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#12 佳子視点
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佑奈に避けられていると感じたのは、三着目の服をプレゼントした頃だった。調子に乗って自分の好みを押し付けすぎてしまったのだろうか。それともお茶菓子が口に合わなかったのだろうか。佑奈が離れてしまったら、私はまた一人になってしまう。どうしたら、佑奈は私の側にいてくれるだろうか。
文化祭のことなんてどうでもよくて、そんなことばかりを考えていた私の耳に、クラスで出回っている噂話が聞こえてきた。佑奈が私に媚びを売ってお金をもらっているというものだった。中には肉体関係まであるんじゃなかという過激な噂もあった。そうなったらいいなとも思っていたけど、まだ……ちょっとだけ早いと思う。ちょっとだけ。
噂の根拠には、私と佑奈が夏休み明けから急に仲良くなったことや、最近の佑奈が可愛くなったことが挙げられていた。
確かに、佑奈には私が使っている化粧品を使わせたし、なんとなく自信がついてきたのか、以前よりもぐっと可愛くなったと思う。その変化に、クラスの女子たちは目ざとく気付いたのかもしれない。
「……お金は渡してなかったなぁ」
友達料というものを物語の中で見たことがある。相手との繋がりを保つために、お金を払うこと……。私はこれまでお菓子も服も、自分の好みばかり押し付けてしまっていた。きっと佑奈にも、自分で欲しいものがあるに違いない。だったら、お金……受け取ってほしい。
そう思って綺麗な一万円札を端正に四つ折りして昇降口で佑奈を待った。佑奈の手にそれを握らせると、気持ちが抑えきれなくて、抱き着いてしまった。匂いと温かさと柔らかさ、その全てが佑奈を感じさせてくれる。
「佳子ちゃん……でも、こんなのダメだよ。お金なんて受け取れない。私たちの関係はお金に代えられるものなの!?」
「……違う。違うの。でも、何でもいいから、私の気持ちを受け取ってほしいの」
佑奈に言われてハッとした。お金で引き留められるような人じゃないんだ。佑奈は。それに、金の切れ目が縁の切れ目ともいう。佑奈との縁が切れるなんて嫌だ。でも、この気持ちを拒まれることはもっと嫌だ。
「佳子ちゃん……ありがとう……」
佑奈が、佑奈が私の気持ちを受け入れてくれた。佑奈になら、私の気持ち……全部伝えたい。
「私、ずっと一人だったの」
抱きしめる力を少しだけ緩める。佑奈は逃げ出さないと思う。だから、さっきみたいに目を見て話したいけど、この温もりを離したくない。
「家に帰っても誰もいない。お母さんもお父さんも忙しくて、私に構う暇なんてない。豪華な家も、たくさんの服も、美味しいケーキも……全部虚しいだけだった」
「佳子ちゃん……」
「でも、佑奈と一緒だと、全部が楽しくなるの。ケーキも、服も、何だって……貴女がいるだけで、全部が意味を持つの」
子供じみたことを言っていると思う。でも、もっと子供じみたことを言う。
「だから、お願い……嫌いにならないで」
きっと両親にさえこんな素直に気持ちを伝えたことはない。なのに、どうして佑奈にはこんなにも素直になれるんだろう。
「嫌いになんてなるわけないよ」
佑奈の腕がそっと私の背に触れる。一方的に抱き着いているんじゃなくて、抱き合ってる……これって、佑奈も私と同じ気持ちってことでいいのかな。
「私だって、佳子ちゃんと一緒にいると楽しいよ。だから、避けちゃってごめん。ちゃんと気持ちを伝えるべきだった。佳子ちゃんの気持ち、教えてくれてありがとう」
「私こそ……ありがとう、佑奈」
佑奈の鼓動は寂しさの消えていく音だった。
文化祭のことなんてどうでもよくて、そんなことばかりを考えていた私の耳に、クラスで出回っている噂話が聞こえてきた。佑奈が私に媚びを売ってお金をもらっているというものだった。中には肉体関係まであるんじゃなかという過激な噂もあった。そうなったらいいなとも思っていたけど、まだ……ちょっとだけ早いと思う。ちょっとだけ。
噂の根拠には、私と佑奈が夏休み明けから急に仲良くなったことや、最近の佑奈が可愛くなったことが挙げられていた。
確かに、佑奈には私が使っている化粧品を使わせたし、なんとなく自信がついてきたのか、以前よりもぐっと可愛くなったと思う。その変化に、クラスの女子たちは目ざとく気付いたのかもしれない。
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そう思って綺麗な一万円札を端正に四つ折りして昇降口で佑奈を待った。佑奈の手にそれを握らせると、気持ちが抑えきれなくて、抱き着いてしまった。匂いと温かさと柔らかさ、その全てが佑奈を感じさせてくれる。
「佳子ちゃん……でも、こんなのダメだよ。お金なんて受け取れない。私たちの関係はお金に代えられるものなの!?」
「……違う。違うの。でも、何でもいいから、私の気持ちを受け取ってほしいの」
佑奈に言われてハッとした。お金で引き留められるような人じゃないんだ。佑奈は。それに、金の切れ目が縁の切れ目ともいう。佑奈との縁が切れるなんて嫌だ。でも、この気持ちを拒まれることはもっと嫌だ。
「佳子ちゃん……ありがとう……」
佑奈が、佑奈が私の気持ちを受け入れてくれた。佑奈になら、私の気持ち……全部伝えたい。
「私、ずっと一人だったの」
抱きしめる力を少しだけ緩める。佑奈は逃げ出さないと思う。だから、さっきみたいに目を見て話したいけど、この温もりを離したくない。
「家に帰っても誰もいない。お母さんもお父さんも忙しくて、私に構う暇なんてない。豪華な家も、たくさんの服も、美味しいケーキも……全部虚しいだけだった」
「佳子ちゃん……」
「でも、佑奈と一緒だと、全部が楽しくなるの。ケーキも、服も、何だって……貴女がいるだけで、全部が意味を持つの」
子供じみたことを言っていると思う。でも、もっと子供じみたことを言う。
「だから、お願い……嫌いにならないで」
きっと両親にさえこんな素直に気持ちを伝えたことはない。なのに、どうして佑奈にはこんなにも素直になれるんだろう。
「嫌いになんてなるわけないよ」
佑奈の腕がそっと私の背に触れる。一方的に抱き着いているんじゃなくて、抱き合ってる……これって、佑奈も私と同じ気持ちってことでいいのかな。
「私だって、佳子ちゃんと一緒にいると楽しいよ。だから、避けちゃってごめん。ちゃんと気持ちを伝えるべきだった。佳子ちゃんの気持ち、教えてくれてありがとう」
「私こそ……ありがとう、佑奈」
佑奈の鼓動は寂しさの消えていく音だった。
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