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春のうららかな陽気に起き上がることすら億劫とでも言いたげな表情をしたままベッドでごろごろする一人の女子校生、リーリエこと牧原百合恵だ。彼女が不意に手帳型端末を起動すると、
「マスター、今日から学校よ? ほら、起きて」
搭載されたAIの声が響いた。百合恵が与えた名前はダリア、性格はお姉さん系統だ。なにかと堕落しがちな百合恵を見届けるまさしく姉のような存在。そんなダリアに学校の存在をはっと思い出した百合恵は急ぎに急いで学校へ行く仕度を済ませ家を飛び出した。母親が作ってくれたサンドイッチ片手に猛ダッシュ。どんなに文明が高度になろうとも、学校に行くのが学生の勤めなのだ。
「マスター、頑張って。いいペースよ! 消費カロリー計算しようか?」
「それはいらない! タイム計測だけお願いね!」
「OK」
AIのダリアと気さくに会話しながら通学路を駆け抜ける百合恵、現実での身体能力がVRでの身体能力に直結するわけではないが、百合恵は現実でのトレーニングも欠かさないタイプだ。その脚力は時に自転車と併走する。
「おはよう!」
たまたま走っていたのが去年からの同級生だったため、軽く挨拶を交わすが挨拶された方も慣れた様子で返し、また自転車を漕ぐ。無事ある程度の余裕を持って教室に入った百合恵は、自分の席に座ると左斜め前に座る花城緋奈を目で追う。艶やかな黒髪、ほっそりとした体躯、怜悧な面持ち、その大人びた雰囲気の全てが百合恵の憧れである。その憧憬はもはや恋愛感情に近いものだと、気付いた時には行動に出たがる百合恵だが、今回ばかりは躊躇した。
「うぅん……」
まずは友達になりたい、ゆくゆくは愛し合いたい、そんな男子中学生のような妄想にとらわれたかれこれ二週間経つ。二年生になったその日、百合恵は緋奈と初めて直接会ったのだ。その時の昂揚が未だに続いている、百合恵の思いは確固たるものだった。その日もまた一日悩み続け、とうとう百合恵は行動にうってでた。掃除の時間に緋奈へ声をかけたのだ。
「あ、あの、花城さん……少し時間もらえない?」
「いいわよ? 今から?」
「え!? あ、考えてなかった。その、二人きりになりたくて」
百合恵の言葉に少し首をかしげながら、緋奈は待ち合わせの場所と時間を提案した。
「VRシティの中央広場に19時ちょうど。そうね……獅子像の前なんてどうかしら?」
広い電脳空間の都市にある中央広場、黄道十二星座をモチーフにした像が配置されているが、その獅子を指定した緋奈。その意味に百合恵は目を見開いた。
「わ、分かった。うん、じゃあ……またね」
「マスター、今日から学校よ? ほら、起きて」
搭載されたAIの声が響いた。百合恵が与えた名前はダリア、性格はお姉さん系統だ。なにかと堕落しがちな百合恵を見届けるまさしく姉のような存在。そんなダリアに学校の存在をはっと思い出した百合恵は急ぎに急いで学校へ行く仕度を済ませ家を飛び出した。母親が作ってくれたサンドイッチ片手に猛ダッシュ。どんなに文明が高度になろうとも、学校に行くのが学生の勤めなのだ。
「マスター、頑張って。いいペースよ! 消費カロリー計算しようか?」
「それはいらない! タイム計測だけお願いね!」
「OK」
AIのダリアと気さくに会話しながら通学路を駆け抜ける百合恵、現実での身体能力がVRでの身体能力に直結するわけではないが、百合恵は現実でのトレーニングも欠かさないタイプだ。その脚力は時に自転車と併走する。
「おはよう!」
たまたま走っていたのが去年からの同級生だったため、軽く挨拶を交わすが挨拶された方も慣れた様子で返し、また自転車を漕ぐ。無事ある程度の余裕を持って教室に入った百合恵は、自分の席に座ると左斜め前に座る花城緋奈を目で追う。艶やかな黒髪、ほっそりとした体躯、怜悧な面持ち、その大人びた雰囲気の全てが百合恵の憧れである。その憧憬はもはや恋愛感情に近いものだと、気付いた時には行動に出たがる百合恵だが、今回ばかりは躊躇した。
「うぅん……」
まずは友達になりたい、ゆくゆくは愛し合いたい、そんな男子中学生のような妄想にとらわれたかれこれ二週間経つ。二年生になったその日、百合恵は緋奈と初めて直接会ったのだ。その時の昂揚が未だに続いている、百合恵の思いは確固たるものだった。その日もまた一日悩み続け、とうとう百合恵は行動にうってでた。掃除の時間に緋奈へ声をかけたのだ。
「あ、あの、花城さん……少し時間もらえない?」
「いいわよ? 今から?」
「え!? あ、考えてなかった。その、二人きりになりたくて」
百合恵の言葉に少し首をかしげながら、緋奈は待ち合わせの場所と時間を提案した。
「VRシティの中央広場に19時ちょうど。そうね……獅子像の前なんてどうかしら?」
広い電脳空間の都市にある中央広場、黄道十二星座をモチーフにした像が配置されているが、その獅子を指定した緋奈。その意味に百合恵は目を見開いた。
「わ、分かった。うん、じゃあ……またね」
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