まさかこんな場所で貴女と逢うなんて

唯の反応

　翌日、当たり前だが学校には行く。だけど、今日ばかりはとても憂鬱だ。優奈は、いつも通りの優奈だった。昨日のことは夢だったんじゃないかと思うくらい。
だけど、唯の顔を見るなり優奈の表情が変わった。唯もまた、普段とは違う顔をしていた。まるで、これから決闘でも始めるような。そんな雰囲気すら感じた。
　昼休み、屋上に向かうとすでに唯が居た。……それもそうか、彼女に呼び出されたのだから。

「おまたせ～って……なんか違うか」
「挨拶は大事よ。それはさておき、遥奈。今朝から矢作さんに睨まれているというか、視線を感じるのだけれど……どういうことかしら？」
「それはなんていうか……」

　なんて言えばいいんだろ。素直に告白した方がいいのかな。でも、そうしたら唯との関係はどうなっちゃうんだろう……。
　でも、このまま黙っているわけにもいかないよね。
　私は意を決して口を開いた。唯との関係を壊したくない。だけど、隠し事だって良くないはずだ。……あれ、私って唯との関係を壊したくないのかな。勝手に抱かれてお世話するハメになって。でも……放っておけない存在っていうか。よく分からないけど、唯を失いたくはないんだ。だから、話そう。

「昨日、優奈とセックスした」
「……」

　唯が呆然としている。そりゃそうだよね。いきなりこんなことを言われたら誰だってそうなるだろう。

「ごめんなさい」

　とりあえず謝った。唯が怒るか、悲しむか、私には想像できない。だけど、なんとなくだけど……唯が何かに悩んでいるのだけは分かる。それが何なのかまではわからないけど。

「遥奈」
「はい」
「それはカラダだけの関係？　それともココロからの関係？」

　なんだか難しい質問をされた気がする。唯が何を考えているのか読めない。
私はどう答えればいいのか分からなかった。優奈のことは好きだけど、恋愛関係かと言われれば……正直、違う。

「優奈は私のことを好きだって言ってくれた。でも、その……えっと……」

　唯の方が好きだから断ったなんてことは流石に本人には言えず……。そもそも、私と唯の関係だって唯に言わせればカラダだけの関係だ。私は唯にとって……なんなんだろう。

「いいんじゃない、セフレだって。わたしと貴女だってそうでしょう？」

　唯は私が優奈と関係を持ったことを咎めなかった。それが私にとって嬉しいことなのか、悲しいことなのか、分からなかった。そうか、私と唯も結局はセフレなんだ。唯にとっての私は都合の良い存在でしかないのかな。そう思った瞬間、やっぱり私は優奈と関係を持ったことで唯に怒られたかったのだと分かった。

「遥奈、今日の放課後は空いてるの？」
「え……まぁ、うん」
「そう。じゃあ、せっかくだから矢作さんも連れて家に来なさい」

　……あーあ、やっぱり私とんでもない人を好きになってしまったみたいだ。