放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ

文字の大きさ
15 / 32

#15

しおりを挟む
「佑奈、その……えっと、ほら、ね?」

 濃密なキスを交わした後、佳子がベッドをぽんぽんとたたく。その意図を佑奈はぼんやりと理解して――

「でも、ほら……制服が皴になっちゃうから」

 以前と同じように答えようとする佑奈に、佳子は少しだけ微笑んだ。

「脱いだらいいよ。今回は……本気だから」
「えっ、ちょっと待って!」

 驚いて声を上げたけれど、佳子の手はとても優しかった。その仕草には急くような勢いはなく、まるでガラス細工に触れるような慎重さがあった。

「制服が汚れたり、皴になったりするのは嫌でしょ? だから、脱がせてあげる……ね?」
「でも……自分でできるから!」
「いいの。私がやりたいの」

 佳子の指が、制服の第一ボタンにそっと触れる。その瞬間、心臓が大きな音を立てた。佳子はとても慎重に、一つずつボタンを外していく。そのたびに、佑奈は自分の体温がどんどん上がっていくのがわかった。

「佑奈……緊張してる?」

 佳子が小さな声で問いかける。

「そ、そりゃするよ……」

 佑奈は精一杯の言葉を返すけれど、佳子の手は止まらなかった。その指先はとても丁寧で、触れるたびに胸の奥がざわつく。
 ブラウスがそっと肩から滑り落ちる。ひんやりとした空気と熱を持つ佳子の指、せわしなく制服をハンガーにかける様子に、佑奈はどこか無理をしているような影が見えた。佳子はもっと遮二無二に佑奈を求めたいのを、必死に抑え込んでいるのだ。
 その想いに応えたいと、佑奈は――

「私のことばっかりじゃ、ずるいよね」

 そう言いながら、そっと佳子の方に手を伸ばした。佳子は驚いたように目を瞬かせたけれど、すぐに微笑みを浮かべて小さく頷いた。
 その笑顔に少しだけ勇気をもらった佑奈は、佳子の制服の襟に触れる。指先が彼女の肌に触れるたびに、自分の鼓動が大きくなるのがわかる。

「……緊張するね」
「私も、してるよ」

 声の震えを自覚する佑奈に佳子が囁く。甘い声が耳に触れるだけで、体中が熱くなるような気がした。制服の第一ボタンに指を掛けて、慎重に外していく。二つ目、三つ目と外れるたびに、佳子の肌が少しずつ露わになっていく。

「……佳子ちゃんの肌、すごく綺麗だね」

 思わずこぼれた言葉に、佳子は頬を赤く染めた。

「そ、そんなことないよ」

 その愛らしい姿を目の当たりにし、佑奈の脳裏に不安がよぎる。――こんな綺麗な人が、私のことを好きなんて……本当にいいのかな、と。
 佳子の身体は細くて華奢で、でもどこかしら芯の強さを感じさせる。鎖骨のラインから覗く柔らかな肌に、目が釘付けになる。それでも目を逸らそうとするたび、佳子の微笑みがそうさせない。

「佑奈?」

 佳子が小さく名前を呼んだ。その声にハッとして、佑奈は視線を彼女の瞳に戻した。

「ごめん……佳子ちゃんが、綺麗すぎて」

 そう言葉にしてしまうほど、佑奈の佳子への気持ちが溢れてしまっていた。佳子は少し驚いたように目を見開いて、すぐに優しく笑った。

「そんな風に見てくれるの、佑奈だけだよ」

 佳子の言葉は、佑奈の胸をさらに締め付ける。
 ボタンを最後まで外し終えたとき、彼女の制服の前が静かに開かれる。その下には、シンプルな白い下着が覗いていた。

「佳子ちゃん……すごく、綺麗だよ。ごめん、語彙力なくなっちゃった」

 はにかむようにそう伝えると、佳子の目が少し潤んだように見えた。

「佑奈、そんなに褒めないでよ。恥ずかしい……」

 彼女はそう言いながらも、佑奈の手にそっと自分の手を重ねた。その小さな仕草が、何よりも温かくて、幸せに思えた。だからこそ佑奈はそれが自分にとって分不相応なものでないか不安になるのだ。

「佳子ちゃん……ありがとう。私なんかと、一緒にいてくれて」
「そんなこと言わないで。私には、佑奈が必要なの」

 少しだけ眉をひそめながらの言葉に、佑奈の胸の奥がじんわりと熱くなった。佳子が必要としてくれている――だからこそ、彼女の優しい笑顔に少しでも応えられる自分でいたいと思った。

「……愛してるわ、佑奈」

 佑奈を押し倒し、その柔らかな胸元に顔を埋める佳子。佑奈はその全てを受け入れ、佳子の髪をそっと撫でる。そして――

「……すぅ……すぅ……」
「……あれ?」

 安心しきったかのように眠ってしまった佳子に、佑奈はこれから起こると想像していたことが急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にするのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。 帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。 ♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。 ♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。 ♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。 ♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。 ※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。 ★Kindle情報★ 1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4 2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP 3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3 4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P 5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL 6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ 7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL ★YouTube情報★ 第1話『アイス』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE 番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI Chit-Chat!1 https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34 イラスト:tojo様(@tojonatori)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

さくらと遥香

youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。 さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。 ◆あらすじ さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。 さくらは"さくちゃん"、 遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。 同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。 ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。 同期、仲間、戦友、コンビ。 2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。 そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。 イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。 配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。 さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。 2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。 遥香の力になりたいさくらは、 「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」 と申し出る。 そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて… ◆章構成と主な展開 ・46時間TV編[完結] (初キス、告白、両想い) ・付き合い始めた2人編[完結] (交際スタート、グループ内での距離感の変化) ・かっきー1st写真集編[完結] (少し大人なキス、肌と肌の触れ合い) ・お泊まり温泉旅行編[完結] (お風呂、もう少し大人な関係へ) ・かっきー2回目のセンター編[完結] (かっきーの誕生日お祝い) ・飛鳥さん卒コン編[完結] (大好きな先輩に2人の関係を伝える) ・さくら1st写真集編[完結] (お風呂で♡♡) ・Wセンター編[完結] (支え合う2人) ※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...