夜空に咲くは百合の花

楠富 つかさ

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#5 遅刻

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「やってしまった……。ヤっちゃったもんね」

 週の半ば、水曜日。現在の時刻は08:22である。明らかに学校に間に合ってない時間だ。多分もうすぐ朝礼が終わるから学校から寮母さんに電話が行って見に来る頃と思われる。

「ん……ぅん」

 隣では瑠奈ちゃんが全裸でスヤスヤと寝息を立てている。もう一度、今の状況を確認すると、平日の朝なのにベッドの上で寝惚けた最愛の彼女を眺めています。

「瑠奈ちゃーん、起きて!」

 翌朝こういう状態になってしまうため、肌を重ねるのは金曜日か祝日の前夜といった問題ない日だけなのだが……昨日はお互いの愛情を確かめたこともあって、養生シートも敷かないまま愛し合って……結果がこれである。

「ん……。お、おはよぅ……。いま、なんじ?」
「大惨事」
「?」

 寝ぼけた瑠奈ちゃんに定番のギャグが通じず、唇を貪られる。

「んちゅ……ちゅ、ちゅぅ」
「起きてー、学校あるから!」

 すぐに瑠奈ちゃんも意識をしっかりさせて、身支度を調える。今からなら一時間目にちょっとの遅刻で済むはず。

「急ぎましょう」

 瑠奈ちゃんの切り替えの早さ、やっぱりまだ着いていけない部分かも。


 学校へ向かうと小守さんが私と瑠奈ちゃんの席の間に立っていた。

「あ、お二人とも。今朝はどうしてしまったのですか?」

 ……流石は委員長。真面目だ。朝礼で配布されたプリントをまとめてくれていた。

「えっと、まぁ、その……つい、ね」
「そうですか。気をつけて下さいね」
「そうね」

 小守さんの言葉にさらっと返事をして着席する瑠奈ちゃん。……瑠奈ちゃん、小守さんに悪い印象持っちゃってるよねぇ。私のせいだけど。口調にどこか棘かある感じするし。自分の席へ戻る小守さんの後姿がちょっと悲しげ。

「瑠奈ちゃん、ちょっと……」

 瑠奈ちゃんを連れて向かった先はトイレの個室。

「あのね、瑠奈ちゃん。小守さんのこと、悪く思わないであげて」
「それは、分かっているわ……」

 瑠奈ちゃんはそのクールな雰囲気から、どうにも勘違いされることも多いし、口数も多くないから誤解もなかなか解けない。私が頑張って解くんだけど、瑠奈ちゃんは私が離れるの嫌で、解いている最中に私を連れて部屋に戻っちゃうこともしばしば。生徒会役員になってからはそういった誤解も減ってきたけれど、学年の一部の人たちと若干の溝があるのも事実。

「大丈夫、瑠奈ちゃんは私が護るから」

 そう言って口付けを交わす。これは契りだ。

「「んちゅ……ちゅぅ」」

 何度も重ねてきた口づけ全てに、それぞれ意味がある。言わずとも伝わる言葉が込められている。

「っちゅ、ん、はぁ……」」

 伝わってくる。瑠奈ちゃんも私を護ろうとしてくれている。

「大丈夫だよ、どんな困難も私たちなら乗り越えられる」
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