10 / 20
#9
しおりを挟む
キスって……どうしてキスしたら雨月が私の包丁を操作できるっていうんだろうか。
「……キスすればいいの?」
「粘膜接触って言ったら、そうでしょう? それ以外に何があるっていうんですか?」
確かに……と納得しかけて、いや待って。
「私まだ誰ともしたことないし!」
「私もないよ?」
そりゃあ双子だし、私がないのに雨月が経験ありだったらちょっと泣いちゃうかも。
「な……何を今更照れてるんですか!? さっきまでもっとすごいことやってたでしょ!?」
「そういう問題じゃなくてね!?」
エレノアがやんややんや言ってくるけど、正直ファーストキスは大事にしたいというか。
「というか、そもそも粘膜ってどこのこと!?」
「それは、あの……」
エレノアもさすがに言い淀む。
「……口の中?」
雨月がぽつりとつぶやく。ドラゴンがバテているのか少しだけ動きが緩慢になっている。だから雨月のいつものしゃべりでも普通に聞き取れる。
「マジで!?」
「だから、早くしてくださいってば!!」
「急かさないでよ。ベロチューってことでしょ? やり方わかんないよ。エレノアのはしたことあるの?」
「な、な……な、ないですよ!! 私、これでも貴族ですからね!?」
なんでそこで強気に出たのかはちょっと分からないけど、瀕死とはいえドラゴンを前になんて緊張感のないやり取りなのだろうか。
「グルルルルゥウウウッ!!」
ドラゴンが咆哮する。流石に自動回復とかそういうのはなさそうだけど、あんまり放置するのもまずい気がする。
「私、分かる。漫画で見たことあるし」
雨月が私の目をじっと見てそう言った。私とほぼ同じ顔だけど、少しだけたれ目、私より家にいる時間が長い分日焼けもしてない。現実離れした環境にいるせいか、普段よりもずっと可愛く見える。
「う、雨月なら……いいよ」
「私も、晴日だから。ファーストキス、あげたい。……エレノア、ドラゴンの動きを止めて」
「さらっと無茶を言わないでください!」
慌てて杖をぎゅっと抱き寄せるエレノア。けど、私の最愛の妹はいつも通りの冷静さだった。
「あんなに弱ってるドラゴンなんだから、大丈夫。エレノアならできるよ」
「あんまり長い時間は期待しないでくださいね。――聖なる鎖よ悪しき者に戒めを! ディバインチェイン!!」
杖の下端を地面にぎゅっと打ち付けると、ドラゴンに光の鎖がまとわりついて、頭を低い位置に固定した。
「時間省略のために少しだけ口を開いて待ってて」
キスと聞いて唇をすぼめて待ちそうだった私は慌てて「お」の音を出すときと同じくらいの口を開いた。そこに雨月の顔がぐいぐい近づいてくる。
「大好きだよ」
「――!? んちゅ、ちゅぷ……ぬぅ……」
まさかの告白からのキス、目を丸くする私の唇に雨月の唇が重なり、そのまま舌が私のそれに触る。雨月の左手が私の頬に触れる、むさぼるようで流し込むようなそんなキス。
「「ずちゅ……にゅぶ……じゅるぅ……」」
「長くないですかぁ!?」
エレノアの声に思わず見つめあったままだった視線を左にずらすと、雨月の右手に握られているはずの包丁が光輝いて溶けるように消えていった。
それと同時に私の右側からまばゆい光があふれだす。
「っぷは……ごちそうさま」
「雨月……え、その、おそまつさま?」
心臓がすごくバクバクしている。私と同じ顔の雨月があんなに女って感じの顔をしているということは、私もそんな顔をしていたんだろう。
頭を振って気持ちを落ち着かせる。一呼吸置いてから右手に握られたそれを改めて構える。一度中華包丁のような形を経由したせいか、切っ先は鋭くなっておらずこれは刺身包丁というより……。
「ケーキ入刀のナイフみたいだね。特大の」
剣といって差し支えない刀身の長さになった。
「グォオオオオッッ!!!」
おあつらえ向きというか、ドラゴンも鎖を千切って雄たけびを挙げる。
持ち手まで伸びたそれに、雨月も手を添える。
「入刀、しよ」
ドラゴンがこちらに迫ってくる。なのに不思議と怖くはなかった。二人で振り上げ、振り下ろす。たったそれだけて、体感的には長かったドラゴンとの決戦は幕を閉じた。
「……キスすればいいの?」
「粘膜接触って言ったら、そうでしょう? それ以外に何があるっていうんですか?」
確かに……と納得しかけて、いや待って。
「私まだ誰ともしたことないし!」
「私もないよ?」
そりゃあ双子だし、私がないのに雨月が経験ありだったらちょっと泣いちゃうかも。
「な……何を今更照れてるんですか!? さっきまでもっとすごいことやってたでしょ!?」
「そういう問題じゃなくてね!?」
エレノアがやんややんや言ってくるけど、正直ファーストキスは大事にしたいというか。
「というか、そもそも粘膜ってどこのこと!?」
「それは、あの……」
エレノアもさすがに言い淀む。
「……口の中?」
雨月がぽつりとつぶやく。ドラゴンがバテているのか少しだけ動きが緩慢になっている。だから雨月のいつものしゃべりでも普通に聞き取れる。
「マジで!?」
「だから、早くしてくださいってば!!」
「急かさないでよ。ベロチューってことでしょ? やり方わかんないよ。エレノアのはしたことあるの?」
「な、な……な、ないですよ!! 私、これでも貴族ですからね!?」
なんでそこで強気に出たのかはちょっと分からないけど、瀕死とはいえドラゴンを前になんて緊張感のないやり取りなのだろうか。
「グルルルルゥウウウッ!!」
ドラゴンが咆哮する。流石に自動回復とかそういうのはなさそうだけど、あんまり放置するのもまずい気がする。
「私、分かる。漫画で見たことあるし」
雨月が私の目をじっと見てそう言った。私とほぼ同じ顔だけど、少しだけたれ目、私より家にいる時間が長い分日焼けもしてない。現実離れした環境にいるせいか、普段よりもずっと可愛く見える。
「う、雨月なら……いいよ」
「私も、晴日だから。ファーストキス、あげたい。……エレノア、ドラゴンの動きを止めて」
「さらっと無茶を言わないでください!」
慌てて杖をぎゅっと抱き寄せるエレノア。けど、私の最愛の妹はいつも通りの冷静さだった。
「あんなに弱ってるドラゴンなんだから、大丈夫。エレノアならできるよ」
「あんまり長い時間は期待しないでくださいね。――聖なる鎖よ悪しき者に戒めを! ディバインチェイン!!」
杖の下端を地面にぎゅっと打ち付けると、ドラゴンに光の鎖がまとわりついて、頭を低い位置に固定した。
「時間省略のために少しだけ口を開いて待ってて」
キスと聞いて唇をすぼめて待ちそうだった私は慌てて「お」の音を出すときと同じくらいの口を開いた。そこに雨月の顔がぐいぐい近づいてくる。
「大好きだよ」
「――!? んちゅ、ちゅぷ……ぬぅ……」
まさかの告白からのキス、目を丸くする私の唇に雨月の唇が重なり、そのまま舌が私のそれに触る。雨月の左手が私の頬に触れる、むさぼるようで流し込むようなそんなキス。
「「ずちゅ……にゅぶ……じゅるぅ……」」
「長くないですかぁ!?」
エレノアの声に思わず見つめあったままだった視線を左にずらすと、雨月の右手に握られているはずの包丁が光輝いて溶けるように消えていった。
それと同時に私の右側からまばゆい光があふれだす。
「っぷは……ごちそうさま」
「雨月……え、その、おそまつさま?」
心臓がすごくバクバクしている。私と同じ顔の雨月があんなに女って感じの顔をしているということは、私もそんな顔をしていたんだろう。
頭を振って気持ちを落ち着かせる。一呼吸置いてから右手に握られたそれを改めて構える。一度中華包丁のような形を経由したせいか、切っ先は鋭くなっておらずこれは刺身包丁というより……。
「ケーキ入刀のナイフみたいだね。特大の」
剣といって差し支えない刀身の長さになった。
「グォオオオオッッ!!!」
おあつらえ向きというか、ドラゴンも鎖を千切って雄たけびを挙げる。
持ち手まで伸びたそれに、雨月も手を添える。
「入刀、しよ」
ドラゴンがこちらに迫ってくる。なのに不思議と怖くはなかった。二人で振り上げ、振り下ろす。たったそれだけて、体感的には長かったドラゴンとの決戦は幕を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる