Fatal reunion〜再会から始まる異世界生活

霜月かずひこ

文字の大きさ
40 / 50
第二章:他罰性の化け物

第三十七話 忍び寄る陰謀

しおりを挟む
 転移魔法で城の中庭へやって来た私たちの目に飛び込んできたのは、せわしくなく動き回る憲兵団の姿だった。
 
「結界の張り直しを急げ―!」

「「はい!」」 

 城門の方へ重そうな荷物を抱えて走る憲兵たち。
 その傍らでは城の中へ住民を誘導している憲兵の姿も見える。
 城から煙が上がっていないところからして、なんとか間に合ったと思っても良いのかしら。
 なんて辺りを見渡しながら考えていると、広場の中心にアキトの姿を見つけた。

「…………」

 非常事態ということもあってか、いつものローブの下に白銀の鎧を纏ったアキトは憲兵さんたちに何か指示を出している。

「アキト様!」

 そんなことを気にすることもなく、メロアはアキトを見つけるなり、駆け寄っていった。

「っ!」

 メロアの呼びかけでアキトも私たちに気付いたのだろう。

「……俺からの話は以上だ。後は城で待機しておいてくれ」

 憲兵さんたちに指示を出すと、人混みの中から私たちの方へと出てきてくれた。

「よかった。二人とも無事だったんだな」

「まぁ、なんとかね。食糧の買い出しに出たつもりが悪魔と戦うことになって大変だったのよ」

「やはりそうだったか。二人も奴らと戦ってたんだな」

 納得したようなアキトの呟きにメロアが反応する。

「はい。街を襲う悪魔を殲滅した後、敵の狙いがここだと判明したので急いで戻って来ました。お城の状況はどうなっていますか?」

「ああ、それなら問題はない。先ほど悪魔の軍勢が攻めて来たが城の設備を利用してほとんど返り討ちにした。こちらに被害はほとんど出ていない」

 よかった。
 どうやらベルゼがいうところの別動隊の作戦は失敗したらしい。
 ほっと胸を撫で下ろしていると、アキトがメロアに尋ねた。

「それより二人が戦った悪魔どもについて詳しく聞かせてくれないか?」

「はい。実は…………」

 メロアは二つ返事でここに至るまでの経緯を話し始めた。
 食料を買いに出たところ悪魔の襲撃に巻き込まれたこと。
 孤児院を守るためにアシュリンが出て行ったこと。
 悪魔の王ベルゼと戦い、打ち取ったこと。
 特にベルゼを既に討ち取っていたことに関してはアキトも相当驚いたようで、

「よくやったメロア。大金星だ」

 珍しく名前を呼んでメロアを褒めていた。
 そして互いの状況を掴めたところでアキトが本題に切り込んだ。
 
「そうなると残る課題は氷夜をどうするかだな」

「ええ、このまま放っては置けないわ」

 現状、氷夜を匿っている旧領事館には氷夜しかいない。
 氷夜を殺そうとしている連中に見つかったりでもしたら一巻の終わりだ。

「でも下手に動けば氷夜をつけ狙ってる奴らに見つかる恐れもあるのよね」

「ああ、どちらにせよリスクは伴うだろうな」

 私の言葉に相槌を打ってアキトは視線を再びメロアに移した。

「…………クラムベール、まだ余力はあるか?」

「はい、転移魔法で行って戻って来るくらいなら全然余裕です!」

「よし。であれば転移魔法で旧領事館へ向かってくれ。着いてからはしばらく様子を見る。クラムベールも現地に残って氷夜の警護にあたるように」

「承知しました!」

 アキトから支持を受けて嬉しそうに敬礼で答えるメロア。
 私はベルゼの最後の言葉が引っかかって、つい口を挟んでしまう。

「いいの? こんな状況でもメロアを借りちゃって。まだベルゼが言うところの我が盟友ってのがいるかもしれないわよ?」

「――構わない。何が来ようと城の設備を使えば多少は持ちこたえられる。それにその盟友とやらもはったりの可能性もあるからな」

 まぁ……そういうことなら問題ないか。
 アキトがここまで言っているんだもの。
 これ以上の心配は余計なお世話よね。

「わかったわ。それじゃ遠慮せずメロアを借りていくわね」

「ああ、そうしてくれ」

 こうして話がまとまりかけた……その時だった。

「た、大変っす!」

 ガタッと勢いよく開かれる城の扉。
 そこから飛び出してきた憲兵のジャックはアキトの顔を見るなり、こちらに駆け寄って来た。

「牢屋にいるはずの転移者・兜花正幸の姿が消えました! おそらく脱獄したものだと思われます!」

「何だと!? 見張りはどうした!?」

「それが…………見張りにあたっていたナンシーもいなくなってて、どこかに連れ去られたんだと思います」

「っ!?」

 顔は見えないのにアキトが息を呑むのが分かった。
 多分、私もメロアもアキトと同じような反応をしていたと思う。

 氷夜を今の状況に追いやった兜花正幸の脱走、そして見張りの失踪。
 考えられる限り最悪の事態とだけあって、誰もがすぐには言葉を紡ぎだせない。
 そんな重い空気の中、アキトが沈黙を破った。

「…………だがこれで悪魔の王が言っていた盟友とやらの正体はわかったな。状況証拠的にも兜花正幸と睨んで間違いだろう」

「ええ、そうね」

 ベルゼが街のど真ん中で大立ち回りしていたのも、全ては城から注意を逸らすためだったと考えれば合点が行く。
 実際に私たちはまんまとしてやられたのだから。

「時間はあまりなさそうだ。とりあえず今はナンシーと正幸を探すぞ。まずは……」

「よぉ、随分と賑やかじゃねえか?」

「「「っ!」」

 一体いつからいたのだろうか。
 慌てて振り向くとそこには兜花正幸と見張り役のナンシーが立っていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

処理中です...