えるのよ~!」
「自分が知りたがったんじゃないか。実に残念な人だな。」
「うるさい!あたしが見えちゃう怖がりなのをよく知ってるくせに!」
「だから予め悪霊の話だって言っておいたろ?」
「妖怪クロックは朝テレビで観てるけど全然怖くなんかないもん!」
歌音は口を尖らせて抗議した。
「あれはアニメの作り話だろッ!?」
「七人の侍だって作り話じゃん!」
「黒澤かッ!」
「ハイハイ七人のみさきだってさ。」
「名前じゃねーわ!七人みさき。」
テンポよく巧がツッコミを入れる。漫才師ならいいコンビになれそうである。
「分かったわよ細かいなぁ。器の小さい男は嫌われるよ。」
「どうせ俺の器はお猪口並みだよ。」
「自分で良く解ってるじゃない。ま、要は作り話でしょ?」
「あのな、民間伝承は全くのでまかせって訳じゃないぞ。ある程度の象徴的な事象が重なった上で、皆に畏怖されて、口述なり、記述なりで現代(いま)に伝えられて来ている訳なんだから。」
巧は呆れ気味に弁舌を振るった。
「豆知識ごときで何を偉そうに・・・ん?・・・ってことはまさかあんた。ビキニ姿のナイスバディーなあたしがいるこの海(ばしょ)はもしや!?」
歌音の声が1段階うわずった。
「ピンポーン♪ご名答!此処は古くから七人みさきが出没する心霊スポットとして有名なこの夏一番静かな海でーす!」
満面の笑みの巧は、嬉々としてお馴染みのビデオカメラを取り出した。
「うわッ信じられなーい!なにが今日はオフショアだ、いい波が来るから泳ぎに行こうぜ、よ!?その割にはボードくらいしか積んで来ないし、なんかおかしいなとは感じてたのよねー。めっちゃムカつく!」
歌音の愚痴はもう止まらない。
だが確かに街の喧騒からは隔絶された、湘南らしからぬ穏やかな夏の海がすぐ目の前に広がっている。
「むむむ、流石は一流オカルトハンターの第六感は侮れないな。」
巧はシラを切ってとぼけてみせた。
「やかましいな!大体、前回のあの気味
悪い心霊映像だって、絶対解析してみせるから俺に任せとけ、なんて偉そうな事言っといて、結局垂流しっ放しじゃないのよ!」
「まぁまぁ。あれはあれ、これはこれって所で、ここは気を取り直して、とっとと着替えてスタンバイしようか?」
「開き直ったわね。大体心霊スポット探訪ならセクシービキニは要らないでしょーよ?」
腕組みして不機嫌な果実を挟みこみ、歌音は巧をキッと睨みつけた。
「そりゃあ七人みさきをおびき寄せるには餌がさ・・・いやいやゴホゴホゴホ・・・」
「なんて言った今?さらっとさりげなく凄いこと言ったわね?」
「今や全世界10億人の中国人マニァ・・・ファンがオカルトハンター歌音の超絶セクシーな水着姿を見たい見たいと楽しみに待っているのだよ。」
「なんなのよ、そのニッチなターゲット層は?あんた、また私を人身御供として晒す気ね?」
「とんでもない、キミの感性には脱帽してるんだよボカぁ。」
「どこの若大将よ。もういいわよ!さっさっと収録して!私、今日はこんがり小麦色に焼けるまでビーチで日光浴するって決めてるんだから!」
いつも以上にテンションMAXで、心霊スポット探訪の収録準備に突入した。
車の助手席から神妙な面持ちで小辻巧が問い掛けた。
「何それ?知らない。七人の小人なら知ってるけど。」
運転しながらかぶりを振って加々見歌音が安定のボケでリターンを返した。
「ふうん、そっか。」
巧は巧で慣れたもの、あっさりと引く。
「・・・え?ちょっとだから何なの?」
むしろ歌音の方が食いついていく。
「お、知りたい?」
「知りたいとか知りたくない以前にそのフリが気になるじゃん。人として。」
「そういうもん?」
「そういうもんなの。いいから早く教えなさい!」
歌音は、有無を言わさぬ口調で命令した。
「海の言い伝えというか、民間伝承というか、悪霊というか、そんな感じ?」
「・・・で終わり?」
「以上。」
「ザックリ過ぎ!話のディテールが全然解んないじゃん!内容を話してよ。はい、もう一回!」
「仕方ない人だな。いいかい、七人ミサキに遭った人間は高熱に見舞われ、死んでしまう。1人を取り殺すと七人ミサキの内の霊の1人が成仏し、替わって取り殺された者が七人ミサキの内の1人となる。そのために七人ミサキの人数は常に7人組で、増減することはないという(棒読)。by ウィキペディア・・・なんだってさ。」
巧は読み上げていたスマホを降ろすと、再び歌音と向き合った。
「ちょっ怖えー!!しかもそこスマホ読むなよ!!そもそも何でそんなの教えるのよ~!」
「自分が知りたがったんじゃないか。実に残念な人だな。」
「うるさい!あたしが見えちゃう怖がりなのをよく知ってるくせに!」
「だから予め悪霊の話だって言っておいたろ?」
「妖怪クロックは朝テレビで観てるけど全然怖くなんかないもん!」
歌音は口を尖らせて抗議した。
「あれはアニメの作り話だろッ!?」
「七人の侍だって作り話じゃん!」
「黒澤かッ!」
「ハイハイ七人のみさきだってさ。」
「名前じゃねーわ!七人みさき。」
テンポよく巧がツッコミを入れる。漫才師ならいいコンビになれそうである。
「分かったわよ細かいなぁ。器の小さい男は嫌われるよ。」
「どうせ俺の器はお猪口並みだよ。」
「自分で良く解ってるじゃない。ま、要は作り話でしょ?」
「あのな、民間伝承は全くのでまかせって訳じゃないぞ。ある程度の象徴的な事象が重なった上で、皆に畏怖されて、口述なり、記述なりで現代(いま)に伝えられて来ている訳なんだから。」
巧は呆れ気味に弁舌を振るった。
「豆知識ごときで何を偉そうに・・・ん?・・・ってことはまさかあんた。ビキニ姿のナイスバディーなあたしがいるこの海(ばしょ)はもしや!?」
歌音の声が1段階うわずった。
「ピンポーン♪ご名答!此処は古くから七人みさきが出没する心霊スポットとして有名なこの夏一番静かな海でーす!」
満面の笑みの巧は、嬉々としてお馴染みのビデオカメラを取り出した。
「うわッ信じられなーい!なにが今日はオフショアだ、いい波が来るから泳ぎに行こうぜ、よ!?その割にはボードくらいしか積んで来ないし、なんかおかしいなとは感じてたのよねー。めっちゃムカつく!」
歌音の愚痴はもう止まらない。
だが確かに街の喧騒からは隔絶された、湘南らしからぬ穏やかな夏の海がすぐ目の前に広がっている。
「むむむ、流石は一流オカルトハンターの第六感は侮れないな。」
巧はシラを切ってとぼけてみせた。
「やかましいな!大体、前回のあの気味
悪い心霊映像だって、絶対解析してみせるから俺に任せとけ、なんて偉そうな事言っといて、結局垂流しっ放しじゃないのよ!」
「まぁまぁ。あれはあれ、これはこれって所で、ここは気を取り直して、とっとと着替えてスタンバイしようか?」
「開き直ったわね。大体心霊スポット探訪ならセクシービキニは要らないでしょーよ?」
腕組みして不機嫌な果実を挟みこみ、歌音は巧をキッと睨みつけた。
「そりゃあ七人みさきをおびき寄せるには餌がさ・・・いやいやゴホゴホゴホ・・・」
「なんて言った今?さらっとさりげなく凄いこと言ったわね?」
「今や全世界10億人の中国人マニァ・・・ファンがオカルトハンター歌音の超絶セクシーな水着姿を見たい見たいと楽しみに待っているのだよ。」
「なんなのよ、そのニッチなターゲット層は?あんた、また私を人身御供として晒す気ね?」
「とんでもない、キミの感性には脱帽してるんだよボカぁ。」
「どこの若大将よ。もういいわよ!さっさっと収録して!私、今日はこんがり小麦色に焼けるまでビーチで日光浴するって決めてるんだから!」
いつも以上にテンションMAXで、心霊スポット探訪の収録準備に突入した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる