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第二章:他罰性の化け物
第三十七話 忍び寄る陰謀
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転移魔法で城の中庭へやって来た私たちの目に飛び込んできたのは、せわしくなく動き回る憲兵団の姿だった。
「結界の張り直しを急げ―!」
「「はい!」」
城門の方へ重そうな荷物を抱えて走る憲兵たち。
その傍らでは城の中へ住民を誘導している憲兵の姿も見える。
城から煙が上がっていないところからして、なんとか間に合ったと思っても良いのかしら。
なんて辺りを見渡しながら考えていると、広場の中心にアキトの姿を見つけた。
「…………」
非常事態ということもあってか、いつものローブの下に白銀の鎧を纏ったアキトは憲兵さんたちに何か指示を出している。
「アキト様!」
そんなことを気にすることもなく、メロアはアキトを見つけるなり、駆け寄っていった。
「っ!」
メロアの呼びかけでアキトも私たちに気付いたのだろう。
「……俺からの話は以上だ。後は城で待機しておいてくれ」
憲兵さんたちに指示を出すと、人混みの中から私たちの方へと出てきてくれた。
「よかった。二人とも無事だったんだな」
「まぁ、なんとかね。食糧の買い出しに出たつもりが悪魔と戦うことになって大変だったのよ」
「やはりそうだったか。二人も奴らと戦ってたんだな」
納得したようなアキトの呟きにメロアが反応する。
「はい。街を襲う悪魔を殲滅した後、敵の狙いがここだと判明したので急いで戻って来ました。お城の状況はどうなっていますか?」
「ああ、それなら問題はない。先ほど悪魔の軍勢が攻めて来たが城の設備を利用してほとんど返り討ちにした。こちらに被害はほとんど出ていない」
よかった。
どうやらベルゼがいうところの別動隊の作戦は失敗したらしい。
ほっと胸を撫で下ろしていると、アキトがメロアに尋ねた。
「それより二人が戦った悪魔どもについて詳しく聞かせてくれないか?」
「はい。実は…………」
メロアは二つ返事でここに至るまでの経緯を話し始めた。
食料を買いに出たところ悪魔の襲撃に巻き込まれたこと。
孤児院を守るためにアシュリンが出て行ったこと。
悪魔の王ベルゼと戦い、打ち取ったこと。
特にベルゼを既に討ち取っていたことに関してはアキトも相当驚いたようで、
「よくやったメロア。大金星だ」
珍しく名前を呼んでメロアを褒めていた。
そして互いの状況を掴めたところでアキトが本題に切り込んだ。
「そうなると残る課題は氷夜をどうするかだな」
「ええ、このまま放っては置けないわ」
現状、氷夜を匿っている旧領事館には氷夜しかいない。
氷夜を殺そうとしている連中に見つかったりでもしたら一巻の終わりだ。
「でも下手に動けば氷夜をつけ狙ってる奴らに見つかる恐れもあるのよね」
「ああ、どちらにせよリスクは伴うだろうな」
私の言葉に相槌を打ってアキトは視線を再びメロアに移した。
「…………クラムベール、まだ余力はあるか?」
「はい、転移魔法で行って戻って来るくらいなら全然余裕です!」
「よし。であれば転移魔法で旧領事館へ向かってくれ。着いてからはしばらく様子を見る。クラムベールも現地に残って氷夜の警護にあたるように」
「承知しました!」
アキトから支持を受けて嬉しそうに敬礼で答えるメロア。
私はベルゼの最後の言葉が引っかかって、つい口を挟んでしまう。
「いいの? こんな状況でもメロアを借りちゃって。まだベルゼが言うところの我が盟友ってのがいるかもしれないわよ?」
「――構わない。何が来ようと城の設備を使えば多少は持ちこたえられる。それにその盟友とやらもはったりの可能性もあるからな」
まぁ……そういうことなら問題ないか。
アキトがここまで言っているんだもの。
これ以上の心配は余計なお世話よね。
「わかったわ。それじゃ遠慮せずメロアを借りていくわね」
「ああ、そうしてくれ」
こうして話がまとまりかけた……その時だった。
「た、大変っす!」
ガタッと勢いよく開かれる城の扉。
そこから飛び出してきた憲兵のジャックはアキトの顔を見るなり、こちらに駆け寄って来た。
「牢屋にいるはずの転移者・兜花正幸の姿が消えました! おそらく脱獄したものだと思われます!」
「何だと!? 見張りはどうした!?」
「それが…………見張りにあたっていたナンシーもいなくなってて、どこかに連れ去られたんだと思います」
「っ!?」
顔は見えないのにアキトが息を呑むのが分かった。
多分、私もメロアもアキトと同じような反応をしていたと思う。
氷夜を今の状況に追いやった兜花正幸の脱走、そして見張りの失踪。
考えられる限り最悪の事態とだけあって、誰もがすぐには言葉を紡ぎだせない。
そんな重い空気の中、アキトが沈黙を破った。
「…………だがこれで悪魔の王が言っていた盟友とやらの正体はわかったな。状況証拠的にも兜花正幸と睨んで間違いだろう」
「ええ、そうね」
ベルゼが街のど真ん中で大立ち回りしていたのも、全ては城から注意を逸らすためだったと考えれば合点が行く。
実際に私たちはまんまとしてやられたのだから。
「時間はあまりなさそうだ。とりあえず今はナンシーと正幸を探すぞ。まずは……」
「よぉ、随分と賑やかじゃねえか?」
「「「っ!」」
一体いつからいたのだろうか。
慌てて振り向くとそこには兜花正幸と見張り役のナンシーが立っていた。
「結界の張り直しを急げ―!」
「「はい!」」
城門の方へ重そうな荷物を抱えて走る憲兵たち。
その傍らでは城の中へ住民を誘導している憲兵の姿も見える。
城から煙が上がっていないところからして、なんとか間に合ったと思っても良いのかしら。
なんて辺りを見渡しながら考えていると、広場の中心にアキトの姿を見つけた。
「…………」
非常事態ということもあってか、いつものローブの下に白銀の鎧を纏ったアキトは憲兵さんたちに何か指示を出している。
「アキト様!」
そんなことを気にすることもなく、メロアはアキトを見つけるなり、駆け寄っていった。
「っ!」
メロアの呼びかけでアキトも私たちに気付いたのだろう。
「……俺からの話は以上だ。後は城で待機しておいてくれ」
憲兵さんたちに指示を出すと、人混みの中から私たちの方へと出てきてくれた。
「よかった。二人とも無事だったんだな」
「まぁ、なんとかね。食糧の買い出しに出たつもりが悪魔と戦うことになって大変だったのよ」
「やはりそうだったか。二人も奴らと戦ってたんだな」
納得したようなアキトの呟きにメロアが反応する。
「はい。街を襲う悪魔を殲滅した後、敵の狙いがここだと判明したので急いで戻って来ました。お城の状況はどうなっていますか?」
「ああ、それなら問題はない。先ほど悪魔の軍勢が攻めて来たが城の設備を利用してほとんど返り討ちにした。こちらに被害はほとんど出ていない」
よかった。
どうやらベルゼがいうところの別動隊の作戦は失敗したらしい。
ほっと胸を撫で下ろしていると、アキトがメロアに尋ねた。
「それより二人が戦った悪魔どもについて詳しく聞かせてくれないか?」
「はい。実は…………」
メロアは二つ返事でここに至るまでの経緯を話し始めた。
食料を買いに出たところ悪魔の襲撃に巻き込まれたこと。
孤児院を守るためにアシュリンが出て行ったこと。
悪魔の王ベルゼと戦い、打ち取ったこと。
特にベルゼを既に討ち取っていたことに関してはアキトも相当驚いたようで、
「よくやったメロア。大金星だ」
珍しく名前を呼んでメロアを褒めていた。
そして互いの状況を掴めたところでアキトが本題に切り込んだ。
「そうなると残る課題は氷夜をどうするかだな」
「ええ、このまま放っては置けないわ」
現状、氷夜を匿っている旧領事館には氷夜しかいない。
氷夜を殺そうとしている連中に見つかったりでもしたら一巻の終わりだ。
「でも下手に動けば氷夜をつけ狙ってる奴らに見つかる恐れもあるのよね」
「ああ、どちらにせよリスクは伴うだろうな」
私の言葉に相槌を打ってアキトは視線を再びメロアに移した。
「…………クラムベール、まだ余力はあるか?」
「はい、転移魔法で行って戻って来るくらいなら全然余裕です!」
「よし。であれば転移魔法で旧領事館へ向かってくれ。着いてからはしばらく様子を見る。クラムベールも現地に残って氷夜の警護にあたるように」
「承知しました!」
アキトから支持を受けて嬉しそうに敬礼で答えるメロア。
私はベルゼの最後の言葉が引っかかって、つい口を挟んでしまう。
「いいの? こんな状況でもメロアを借りちゃって。まだベルゼが言うところの我が盟友ってのがいるかもしれないわよ?」
「――構わない。何が来ようと城の設備を使えば多少は持ちこたえられる。それにその盟友とやらもはったりの可能性もあるからな」
まぁ……そういうことなら問題ないか。
アキトがここまで言っているんだもの。
これ以上の心配は余計なお世話よね。
「わかったわ。それじゃ遠慮せずメロアを借りていくわね」
「ああ、そうしてくれ」
こうして話がまとまりかけた……その時だった。
「た、大変っす!」
ガタッと勢いよく開かれる城の扉。
そこから飛び出してきた憲兵のジャックはアキトの顔を見るなり、こちらに駆け寄って来た。
「牢屋にいるはずの転移者・兜花正幸の姿が消えました! おそらく脱獄したものだと思われます!」
「何だと!? 見張りはどうした!?」
「それが…………見張りにあたっていたナンシーもいなくなってて、どこかに連れ去られたんだと思います」
「っ!?」
顔は見えないのにアキトが息を呑むのが分かった。
多分、私もメロアもアキトと同じような反応をしていたと思う。
氷夜を今の状況に追いやった兜花正幸の脱走、そして見張りの失踪。
考えられる限り最悪の事態とだけあって、誰もがすぐには言葉を紡ぎだせない。
そんな重い空気の中、アキトが沈黙を破った。
「…………だがこれで悪魔の王が言っていた盟友とやらの正体はわかったな。状況証拠的にも兜花正幸と睨んで間違いだろう」
「ええ、そうね」
ベルゼが街のど真ん中で大立ち回りしていたのも、全ては城から注意を逸らすためだったと考えれば合点が行く。
実際に私たちはまんまとしてやられたのだから。
「時間はあまりなさそうだ。とりあえず今はナンシーと正幸を探すぞ。まずは……」
「よぉ、随分と賑やかじゃねえか?」
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慌てて振り向くとそこには兜花正幸と見張り役のナンシーが立っていた。
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