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解体を終えて肉や骨などを兵士さんにも手伝ってもらいながら王城へ運ぶ。
王都に戻ってからは騎士団長のエリックさんにもドラゴン討伐を報告し、明日にでも王様から国中に報告する運びになった。
「にしても驚かされるな。まさか今日のうちに討伐してしまうなんて」
応接間でエリックさんがそんなことを口にした。私たちも正直、ドラゴンに辿り着くまでにちょっとしたモンスターを倒して戦いに体を慣らして、ボスとしてドラゴンに対峙すると思っていたから……まさか異世界二日目でドラゴンを倒すことになるとはって感じだ。
ちなみに、ドラゴンの死体は王国の魔術師さんたちが特別な処理をしている。。この世界では死体を放置するとアンデッド化するらしいので、ちゃんと処理しないとね。肉体がバラバラになっていたとしても生前の魔力に反応して結合しちゃうらしい。その際に綺麗にくっつかないせいで、アンデッド系の魔物はおぞましい見た目になってしまうらしい。そんなものと遭遇しなくて本当に良かった。もっとも、雨月は昔からゾンビ映画が好きだから平気そうだけど。
「さらに驚かされるのが件のドラゴンを食べようということだな。処理を施した肉は順次、王城の厨房に送るよう手配したが……本当に食べられるのか?」
「それは食べてみないと分からないよね。雨月?」
「……まぁ、ね。でも、どんな食材だって美味しく料理するのが料理人」
「ふむ……当代の英雄は英雄にして料理人なのか」
……料理人が主であって英雄ってわけじゃ、なんていうのも野暮かな。それにしても、ドラゴンの肉が楽しみすぎる。一体どれほどのものなのだろうか。昨日食べたこっちの料理もそれなりに美味しかったし、調理の技術というのはけっこう確立されているのかもしれない。
「なにはともあれ今日はお疲れだろう。食事を手配するが……先に湯あみをしてはどうだ? エレノア、案内してやれ」
お父さんがいるせいか隅っこで黙っていたエレノアが急に立ち上がる。
「は、はい!!」
親子関係については……お風呂で聞いてみようかな。昨日はお湯で濡らしたタオルで体をふいただけだから、湯舟に入れるのは楽しみだ。
お風呂場は想像していたよりも広かった。私と雨月とエレノアの三人で入ってもまだまだ余裕があるくらいの大きさだった。イメージ的にはちょっとした銭湯みたいな感じだ。お風呂の設備もしっかりしているようで、蛇口らしきものがあった。試しに捻ると水が出てきた。
「これもひょっとしたら魔法?」
「魔法と技術の組み合わせ、ですね」
私の質問にエレノアが答えてくれる。
魔法とは関係なく、水道が整えられており、そうやって運んだ水を魔法の力で熱してお湯にしているらしい。。魔法ってすごいなぁ。エレノアが用意してくれた布を使って体の汚れを落としていく。雨月に背中を流してもらうと、ちょっと恥ずかしかったけどすごく気持ちよかった。
三人とも身体を洗い終えると湯舟に入る。
「……エレノアってお父さんと仲悪いの?」
雨月が直球で聞くものだから思わず驚いてしまった。でも、やっぱり雨月も気になってたんだ。
「えっと……どうしてですか?」
「いや、なんか……あんまり話さないなって。ほら、さっきも」
「私もそれは思った。なんかぎこちなかった」
「あー……。うーん……」
私の言葉を聞いて、少し困ったような顔になるエレノア。
「えっと……まぁ、父の前だと緊張するのは事実ですね。幼い頃は家を空けがちでしたし、ずっと騎士団長として活躍されてますし、仕事中であれば上司にあたりますから」
「そっか」
「ただ、別に嫌いというわけではないんですよ。尊敬していますし、感謝もしています。私にとっては父であり、憧れの存在です」
「そうなんだ」
「はい」
「じゃあさ、お父さんのことは好き?」
「大好きですよ!!」
即答だった。エレノアは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「私の目標でもあり、私の誇りでもあるんです!! いつかは父のような立派な騎士になりたいと幼い頃から思っていました。まぁ、剣の腕はからっきしで、魔法を頑張って訓練するようになったんですけど。……だから、今こうして、ハルヒとウヅキと一緒に戦えたことがとても嬉しいんです!!」
「そっか。いいお父さんなんだね」
「はい!!」
それからしばらく他愛もない話をした後、私たちはお風呂を上がった。
王都に戻ってからは騎士団長のエリックさんにもドラゴン討伐を報告し、明日にでも王様から国中に報告する運びになった。
「にしても驚かされるな。まさか今日のうちに討伐してしまうなんて」
応接間でエリックさんがそんなことを口にした。私たちも正直、ドラゴンに辿り着くまでにちょっとしたモンスターを倒して戦いに体を慣らして、ボスとしてドラゴンに対峙すると思っていたから……まさか異世界二日目でドラゴンを倒すことになるとはって感じだ。
ちなみに、ドラゴンの死体は王国の魔術師さんたちが特別な処理をしている。。この世界では死体を放置するとアンデッド化するらしいので、ちゃんと処理しないとね。肉体がバラバラになっていたとしても生前の魔力に反応して結合しちゃうらしい。その際に綺麗にくっつかないせいで、アンデッド系の魔物はおぞましい見た目になってしまうらしい。そんなものと遭遇しなくて本当に良かった。もっとも、雨月は昔からゾンビ映画が好きだから平気そうだけど。
「さらに驚かされるのが件のドラゴンを食べようということだな。処理を施した肉は順次、王城の厨房に送るよう手配したが……本当に食べられるのか?」
「それは食べてみないと分からないよね。雨月?」
「……まぁ、ね。でも、どんな食材だって美味しく料理するのが料理人」
「ふむ……当代の英雄は英雄にして料理人なのか」
……料理人が主であって英雄ってわけじゃ、なんていうのも野暮かな。それにしても、ドラゴンの肉が楽しみすぎる。一体どれほどのものなのだろうか。昨日食べたこっちの料理もそれなりに美味しかったし、調理の技術というのはけっこう確立されているのかもしれない。
「なにはともあれ今日はお疲れだろう。食事を手配するが……先に湯あみをしてはどうだ? エレノア、案内してやれ」
お父さんがいるせいか隅っこで黙っていたエレノアが急に立ち上がる。
「は、はい!!」
親子関係については……お風呂で聞いてみようかな。昨日はお湯で濡らしたタオルで体をふいただけだから、湯舟に入れるのは楽しみだ。
お風呂場は想像していたよりも広かった。私と雨月とエレノアの三人で入ってもまだまだ余裕があるくらいの大きさだった。イメージ的にはちょっとした銭湯みたいな感じだ。お風呂の設備もしっかりしているようで、蛇口らしきものがあった。試しに捻ると水が出てきた。
「これもひょっとしたら魔法?」
「魔法と技術の組み合わせ、ですね」
私の質問にエレノアが答えてくれる。
魔法とは関係なく、水道が整えられており、そうやって運んだ水を魔法の力で熱してお湯にしているらしい。。魔法ってすごいなぁ。エレノアが用意してくれた布を使って体の汚れを落としていく。雨月に背中を流してもらうと、ちょっと恥ずかしかったけどすごく気持ちよかった。
三人とも身体を洗い終えると湯舟に入る。
「……エレノアってお父さんと仲悪いの?」
雨月が直球で聞くものだから思わず驚いてしまった。でも、やっぱり雨月も気になってたんだ。
「えっと……どうしてですか?」
「いや、なんか……あんまり話さないなって。ほら、さっきも」
「私もそれは思った。なんかぎこちなかった」
「あー……。うーん……」
私の言葉を聞いて、少し困ったような顔になるエレノア。
「えっと……まぁ、父の前だと緊張するのは事実ですね。幼い頃は家を空けがちでしたし、ずっと騎士団長として活躍されてますし、仕事中であれば上司にあたりますから」
「そっか」
「ただ、別に嫌いというわけではないんですよ。尊敬していますし、感謝もしています。私にとっては父であり、憧れの存在です」
「そうなんだ」
「はい」
「じゃあさ、お父さんのことは好き?」
「大好きですよ!!」
即答だった。エレノアは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「私の目標でもあり、私の誇りでもあるんです!! いつかは父のような立派な騎士になりたいと幼い頃から思っていました。まぁ、剣の腕はからっきしで、魔法を頑張って訓練するようになったんですけど。……だから、今こうして、ハルヒとウヅキと一緒に戦えたことがとても嬉しいんです!!」
「そっか。いいお父さんなんだね」
「はい!!」
それからしばらく他愛もない話をした後、私たちはお風呂を上がった。
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