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「今日のおやつはこれよ」
十月になり最初の日曜日、佑奈は佳子の部屋での勉強会に少しずつ慣れていった。休日は日曜日に行くことが多かった。初めての時と違って、着ている制服は冬服に変わったが。
「シュークリームだぁ」
佳子の持ってきた箱には有名なパティスリーの店名が印字されていた。中には四つのシュークリームが入っており、生地のザクザク感は見てわかるほどで、さらに芳醇なカスタードクリームの香りが広がる。佑奈がスーパーやコンビニで見る生地にクリームを充填するものではなく、これでもかと詰められたクリームの上に、帽子のごとくシュー生地が載せられているものであった。
「カスタードが濃厚らしいから、紅茶は少しさっぱりするものを選んだの」
佳子は微笑みながら、シュークリームを皿に移してフォークを添えた。さらにポットから湯気の立つ紅茶をカップに注ぐ。
「ありがとう。でも、こんなの毎回だと申し訳なくて……」
佑奈がそう言うと、佳子は先ほどまでの笑みが嘘のように悲し気な表情を浮かべる。
「なんで? 遠慮なんてすることないよ。それに佑奈が美味しそうに食べてくれるの、私結構好きなんだよ?」
「そ、そう?」
佳子の言葉に、躊躇いがなくなったわけではないが、いかんせんこの大きなシュークリームの食べ方を佑奈は分からないでいた。
「この蓋になっているシューは手で持っていいよ。クリームを付けて食べるの。下の部分は普通に切って平気よ。クリームがはみ出しちゃうのはしょうがないから気にしないで。ウェットティッシュも用意してあるから」
「う、うん」
左手に持ったシュー生地に、フォークでカスタードクリームを載せひと口頬張ると、上品かつ濃厚なクリームの甘味が口いっぱいに広がって、佑奈の口から思わずため息が漏れた。
「美味しい……」
「でしょ?」
二人仲良くシュークリームを二つずつ食べ、紅茶で口をさっぱりさせると、佑奈がぽつりと呟いた。
「美味しかったけど、こんなに甘いものばかり食べてたら……また太っちゃう。どうして佳子ちゃんはそんなスリムなの?」
その言葉に佳子は首をかしげる。
「え? 佑奈は胸が大きいだけで太っているわけじゃないでしょう?」
「そう……なの?」
佑奈にとって、胸が大きいことと太っていることは同じだった。他の子より早くから大きくなり始めた佑奈は、すぐ服がきつくなり母に買ってもらうのが嫌で、母のおさがりを着るようになった。身体のラインが出にくいゆったりとした服を着る佑奈を、周囲の子供は太っているとからかった。
そんな経緯があったため、佑奈はあまり普段着を着たがらず、佳子の家に来る際も制服を着ていた。
「確かに佑奈はふっくらして見えるけど、きっとそれも佑奈の良さだと思うよ。そうだ! 佑奈に――あ、えぇっと、なんでもない!」
慌てふためく佳子の様子に、佑奈はなにを言えばいいか分からないままだったが、その楽しそうな笑みに柔らかな視線を向けるだけだった。
十月になり最初の日曜日、佑奈は佳子の部屋での勉強会に少しずつ慣れていった。休日は日曜日に行くことが多かった。初めての時と違って、着ている制服は冬服に変わったが。
「シュークリームだぁ」
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佳子は微笑みながら、シュークリームを皿に移してフォークを添えた。さらにポットから湯気の立つ紅茶をカップに注ぐ。
「ありがとう。でも、こんなの毎回だと申し訳なくて……」
佑奈がそう言うと、佳子は先ほどまでの笑みが嘘のように悲し気な表情を浮かべる。
「なんで? 遠慮なんてすることないよ。それに佑奈が美味しそうに食べてくれるの、私結構好きなんだよ?」
「そ、そう?」
佳子の言葉に、躊躇いがなくなったわけではないが、いかんせんこの大きなシュークリームの食べ方を佑奈は分からないでいた。
「この蓋になっているシューは手で持っていいよ。クリームを付けて食べるの。下の部分は普通に切って平気よ。クリームがはみ出しちゃうのはしょうがないから気にしないで。ウェットティッシュも用意してあるから」
「う、うん」
左手に持ったシュー生地に、フォークでカスタードクリームを載せひと口頬張ると、上品かつ濃厚なクリームの甘味が口いっぱいに広がって、佑奈の口から思わずため息が漏れた。
「美味しい……」
「でしょ?」
二人仲良くシュークリームを二つずつ食べ、紅茶で口をさっぱりさせると、佑奈がぽつりと呟いた。
「美味しかったけど、こんなに甘いものばかり食べてたら……また太っちゃう。どうして佳子ちゃんはそんなスリムなの?」
その言葉に佳子は首をかしげる。
「え? 佑奈は胸が大きいだけで太っているわけじゃないでしょう?」
「そう……なの?」
佑奈にとって、胸が大きいことと太っていることは同じだった。他の子より早くから大きくなり始めた佑奈は、すぐ服がきつくなり母に買ってもらうのが嫌で、母のおさがりを着るようになった。身体のラインが出にくいゆったりとした服を着る佑奈を、周囲の子供は太っているとからかった。
そんな経緯があったため、佑奈はあまり普段着を着たがらず、佳子の家に来る際も制服を着ていた。
「確かに佑奈はふっくらして見えるけど、きっとそれも佑奈の良さだと思うよ。そうだ! 佑奈に――あ、えぇっと、なんでもない!」
慌てふためく佳子の様子に、佑奈はなにを言えばいいか分からないままだったが、その楽しそうな笑みに柔らかな視線を向けるだけだった。
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